フランス 現政府の政策を根こそぎ止めろ

かけはし 第2660号 2021年4月5日

抵抗結集し統一した反撃創出を

ジョセフィーヌ・シムプロン

 この1年の間、コヴィッド19パンデミックが政府と資本主義諸制度の破綻に光を当てることになった。フランス大統領のマクロンも全く例外ではない。彼は日毎に、この公衆衛生危機に対処できない、ということを示している。
 マスクスキャンダルと検査スキャンダルを経て、今やワクチンスキャンダルがある。そしてこのすべては、人口多数にとっての前例のない社会的危機、および労働者と彼らの自由に対する間断ない攻撃を背景にしている。今やかつて以上に、この政府とその諸政策に対決する真に統一的な運動を築き上げ、2022年の大統領選挙を待つことなく、もう一つの世界の展望を押し出す時だ。

パンデミック対処は完全に破綻


 この公衆衛生危機の始まり以来マクロンは、二つのことしか気にかけてこなかった。一つは、集中治療ベッド占有率であり、それは、「手段」を取ることを決める彼の唯一の指標となった。しかしその手段は、高まる感染数を全く止めず、あらゆる社会生活を妨げているにすぎない。
 他方で彼は、「ウルトラリッチの大統領」として、彼の友人たちの利益から離れることもできない。その利益は、どんな犠牲を払っても高まり続けなければならないのだ。そしてこの点で、マクロンの政策はこの間効果を上げてきた、とわれわれは言うことができる。オクスファムによれば、危機にもかかわらず、記録を新たに破る形で、CAC40企業(株式指標にされている大企業グループ)が、彼らの株主に配当として370億ユーロを払い、フランスの500の最大資産が蓄積した総額が2020年に3%増大したからだ。
 この政府は昨年全体を通じて、可能な限り感染と死亡を引き下げると思われるような、その名に値する公衆衛生政策を全く実行してこなかった。逆に、公衆衛生危機の管理は、この何十年間に実行された諸政策により破壊されたものとして、公衆衛生システムの欠点を照らし出した。今日ですらマクロンは、「変異型」が、特に英国型がフランスで多数になりつつある中で、週末のロックダウンと午後6時以後の夜間外出禁止として、抑圧的で自由殺し的な諸方策を再び選択した。
 しかしながら、自由の剥奪と地下鉄通勤ー労働―睡眠の3連符にまで切り縮められた生活は、ほとんどの者にはますます歓迎できないものになっている。その上、住民の大きな部分が、経済の健康がわれわれの健康より優先権を持っている、と理解するに至っている。われわれすべては、この政府の「ストップ・アンド・ゴー」戦略はパンデミックを止める見通しを全く意味していない、と理解するに至った。特に、ウイルスとの闘いが仕事から離れた時間にしか行われていず、他方で、実施要綱が実行される可能性のない職場ではほとんど何も行われず、公共交通は混雑したままであり、感染との闘いに向け学校で利用できる財源がまったくない、という状況ではそうだ。
 しかしながら、この戦略に対するオルタナティブはあるのだ。それは中でも、パンデミックを引き下げ、安全で透明、かつ効果的なワクチン接種を通した集団免疫獲得を加速することを可能にする、そうした公衆衛生政策と社会政策に優先性と対応する財源を与えることにある、と思われる。

社会的経済的な前例のない危機

 引き続いている公衆衛生危機は、前例のない社会的、経済的危機をも引き起こし続けている。労働の世界と住民多数に対する結果は、すでに破局的となっている。INSEE(統計・経済国立研究所)によれば、特にもっとも不安定な職、臨時労働者、有期雇用契約、自営の人々の中で、2020年におよそ70万にのぼる職の喪失があり、しかしまたリストラや一時解雇、事業閉鎖さらに競争力強化計画の増大もあった。疑いなく今後公衆衛生危機が長く続く兆候になるはずの、貧困の爆発は言うまでもない。諸キャンペーングループによれば、2020年3月の公衆衛生危機とロックダウンは、100万人以上の人々を貧困に追いやった。
そして2021年はじめ、状況は改善どころではない。国家が支払う短時間勤務、国家と連帯基金による債務保証、これらのおかげで多数の企業を生かし続けることも、予想可能な破産を阻止することはないだろう。短時間勤務はすでに減少過程にあり、政府統計と雇用諸機関のダレスやDGEFPなどの雇用情勢測定指標によれば、それは2020年4月の840万人から、2021年1月には210万人まで減少している。
同時に、PSE(雇用保護プラン)の数字と経済的理由によるPSEから漏れた一時解雇の数字が増大中だ。多数の被雇用者にとって情勢はすでに深刻であり、特に経済観測センターであるOFCEによれば、「事業破産は2021年中に起き、20万までの職の喪失を引き起こす可能性もあろう」ということである以上、部分的な失業手当制度やさまざまな援助が取り消されれば、情勢は爆発的になるだろう。

民衆への負担強要の狙いは明白


コヴィッド19危機は、全世界的な危機をつくり出した。あらゆる国で、経済後退と刺激策の組が、国家財政赤字と債務を爆発させようとしている。フランスでは2020年、コヴィッド債務はほぼ2350億ユーロと見積もられている。政府はこれに直面し2020年、シラクの下の財務相だったジャン・アルテュイを座長とする「国家財政の将来」に関する委員会を設立した。それに託された任務は、「公共支出のもっと厳格な管理」と「構造的な諸改革」を通して、徴税なしにコヴィッド債務を返済する方法を提案することだ。したがって政府にとって基調は設定され、公共支出、特に社会的支出における歴史的で大規模な減額を通して、勘定書の支払をすることになるのは労働者だ。
そして過去2、3週間政府は、住民の過半に対する緊縮予算の締め付けに対し、われわれを準備させようとしてきた。公共会計相代理のオリビエ・デュソトプは、レ・ゼコー(フランスの金融紙:訳者)のインタビューで「2021年は」マクロンが2020年3月に公表した「『どれだけ費用がかかろうと』政策の終わりを印す」と鮮明だった。
驚くことではないが、彼らの計画は、社会手当を最低限にまで引き下げ、公共サービスを解体し、われわれをもっと長く働かせることだ。政府は、パンデミックの終わりを待つこともなく、就業手当であるRSA(生活保護を受給していた失業者が就職しても手当の1部を受け取れる制度:訳者)を18―25歳に拒否したことに続いて、失業保険改革の部分は今年7月1日に効力をもつ予定、と公表したばかりだ。
現に、効力を発生する最初の方策になる予定のものが基準日給の計算方法になる以上、政府が今目標にしているものこそ、手当削減なのだ。換言すれば、雇用を失った者に対し、2021年7月1日から最悪の場合彼らの手当はほぼ半分にされる可能性がある。しかし、不安定な雇用契約への「汚い」依存がある企業への課税提案に関しては、不安を取り除く形で、その実施は2022年7月1日まで(したがって大統領選後……まで)先延ばしされるだろう!
その他の中でも退行的な計画は、雇用主による債務不履行の際に賃金支払いを保証する(破産手続きの間)保険であるAGS、に与えられている優先権を改革する政府の計画だ。賃金支払いはこれまで、あらゆる他の債権に優先すると考えられてきたが、司法相は今、この優先権はAGSへしたがって被雇用者へというよりも、管財人や代理人に向けられる、と考えている。MEDEF(経団連)はこれは紛糾の種になると考え、この提案に反対している。それゆえおそらく、政府はそれを放棄するだろう。
これからの数ヵ月でわれわれがそれらを止めなければ、これらがわれわれを待ち受けているものの最初の具体的な事例だ。

どんなことがあろうと抵抗へ

 この困難な連なりの中でも、決起はささやかであってもさまざまな部門(公衆衛生、教育、職の削減反対、その他)で、しかしまたもっと全体としては安全保障の世界的拡張反対、警察の暴力反対、レイシズム反対としても、存在している。そして結局は、これらの闘争は小さな勝利に至る可能性をもっている。こうして、サン・バルブ・リブラリーの勝利があり、それは、3ヵ月の断固としたストライキ行動の後、閉鎖の際の賃金維持、病休、さらに将来契約に関する保証の獲得を可能にした。これらの勝利は、たとえ部分的であっても重要だ。もっとも不安定な被雇用者であっても決起し勝利できる、したがって彼らを決起させることがこの時期重要、ということをそれらが知らしめているからだ。
他方で今なお残っている事実は、この政府の政策に対し明らかにされている怒りといくつかの打撃にもかかわらず、われわれはまだ、大挙して決起し、たとえ存在しているとしても反抗と闘争を結集させることができていない。たとえば、職の削減についてのCGT・TUIのアピールに関する場合(注)がそうだった。
主な理由は明らかに公衆衛生の状況、それが意味する怖れだが、また法秩序という諸関係もある。つまり、警察の暴力、抑圧、自由殺しの諸法律であり、それらは完全に雇用主と政府の利益に奉仕している。

2022年を待ってはならない


全体の流れは同時に、急速に近づきつつある次期大統領選挙によっても特徴づけられている。全体としての政治階級に対する不信は非常な重要性をとどめ、棄権は極めて高くなりそうな気配だ。これこそが、第1回投票日の416日前でも、左翼、右翼、極右の多くの人々――そしてマクロン自身――にとって、これが視野を支配している理由だ。
後者は、彼の立候補をいかに救い出すか、というただ1つの問題に心を奪われているように見える。実際彼は、2017年のような左右交代慣行の腐食が引き起こした、政治的真空に乗ずるという点における困難を抱えることになる、そして刷新、および「右でも左でもなく」、という基調音を再び利用することはできなくなる、ということを十分に分かっている。
それゆえ数週間の間、議会の「左翼」と「右翼」に関わる、しかしまた最後の2、3日には、シアパ(マレーネ・シアパ、昨年6月まで女性平等・差別対策担当副大臣)、ボルヌ(エリザベット・ボルヌ、厚生相)、アタル(ガブリエル・アタル)のような、メディアで「左翼」であるとわれわれに思い出させている閣僚たちにも関わる非常に慎重な議論があった。つまり、そこには今も操り人形がいる。そして、このすべてが始まってさえいない時に、われわれにすでに約束されている仕上げの締めくくりは、マクロン―ルペンの決選投票ということなのだ。
われわれはこの政治日程を拒絶する。その中では、一つのオルタナティブとさまざまな選択肢をわれわれに押しつけようと、諸々の回答が投票箱から現れるだろう。
しかし、社会の、公衆衛生の、また環境の緊急性の観点における差し迫った必要性は、この政府の新自由主義的、自由殺し的、さらにレイシスト的な政策を終わりにする統一的な対応を築き上げることだ。労働者運動が優先すべきことは、黄色のベスト、年金運動、レイシズムと警察の暴力に反対する諸闘争、気候のための闘争、フェミニストの闘争……を通して近年表現されてきた怒りと急進主義を、具体的な連帯と勝利的な闘争へと転換するために働きかけることだ。

今こそ反資本主義緊急計画を

 この政府を前に、統一し大規模な反政府運動の建設が必須だ。この数ヵ月、安全保障の世界的拡張反対運動、「分離主義」法反対運動、職削減反対運動、さらにもっと近くでは「対コヴィッドワクチン特許廃止、徴発を!」という要求をめぐる運動といった、多くのテーマを絞ったキャンペーンが現れてきた。これらの主導性は極めて喜ばしい知らせだ。しかしこの政府の前では、緊急計画を軸にこの政府と対決する一つの世界的な運動をつくり出すために、われわれはさらに進み、あらゆる怒り、抵抗、決起を結集しなければならない。それは、さまざまな領域を結び合わせると思われる。
第1に、公衆衛生の領域がある。つまり、公衆衛生と教育の部門における大規模な職の創出、製薬企業、検査、ワクチン、マスクに関わる生産者の徴発、製薬産業における特許を終わりにする透明かつ大規模なワクチン政策の確立、その他の要求だ。
第2は雇用計画。雇用の防衛のためには、一時解雇と職削減の禁止、賃金切り下げのない労働時間の分かち合い、100万の公共サービス職の創出、を強要することが必要だ。
第3に経済と環境の領域がある。われわれは債務帳消しを強要しなければならない。そして、化石燃料の段階的廃止、不必要を運命付けられた生産を放棄する生産移行、さらにウイルスの流行を促進している食料生産における利潤競争を終わりにすること、を強要しなければならない。
最後にわれわれは、もっとも抑圧された人々が、特に公衆衛生危機に対する抑圧的な対応を背景に味わっている、その非常事態に応えなければならない。その緊急性は今、若者たちの破局的な状況に示されているのだ。そしてその手段は、若者たちに対する就業前賃金の制度化、就業許可証のない移民の正規化や国境の開放と一体的なあらゆる抑圧に反対する闘い、警察免責の廃止、特に経済分野におけるジェンダー平等、そして自由殺し法とレイシズム法の撤廃だ。
その先には、資本主義の前例のない、かつ世界的な危機への対応として、一つのオルタナティブを練り上げる差し迫った必要がある。特にそれは、レイシズムおよび反社会政策と抑圧を強化することを正規化する合法的なツールを掴むことだけが必要になろうとしている、そうした極右の新たな伸長を政府の破綻が今準備しつつあるからこそ、緊急の必要だ。
今こそ、この危機をいかに止め、われわれの社会的陣営をいかに統一するかを討論し、労働の世界に有利な力関係を再建するために、あらゆる組織、部門横断的な諸団体(特に年金改革や自由殺し法に反対して建設されたそれ)間で再結集する時だ。
われわれは、マクロンかルペンか、の選択を受け入れるわけにはいかない。「社会主義かバーバリズムか」の選択が一層はっきりと浮かび上がろうとしている世界で、それはより一層の搾取と抑圧へと導くことになるからだ。
単純な解決はまったくない。われわれは最良の綱領をもっている、あるいはわれわれは労働運動と社会運動に対し道を切り開く最良の組織だ、と宣言するだけでは十分でない。
しかし確かなことがある。それは、われわれの闘いが、大統領選挙がこれか行われるその諸関係に、システムの世界的な危機と極右とバーバリズムの高まる脅威を前に、反資本主義的で革命的なオルタナティブの可能性に強力な影響を及ぼすことになる、ということだ。したがってそこには本物の切迫性がある!

▼筆者はフランス反資本主義新党(NPA)指導部の1員。
(注)CGT・TUIは、職削減反対の全国キャンペーンに乗りだした多国籍旅行代理店TUI内のCGT労組(CGTはフランスの主要労組連合:訳者)。(「インターナショナルビューポイント」2021年3月号)

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