憲法制定会議とその他の選挙

チリ
抜本的変革への意志が様々な形で
体制内左右諸政党を瓦解させた
デイヴ・ケラウェイ/フランク・ガウディショー

【解題】

 筆者は筆者の世代の多くと同じように、チリ空軍の航空機が1973年のクーデターの一部として、サルバトーレ・アジェンデの大統領官邸を空爆しているのを見つめていたことを思い出している。アジェンデはこの軍の攻撃の中で死んだ。彼は勇敢に命を落としたが、しかし彼の改良主義の構想と軍への信頼は、アルゼンチンのように他の諸国でファシスト同類の軍事独裁が暴力的に権力を奪取する中で、ラテンアメリカ全体とチリ両者にとっては、勤労民衆の歴史的な敗北に帰着した。
 3万人にのぼる多数の活動家が虐殺され、数千人が英国内を含めて亡命した。われわれはこの亡命者のために巨大な連帯キャンペーンと実践的な支援を組織した。ピノチェトは17年間直接に支配し、1980年には彼の新自由主義的な抑圧体制を承認する国民投票で勝利した。1988年にはもう一つの国民投票で、55%が彼に反対して投票し、それが民主的な改革と新しい選挙に導いた。
 新たな政権が、つまりキリスト教民主派と社会党から構成されたコンセルタシオンが、さらなる民主的な改革を推し進めた。しかしそれは、ピノチェトが1988年まで軍の最高司令官にとどまることを認めた。貧困と困苦を高めた彼の新自由主義経済諸政策は基本的に解体されなかった。1990年代以来、穏健な社会党と右翼が権力を交代してきた。
 右翼のピニェラ政権下にあった2019年10月、中学生がサンチャゴで協力の下に抗議行動を行う中で、はじめは運賃を巡って大規模な抗議運動が勃発した。腐敗、私有化された教育、さらに不平等といった、他の諸課題も取り上げられた。10月25日には全国デモに100万人以上が参加した。残忍な弾圧の中で、30人以上が殺害され、多くが負傷した。
 ピニェラは、憲法を書き換えるための憲法制定会議選挙を行うべきか否かに関して投票を認めるよう強要された。そして2020年10月25日、チリ民衆はこのプロセスの支持に78%の票を投じた。2021年5月15・16日に行われた選挙は、この憲法制定会議に代表者を選出した。
 以下はこの選挙に関するフランク・ガウディショーによる取り急ぎの分析であり、筆者が英訳した。(デイヴ・ケラウェイ)

誰の予想をも超えた大変動

 チリにおける5月16日の選挙は大逆転をもたらした。つまり以下のことだ。◦伝統的諸政党の瓦解。
◦右翼内部の「容赦のない大規模粛清」。
◦ピノチェト継承者の終わりの始まり。
◦セバスティアン・ピニェラにとっての大敗北―彼はそれを自ら認めた。
◦民衆運動……の勝利。
 16日の午後以来、チリの報道は、この政治的地震を表すために誇張した表現を重ねはじめた。ちなみにこの地震は、アタカマ砂漠からマガラネス地方の寒冷な大地までのアンデスを揺るがしたばかりだ。チリ民衆は、5月15日と同16日に4つの同時選挙を呼びかけられた。すなわち、自治体首長と自治体議員と州知事の選挙、および新たな共和国憲法を起草する憲法制定会議の設立だ。
 政府の孤立は明白であり、政治的「カースト」に対する拒絶感も数年間強力となっていたとはいえ、今回のような大変動は誰も、特に世論調査員も予想はしていなかった。2019年10月の民衆的反乱の力、そして制度的な光景全体に及ぼしたその衝撃にもかかわらず、人々はむしろ、今回の選挙から帰着するあり得る変革に関しては慎重だった。
 注目は特に、憲法制定会議への選出に焦点が絞られた。つまり、ピノチェト独裁期の41年前に発布された新自由主義的なマグナカルタに終止符を打とうとした熱く闘われた選挙だ。体制反対の民衆運動の道には以下のように数多くの障害物があった。
◦今回の諸々の選挙に対する選挙制度がもっていた性格。
◦単一の旗印(「チリ・ヴァモス〈チリは進む〉」)の下における右翼と極右の統一。
◦将来の憲法は適格性を与えられた3分の2の多数によって有効になると確認する、議会内で署名された協定。
◦この30年国を統治してきた主要政党に対する金銭的支配とメディアの支配。
◦合法的立候補を獲得する上での、社会運動の戦士たちが遭遇した諸困難。
◦無所属陣営の大きな分断と左翼の躊躇。
◦パンデミックと経済危機。

規制の秩序総体に対する拒絶

 第1に、憲法制定会議との関係で、右翼の連合はその傲慢さを捨てざるを得なかった。その指導者たちは、最低でも議席の3分の1(155議席中52)は取れるだろう、こうして、阻止力を保持した少数派と将来の憲法全条文に関する拒否権を確保できるだろう、と自信をもっていたように見えた。それらは崩壊した。「チリ・ヴァモス」は、23%をほんのわずか上回る得票率をもって、37議席でよしとしなければならなくなる。それはまた、ピニェラ大統領に対する処罰と侮蔑でもある。彼は、彼の国が何ヵ月も経験し続けていた諸々の危機に責任を負っていたのだ。
 もうひとつの驚きは、反政府派左翼内部の力関係が大きく逆転した、ということだ。2010年代の諸運動から強化されて現れた、共産党とフレンテ・アムプリコ(拡大戦線)を結集したリストが28議席(得票率18%)をもって勝利した。他方、独裁制の経済的遺産を問題にすることなく1990年から2010年まで統治した元コンセルタシオンの社会自由主義諸政党は、25議席しか勝ち取れなかった。社会党は15議席、キリスト教民主党は2議席だけだ。
 しかしながら、左翼と中道左派でも、憲法制定会議の3分の1しか代表できないだろう。本当の驚きは、「無所属」を支持した票の大きさだった。彼らは総計で48議席を獲得し、諸政党に対する拒絶を決定的に刻み付けた。これは、悪名高い保守主義者をも含んだ、極度の異質性を抱えた候補者グループだ。しかし多数は、過去数十年の権威主義的かつ新自由主義的な遺産に対し批判的だ。
 これは全体として「人民のリスト」候補者の場合だ。そのリストは、社会運動と組織された市民社会の代表者を結集した。それは24議席をもって、フェミニスト運動の何人かの指導者や「アウント・ピカチュ」のような10月の反乱出身の人物を憲法制定会議に送り込んだ。
 「コオルディナドラ・フェミニスタ・3・8」の指導者、アロンドラ・カリロも、無所属と社会運動から構成されたリストで選出された。その上この選挙では、女性たちが男性をはるかに上回る好成績を得た。そして実際、憲法制定会議内部でのパリティ(男女同等性)を尊重するという名目で、彼女たちの何人かは議席を放棄しなければならない事態にもなった……。
 こうして、右翼が彼らが期待していた拒否権を失うという条件で、社会的左翼と政治的左翼間の連携には、憲法制定会議の3分の2獲得を、またチリの新自由主義解体の開始――ついに――をあり得るものにする可能性が生まれるだろう。
 怒りは自治体首長選と知事選の投票箱でも表現された。その結果はこれからもっと詳細に分析される必要がある。ホルゲ・シャルプ(反新自由主義左翼)は、バルパライソで悠々と再選された。首都圏のレコレタ自治体の共産党首長であるダニエル・ハドゥエも同様だった(得票率64%以上で)。非常な人気を誇るハドゥエは、6ヵ月以内に行われる大統領選挙の公表済みの候補者だ。これは、右翼と社会自由主義者をさらに少しばかり震えさせるに十分だ。
 サンチャゴでは、30歳のフェミニストかつ共産党活動家であるイラチ・ハスレルが、選挙運動中の女性敵視と反共の諸言明によって悪名をはせた、右翼のフェリペ・アレッサンドリを相手に勝利した。知事選のレベルでは、環境活動家で公共財としての水の擁護者であるロドリゴ・ムンダカのバルパライソでの勝利が、社会組織と環境組織の活動家多数によって、幸福感と喜びをもって祝福された。

次は独裁との完全決裂の具体化

 代表性と諸政党と制度的なシステムの正統性が抱える危機は、投票に映し出されているだけではない。棄権もまた、有権者の61・4%という形で歴史的な高さだった! これは、民衆的な自治体ではさらにという程同じになり、所によっては65%を超え、何カ所かでは70%にすらなった。こうして、市民の過半は今回の政治的イベントに引き込まれるような感覚にはなかった。2019年10月に決起した人々のある者たちは、街頭での闘いを継続する目的で、この「選挙サーカス」をボイコットせよ、と人々に呼びかけた。ほとんどの場合チリ人は、それが左翼であろうが右翼であろうが、また政党であろうが無所属であってさえも、「頂点にいる」者たちに対する無関心と不信を示し続けている。
 憲法制定会議が9ヵ月から12ヵ月の間に設立される予定の中で、11月の大統領選があらためて次の問題を提起することになる。すなわち、独裁と完全に決裂するためには、どのような種類のチリが建設されるべきか、という問題だ。

【補足】

 以下は、ディエゴ・ポルタレス大学社会変革研究所の「社会理論ノートブックス」共同編集者であるフランシスコ・サリナスが行った何点かの補足的指摘だ。

深部で蓄積した変革理念の勝利

 これらの結果は、15年以上にわたる社会的決起で進行し続けてきた変革の諸理念にとっての、圧倒的な勝利を表している。これらは、2019年10月18日から始まった大衆的な闘争の中でその高みを印した。ある人びとはわれわれに、われわれを代表する者はいない、われわれは2極化しつつある、と伝えた。しかし真実は、われわれは、変革は行われなければならないと分かっているが、しかしそれがまだ多数になっていないひとつの社会勢力を建設中でありつなぎ合わせ中、ということだ。
 (……)この選挙は、新憲法の起草に際して先住民グループ代表を公式メンバーにした。これらの人々向けには17議席が保証され、その多くは彼らの土地の回復と多民族としての国の認知を支持してキャンペーン中だ。このグループの中で最大の票を得た人物はマプチェの精神的指導者であるマチ・フランシスカ・リンコナオだったが、彼女は不公正にも嫌疑をかけられ、テロリズムと殺人行為に結びつけられていた。おそらくある者たちは、象徴的な賠償と新しいチリの象徴として、彼女をこの会議の議長に対する十分な候補者と考えている。
 (……)全体として、多元性と社会的公正への切望が、この新たに選出された機関の特徴だ。左翼政党のコンベルジェンシア・ソシアル(社会的収斂)から憲法制定会議に選出されたコンスタンザ・シェーンハウトは、この報告に今回の選挙に関する見解を寄せるよう彼女に頼んだ際、次のように明らかにした。
――われわれは、この憲法制定過程は人々と向き合わなければならない、と確信している。すなわちそれは、この30年から40年の間排除されてきたあらゆる声を含まなければならない。それは、フェミニスト、環境活動家、さまざまな労組、諸評議会、さまざまな地域組織と共に一体的に行われなければならない。そしてそれがわれわれがこれからいるところだ。なぜならばわれわれは、社会的な公正を達成するための有益なツールになる新憲法と開かれた憲法制定会議を必要としているからだ――
 サンチャゴの中低所得地区自治機関であるインデペンデンシア町議会に左翼政党のイグアルダード(平等)から選出された代表のヘニンフェル・ペレスは、私に以下のように話した。
――インデペンデンシア自治区の憲法制定を求め自治を求める民衆運動を代表する組織の結果が人民の議員を生み出すことができたこと、に私は非常な満足をおぼえている。それは、この地区の不況を理由に住宅街に根拠をもつ、しかしこの地域の多様性を真に表現できた、困難な仕事だった。
 われわれの考えでは、今日われわれはすでにこの選挙についていくつかの重要な分析を行うことができ、わたしは、諸制度をしのぐ潜在力をもつ集団的空間を組織することとして、他の諸地域ではそれは完全な処方箋だった、と保証できる。それらこそ、疑いなく勝利した構想だった。
 したがって、これが今後、大きな挑戦課題に、またわれわれに大きな教訓を与える運動になる。活動が本物であり人々に透明であるならば、彼らは必ず反応する――
(2021年5月17日、アンティキャピタリスト・レジスタンス)

▼デイヴ・ケラウェイは、第4インターナショナルと協力関係にあるソーシャリスト・レジスタンスの支持者。
▼フランク・ガウディショーは、フランスのトゥルーズ・ジャン・ジョレス大学におけるラテンアメリカ史教授。フランス・ラテンアメリカ協会共同代表であると共に、ウェブサイトwww.rebelion.orgおよび「コントレテムプス」誌編集委員会に参加している。(「インターナショナルビューポイント」2021年5月号)  

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