ベラルーシ「前例がなく受け入れがたい」、本当か?

EUには数々の汚れた実績
5月25日 「ランティカピタリスト」

 ジャーナリストで反政府派の人物であるロマン・プロタセヴィッチをとらえるための、ベラルーシによるライアンエア機ハイジャックを、EUは標記のように表現した。確かにベラルーシ政権は、アテネからヴィルニスに向かった民間航空機の飛行を妨げた(注1)。これは明らかに怒りを呼ぶものであり、ルカシェンコと彼の取り巻きたちが彼に恐れることなく反対する者たちすべてにしかけ続けている抑圧攻撃の、さらなる1歩を表している(注2)。
 しかしそうであっても、EUの言う「前例のない」には、あまりに過大な言いすぎがある。少なくともフランスにはひとつの前例がある。
 1956年10月22日、フランス軍は、アーメド・ベン・ベラを含むアルジェリア民族解放戦線(FLN)のもっとも重要な政治指導者たち5人を乗せて、ラバトからチュニスに向けフランス領空外を飛行していたエア・アトラス―エア・モロッコ機を捕獲した。この飛行を止めるために戦闘機はアルジェリアのフランス軍基地を離陸した。それは、当該機が着陸を拒否した場合射撃することを含んだ、エア・モロッコ機への強制着陸命令に基づくものだった。ベン・ベラと彼の同志たちは1962年まで政治囚にとどめられた。
 この注意の目的は、プロタセヴィッチの拉致と彼がさらされる可能性のある危険を相対化することではない。NPA(反資本主義新党、ランティカピタリストは同党機関紙:訳者)は明白に、彼の解放を求めるベラルーシ反政府派の呼びかけに力を合わせている。しかしいわゆる「ごろつき」諸体制やテロリストとレッテルを貼られた諸グループだけが、ハイジャックの専売特許をもっているわけではないのだ。
 フランスの例以外にも、反カストロ活動家の1集団によるキューバ民間機に対する計画的攻撃についてCIAが情報を受けたにもかかわらず、CIAはそれを阻止するために何もしなかった、という証拠がある。そしてその攻撃は1976年10月に、航空機がバルバドスから離陸した直後に実際に起き、73人の死を引き起こした。
 ある者たちはベラルーシの行為を国家テロと呼んだ。われわれはそれに同意する。しかし他の多くの国もテロ行為に頼ったことがあり、今もそれに頼っている。2016年、フランソワ・オーランド(前フランス大統領)は、ふたりのル・モンド紙ジャーナリストによって出版された著作の中で、フランスによる標的を絞った暗殺の利用に開けっぴろげに言及した。トルコ国家は、その敵対者、特にクルド人を追跡してとらえている(2113年に起きた、パリのクルド情報センター前での、活動家3人の暗殺を含んで)。プーチン政権は毒の使用が好みだ。イスラエル情報機関について言えば、1冊の最新本がこの地における彼らの諸々の行為を辿っている。
 実際あらゆるブルジョア国家は、多少とも人道主義的な堂々とした宣言の背後で、多かれ少なかれ目立たずに、汚れた手法に頼ることを躊躇しないのだ。

(注1)ガーディアン紙2021年5月23日、「ベラルーシ、ブロガー逮捕のためライアンエア機の行き先を変えさせ『ハイジャックした』として非難される」。
(注2)BBC2021年5月26日、「ベラルーシのジャーナリスト、ロマン・プロタセヴィッチの同僚たち、彼のいのちを気づかう」。(「インターナショナルビューポイント」2021年5月号)  

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

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