イラン 危機の中の新たな波

ストライキに続く大衆的抗議
フリーダ・アファリー

 イランは今、経済的、社会的、環境的、また公衆衛生の諸問題が人口の大多数に生きるに必要な最低限のものをもつことを不可能にしている中で、大衆的抗議とストライキのもうひとつの波を経験中だ。

石油化学でスト
水不足への抗議


 主にアラブ民族が住むフゼスタン州における厳しい水不足をめぐる新たな大衆的抗議は、7月15日に始まった。抗議に立ち上がった者たちのスローガンは、「独裁打倒」、「ハメネイ打倒」、「イスラム共和国は欲しくない」、「人民は体制崩壊を求める」などを含んでいた。政府の治安部隊は、銃撃を加え、少なくとも8人を殺害、他の多くを負傷させさらに逮捕した。
 しかしながら、アゼルバイジャン、クルディスタン、イスファハン、シスタン、バルチスタン、テヘランで連帯の抗議行動が始まっている。イラン人の映像作家、教員、作家グループがこの抗議行動を支持する共同声明に署名した。テヘランバス労働者組合による連帯声明には次のような言葉が連ねられている。すなわち「今のフゼスタンの水不足の根っこには、先立つ数十年にわたる石油採掘資本主義の強欲で利益を中心に置いた職業上の合理性を無視した政策、および製鉄産業向けの水利用がある。そしてそれらからの所得は民衆には向かっていないのだ。水は長時間止められている。それは今基本的な必要に足りていない。農民と育牛農民もこれまでに打撃を受け、彼らの家畜を失った」と。
 最新の抗議行動はイランの石油とガス産業における臨時契約労働者による一連の全国規模のストライキに続くものだった。そして先の産業もまたフゼスタンの比重が大きい。6月19日に始まり、100ヵ所の生産現場まで広がったストライキは、期限の定めのない雇用の地位、月額500ドルの賃金、安全な労働条件、さらに団結権と政治的監視からの解放を求めている。フゼスタンでストライキ中のハフト・タペーのサトウキビ労働者もまた、コヴィッドワクチン接種を求めていて、水不足反対の抗議行動との連帯を明らかにしている。

経済危機下の
パンデミック


 イランは深刻な経済危機を耐え忍び続けている。それは、シリア、イラク、レバノン、イエメンへの帝国主義的な地域介入、および核兵器とミサイル計画の犠牲として、また米国の経済制裁の作用によってもたらされたものだ。公式の最低賃金は、概算で月額120ドルだが、それは4人家族がギリギリに必要とするものの費用が月額500ドルである国でのことなのだ。毎日のこととして、電気は数時間遮断されている。インターネットへのアクセスは多数にとって、費用を理由に、あるいは政府の抑圧によって、より制限されるか不可能になろうとしている。
 この状況の中で、コヴィッド・パンデミックが住民に大混乱を与え続けてきた。デルタ株が広範に広がり続けている。人口の95%以上はまだワクチン接種を受けていない。そしてはるかに安全性が劣るものを含めいかなるワクチンでも、利用の可能性はまったくない。公式の死者数はおよそ8万8000人だが、真の数はそれよりもはるかに大きい。8300万人という人口中、かなりの部分がすでに感染している。しかしながら、政府の抑圧が理由で正確な数はまったく存在していない。
 コヴィッド19は、公式数字として19万人を抱えているイランの刑務所内で急速に広がり続けている。女性の収監者もコヴィッドに苦しみ、死に向かい続けている。そこにはジャーナリスト、教員、フェミニスト、労働運動活動家、学生、環境保護活動家、クルドやアラブ人の市民権活動家が含まれ、宗教的マイノリティの女性も含まれている。

アフガン難民
と女性政治犯


 刑務所に囚われたフェミニスト人権派弁護士であり、「革命通りの少女たち」の擁護者であるナスリン・ソトウデーは、コヴィッドに加えてさまざまな健康問題に苦しんでいる。ノーベル平和賞候補者に挙げられたこともある死刑反対フェミニスト活動家のナルゲス・モハムマディは、長期刑を宣告された後昨年釈放された。それは、死刑反対を続けているとして、また「国家の安全を危険にさらしている」として、むち打ち80回をも含むさらなる懲役刑を受けるために過ぎなかった。彼女はこの宣告と闘い続けてきた。そしてフゼスタンの人々、ストライキ中の労働者、政治犯の家族たちと連帯する抗議行動に姿を見せてきた。彼女は近頃のインタビューで、イランの女性の闘争を「イラン体制のアキレスのかかと」と呼んだ。
 フゼスタンで投獄されたフェミニスト労働運動活動家であるセピデー・ゴリヤンはアラブ系女性収監者の苦境について書き続けている。彼女は刑務所内で激しく殴打されたことがあり、現在はハンスト中だ。
 イラン国内のおよそ300万人を数えるアフガン移民・難民は、追い出され続けている(2020年以後45万人が追い出された)。イラン政権はイラン外相のジャヴァド・ザリフの指揮の下に、アフガン政府およびタリバンとの間でさまざまな交渉を行い続け、アフガニスタンのシーア派のハザラ住民をタリバンが殺害してきたにもかかわらず、タリバンが力を強めることを今も助けている。

野心と冷笑主義
帝国主義に共通


 イラン政府はこれらのあらゆる危機と抗議の最中に、シリア、イラク、レバノンにおける帝国主義的な地域的介入を維持している。それは、亡命中の反政府派活動家の拉致や暗殺という策略を推し進めている。それは、核計画とミサイル計画を発展させ続けている。そして核合意への回帰に関するバイデン米政権との交渉を停止させた。
 イラン次期大統領としてのエブラヒム・ライシの「選出」では、はじめから極めて低いものだったイランの基準によってさえ、投票率が最低になった。ライシは以前、イラン司法府長官であり、その直前にはイスラム革命防衛隊(IRGC)の建設複合企業であるGHORBのトップだった。
 彼には、1988年に政治犯数千人の処刑を命じた「死の委員会」メンバーとしての悪名が轟いている。2019年11月の反乱の中では、彼の監視下でおよそ1500人の人々が政府部隊によって殺害された。アムネスティインターナショナルは、人道に反する犯罪を犯したとして、彼を厳しく非難してきた。
 ニューヨークタイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンは、イランに関する彼のもっとも新しいコラムで、帝国主義者の非人道性を露わにしている。彼はそこで、「イランに対して誰もが期待可能な最良」である「解決案」を示しているのだが、彼が力説していることは、米国は、イランをシリアからたたき出すために湾岸諸国の助けに基づきアサド政権にもっと多くの資金援助を与え、ロシアとトルコを支配的な大国として維持し、アサド政権の継続を確実にしなければならない、というものなのだ。
 これはイランの危険を引き下げ、米国とイスラエルを満足させるだろう、と彼は語る。彼にとって、この地域の民衆、つまりシリアのアラブ人、クルドの人々、イランの住民は、 米国と世界の帝国主義者の将棋盤における単なる駒にすぎない。

イラン内の闘争
との連帯が必要


 同様のシニシズムを示している者たちは、「反帝国主義者」としてイラン政権を支持する、あるいはそれへの批判を拒否する、世界中の左翼といわゆる社会主義者だ。
 米国の制裁撤回を求めることに連帯を限定している者たちは、イランにおける諸問題の複雑さを認識することを拒絶している。彼らが取り組んでいないことは、これらの問題の根っこには、米国、ロシア、中国という外部の帝国主義、および内部の資本主義的軍国主義と宗教的原理主義の両者がある、という事実だ。
 イラン国内の諸闘争との連帯に取りかかるためのあらゆる努力は、米国の制裁の撤回とイスラエルの攻撃を終わりにすることを求めることで始まるだけではなく、同時に、イランの抑圧と地域の環境と民衆に対する搾取に対しイラン政権に説明責任を負わせることからも始まるのだ。その認識は、政治犯の即時釈放を求めること、ストライキ労働者、フェミニストおよび環境保護の闘争との、また抑圧された民族的、性的、宗教的マイノリティとの連帯を示すこと、シリアとイラクからのイラン撤退、およびアフガニスタン、レバノン、イエメンへの介入を終わりにすることの要求、これらのことを求めている。

▼筆者は、イラン系米国人の司書、かつ翻訳家、「イラン進歩勢力の翻訳」というブログをもち、「中東社会主義者連合」のメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2021年8月号)   

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