トルコ エルドアンの危うい綱渡り

独裁強化へ西側再接近

ウラズ・アヴディン

 彼女の名前はデニツ・ポイラツという。この27歳のクルド活動家が、2021年6月18日HDP(人民民主党、親クルドの左翼)イズミル事務所で極右活動家によって殺害された。殺人犯のオヌル・ゲンケルは、正面に警察の常駐検問所があるその建物に、さえぎられることなく入ることができた。
 後で知られたことだが、殺害時刻に開かれることが予定されていた約40人の会議は、ギリギリ間に合って取り消された。写真ではシリア北部――そこで医療労働者として働いていたと言われる――で作業着姿で自動ライフルを持った姿を写されている、また何度かこの建物を偵察していた暗殺犯は、ふたりの共犯者と共に、ほとんど確実に疑いなく大虐殺を実行しようとしていたのだ。そしてその共犯者たちは何とか逃れることができた。ポイラツが殺害前に拷問を受けたことも明らかになっている。

露骨さ極まる
二重基準摘要
 殺人者を現場で逮捕した警官たちの情け深い姿勢は、またまず確実な彼の政治的なまた他のつながりへの捜査を深めようとすることなく、裁判の間の拘留という24時間のうちの彼の再配置は、一定の人々から厳しく批判された。学生、女性、また特にLGBTI+の人々に対する抑圧との間で対照が示された。プライドに際して組織された最後の人々のさまざまな催しは、警察から非常に厳しい弾圧を受けたのだ。エルドアン大統領はこの殺人を強く非難するまで2日間も時間をかけたというものの、それ以上に真に衝撃だったことは、この攻撃の3日後に、「テロ活動」を理由として憲法裁判所がHDP禁止起訴手続きを受容したことだった。

国際関係再編
へのもくろみ
 逃亡中のマフィアボス、セダト・ペケルがユーチューブ動画とツイートを通して、組織犯罪と国家機構の共謀のレベル――国際麻薬取引からマネーロンダリングまで――を曝露してきた中で、何よりも3年の間深刻化してきた経済危機のゆえに国内的に弱体化したエルドアンは今、多国間緊張の時期を経て、国際レベルで自らを西側の一団の傍らにあらためて位置を定めようと試みている。
 度を超したうぬぼれを基礎としたアンカラのその日暮らし的対外政策は、競合する諸大国と別々に交渉することで、「自立的」進路を追い求めることを狙いとした。この期待は実際、AKP(公正発展党、エルドアンの党:訳者)のイスラム民族主義基盤内の分解過程を緩やかにするという狙いを伴って、国内レベルでの地固めに一定程度まで余地を与えてきた。
 しかしながらアンカラは、彼らの「自立」という術策の余地が縮むのを経験した。特にトランプの敗北とバイデンの権力到達後にそうであり、そこにはモスクワとの(重要な軍事的、エネルギー上の協力にもかかわらず、リビア、ナゴルノ―カラバフ、ウクライナのような問題に関する)、またEUとの(特にマクロンとの間で)高まり続ける緊張が付随している。

頼りは依然
西側のお情け
 エルドアンはこうして、他方で屈することのない豪腕の男という彼の選挙基盤に見える彼の姿勢を維持しようと試みつつ、彼の新しい転換を納得させるために、NATOサミットとEUサミットを利用することを計画した。こうしてバイデンとの彼の会談が、アルメニア人ジェノサイドのワシントンの認知に対する説明責任を求めるひとつの機会として差し出された。しかしエルドアンは、ジェノサイドという話題を出すこともないまま、米国撤退後のカブール空港の安全確保を下請けするとの約束を抱えてそこから去った。
 トルコはEUサミットの中心にはいなかったが、西側の一団は、その地政学的な位置を前提に、特に移民問題との関係で、アンカラを彼らの側に必要とし、彼が忠誠を誓い、「協調的」として自身を示す限り、民主主義の問題に関し多くを彼に迫りすぎないつもりのようだ。こうしたことは、独裁者の打倒は搾取され抑圧された者たち自身の仕事になろう、ということを十分に分かっているトルコの左翼勢力を驚かすものではない。

▼筆者は第4インターナショナルトルコ支部機関誌の「イエニヨル」の編集者、また2016年のクーデター策動後に指令された非常事態令を背景に、クルド民衆との和平を支持する請願に署名したことで解雇された多くの学者のひとり。(「インターナショナルビューポイント」2021年7月号) 

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