タリバンの勝利は平和の兆候ではない
アフガニスタン情勢の急転回
米国による占領は人命を奪っただけ
人民自身の民主主義へ
今こそ国際連帯と社会主義のために
ファルーク・タリク
アフガニスタンにおけるタリバーンの政権掌握は、何よりもアメリカ帝国主義のアフガニスタン侵略戦争の敗北を示すものであった。2001年の9・11テロを出発点にしたアメリカの「対テロ戦争」は深刻な敗北に帰結した。この情勢がもたらす世界的な影響についてファルーク・タリク同志の分析を掲載する。(編集部)
米帝国主義はすべて失った
アメリカ帝国主義がアフガニスタンへの人的・財政的投資をすべて失ったことは今や明白である。タリバンは戦うことなしにアフガニスタンのほとんどを占領した。過去20年間、開発・「民主主義」・軍隊の訓練という名目でアフガニスタンに費やされたものは、世界史において前例のないものだった。
[アメリカ・ブラウン大学の]「戦争のコスト」プロジェクトによれば、アメリカはアフガニスタンに2兆2260億ドル[約247兆円]を注ぎ込んだという。この金があれば、世界中で基本的な教育や医療を提供することができたことだろう。アメリカ国防総省が2020年に出した報告書によると、アメリカは戦争費用として8157億ドルを費やした。パキスタンの対外債務総額は現在1160億ドルなので、この金額はパキスタンの対外債務総額の7倍にあたる。これだけのことをしたにもかかわらず、アメリカ人はアフガニスタンから急いで撤退している。そして、アシュラフ・ガニ政権の崩壊は、一発の銃弾も発射されないまま、アメリカの投資すべてがタリバンの手に引き渡されることを意味する。
すべてがタリバンの手に!
この戦争での犠牲者は、2021年4月までに4万7235人の民間人、72人のジャーナリスト、444人の援助従事者が殺されたという事実から推定可能である。また、6万6千人のアフガン兵がこの戦争の犠牲となった。
アメリカは、2442人の兵士を失い、2万666人が負傷した。さらに、3800人の民間警備要員が死亡した。NATOのアフガン派遣軍には40カ国の兵士が参加していた。そのうち、1144人の兵士が死亡した。
国外への避難民の数は270万人に上り、国内では400万人が避難を余儀なくされた。アメリカ帝国主義は、この戦争に資金を投入するために惜しみなく借金した。利子だけで推定5360億ドルを支払ったのである。さらに、帰還した軍人の医療費やその他の費用として2960億ドルを費やした。
戦わずして降伏している30万人のアフガン兵の訓練に880億ドル、ダムや高速道路などの復興事業に360億ドル、アフガン人がケシを栽培したり、ヘロインを売ったりしないように補償金として90億ドルが支払われた。
アメリカ人は、開発によってアフガニスタン人がタリバンの側につかないように説得できると考えていた。しかし、(タリバンの人気もまた疑問視されていたが)それは実現しなかったし、貧困も根絶できなかった。現在、アフガニスタンの失業率は25%、貧困率は47%である。これは世界銀行の推定値である。
しかし、人道的進歩も見られた。たとえば、平均年齢は56歳から64歳に上がり、5歳未満で亡くなる子どもの数は半減した。識字率は8%から43%に上昇した。都市部では、以前は16%しか安全な飲料水を利用できなかったが、その割合は89%になった。
いまやアメリカ人が金を出したものは何もかもタリバンの手に落ちるだろう。アフガンの兵士は武器を捨てて逃げており、それらの武器はタリバンの手に落ちている。タリバンはもはや1996年のアフガニスタンを占領しているのではなく、2021年のアフガニスタンを占領しているのだ。そこには何兆ドルも投資されていたのである。
このアメリカ人の敗北を、1986年のジュネーブ協定後におけるソ連のアフガニスタン撤退と比較することはできない。ソ連によって訓練された軍隊と兵士は、ソ連撤退後3年間も政権を維持した。しかし、アメリカ軍とNATO軍の撤退後、タリバンの反乱が始まると、アシュラフ・ガニ政権は数日で崩壊してしまったからである。
アフガニスタンの歴史的教訓は、外国軍の直接的な軍事介入によって作られた軍は国を守ることができないということである。
ソ連軍の駐留は10年続いて失敗した。アメリカ軍とNATO軍は20年間アフガニスタンに駐留したが、彼らが訓練したアフガン軍は戦わずして逃げ去っていった。
その理由ははっきりしている。アフガン民衆・兵士には戦うためのイデオロギー的基盤がなかったからである。
アシュラフ・ガニとその取り巻き連中は、巨大な汚職に手を染めていた。階級間の格差も激しかった。アフガニスタン人はアメリカ人のためには戦わなかった。その彼らがどうしてアメリカの代理人のために戦うなんてことがあるだろうか?
永続的内戦に替わるものは
アシュラフ・ガニの一味は資本主義の最悪の形態を表現するものである。その一方で、タリバンは、その残虐性にもかかわらず、宗教を巧妙に利用することができた。彼らは宗教国家という考え方を持っていた。アシュラフ・ガニは、自分がどんな国家を望んでいたのかを明確にすることができなかったのである。
タリバンの勝利は、世界中の進歩派にとって悪いニュースである。アメリカの代理人に対する批判は、タリバンへの支持を意味するわけではない。その双方に対する反対は続くだろう。真に民主的な社会主義イデオロギーの勝利だけが、アフガニスタンでの将来の流血を止めることができる。
タリバンの勝利は平和の兆候ではない。それは永続的内戦を告げるものなのだ。南アジアに熱烈な宗教国家がもう一つ樹立されることは、地域全体の宗教的宗派主義を促進し、反平和的手段が続くことになるだろう。
2021年8月15日
(『インターナショナル・ビューポイント』8月16日)
(ファルーク・タリクは、パキスタンにおける第四インターナショナル支持者の中心的活動家)
The KAKEHASHI
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