ベネズエラ
政府と右翼野党間の交渉
腐った妥協は許さない
2021年8月23日 LUCHAS(統一チャベス派社会主義者同盟)全国書記局
ニコラ・マドゥロ政権と急進的極右のブルジョア野党多数派間の交渉2回目が9月3日から同6日までメキシコで開催される。ちなみに後者は現在、ユアン・ガイドとレオポルド・ロペス、そして部分的にエンリケ・カプリレスに率いられ、ベネズエラ統一プラットホームを名乗っている。
交渉はノルウェイの仲介で、ロシアとオランダの支援を受けて8月13―16日に始まった(密室で)。
LUCHASは、すべての労働者、農民、コミュニティ成員、若者、女性運動との、また国境内外の左翼を主張する人々すべてとの必要な論争に貢献するために、このプロセスに関する立場を明確にしたい。われわれは以前、わが組織は交渉あるいは諸合意に賛成すると明言した。しかしながらわれわれはこの声明で、何がその基盤と条件であるかについて述べる。
明確な敵が
相手の交渉
第1にはっきりさせるべきことは、マドゥロ政権の交渉相手は、二義的な政治的違いをもつ組織ではなく、明言され証明済みの、国民主権と労働者およびベネズエラ民衆の利益に対する敵、ということだ。
これらの野党部分はこの間、陰謀、暴力行為、武装襲撃、暗殺の策動と攻撃、を繰り返し主導した者たちだった。そして、帝国主義の諸大国からわが国民に向けられた政治的、外交的、経済的攻撃を、さらには金銭で雇われた襲撃をも支持し、さらにベネズエラ民衆に対する残忍な経済封鎖の共犯者となり、国に対する軍事介入を永続的に求めてきた。このすべては、ボリバール革命のプロセスを打ち砕き、チャベスが大統領として権力に達して以来ベネズエラ民衆が獲得した成果を最終的に破壊し、社会的公正と国民の独立に対する切望をもう1度何十年も押し戻すことが目的だ。
右翼野党の切望は、力と強制によって、彼らが取り仕切る「平行政府」の押しつけだ。それは、あえて対抗するチャベス派の肉体的絶滅すら含んだ、ボリバリアンに歴史的な敗北を加えようとの意図に基づき、2018年に公共広場で自称されたものの同類だ。この政府は、ベネズエラを恥知らずなヤンキー植民地に変える忠実な道具となっただろう。
彼らの政治的な目標は果たされなかった。しかし、国民とベネズエラの勤労家族のポケットとテーブルに対する経済的打撃は、彼らが助けた帝国主義の経済制裁と、国家資産の引き渡し(イングランド銀行からのベネズエラの金、その他)によって、さらに恥知らずな腐敗で味付けされて途方もないものになった。
民衆の力こそが
敵に敗北を強要
この対話プロセスは、想定ではフアン・ガイドが首座に座る介入主義者の「平行政府」として具体化されたボリバール革命粉砕の帝国主義者の計画、が喫した政治的敗北で印されたひとつの鍵となる時点で行われている。
先の計画の敗北は、ただひとつの行動に起因する結果ではなかった。それは、引き続く諸々の敗北の結果だ。それらには以下のものが含まれている。すなわち、2019年1月の、コロンビア国境における「橋の戦闘」、翌日に大規模な民衆的決起の対抗を受けた同年4月30日のクーデター失敗、アラグア海岸のボリバリアン民兵と組織されたコミュニティによる金銭で雇われた侵攻の敗北、前回国会選挙で右翼が喫した選挙での敗北、今年の5―6月のアプレにおける金銭で雇われた侵入の敗北、カラカス南西で起きた暴力的な民兵蜂起策動の敗北などだ。
帝国主義者の計画が喫したこの敗北の基礎は、幅広いベネズエラ女性の頑強な抵抗、共同体の決意の籠もった関与、そして確固とした後衛としての民衆諸層の背後における、このブルジョアジーが遂行する陰謀すべてを拒絶し孤立させているベネズエラ勤労民衆だ。そしてそのブルジョアジーこそが20年間、公正と労働者階級および民衆諸階級の解放に向けたあらゆる挑戦を、過大搾取、圧政、レイシズム、侮辱、さらにもっとも残忍な抑圧に従わせる、という意図をあからさまにしてきたのだ。
それは、自立した民衆組織に基づいた闘争の諸経験を基礎とする抵抗の勝利だ。それは、諸階級間の力関係を基礎とした勝利だ。労働者階級は、疲れ切り消耗しているとはいえ、生き残り、その歴史的で具体的な敵を敗北させている。
苦い勝利には
国際的支えも
われわれはこの戦闘を単独で闘っているのではない。帝国主義の計画に対するこの勝利は、ベネズエラに対する反革命の本部と作戦部隊である、米国とコロンビアを先頃揺るがした途方もない民衆反乱の思いがけないまた同時的な助けを得た。また、チリ、ペルー、グアテマラ、ボリビア、さらにこの大陸の他のところで出現した、また起き続けている民衆反乱からも支えを得ている。これが、民衆に敵対してヤンキー帝国主義に奉仕している諸々の大統領の1種の介入主義反革命者クラブである「リマ・グループ」を粉砕した。そしてさらにOAS(米州機構)とアルマグロ(2015年に選出された同機構事務局長、ボリビアでの反モラレス策動を理由に現在ボリビア政府から追及されている:訳者)自身の根もとをも削り取った。
それは、困難かつ犠牲の多い勝利となった。敵が投機とハイパーインフレーションで内部から、経済封鎖で外部から、わが経済を荒廃させてきたからだ。その上、高まり続けている国家の腐敗でその結果の度を増し、これにこの2年のコヴィッド19パンデミックの恐るべき作用が加わっているからだ。
これらの要素すべてが組み合わされ、工業生産、特に原油産業のマヒを作り出し、飢餓、失業、中でも公衆衛生、教育、公共サービスの危機を作り出してきた。加えて、ほとんどが若者たちである何百万人というベネズエラ人が、わが国で獲得した経験と知識という富全体を携えて、別の展望と機会を求め移住し、国を逃れた。そして彼らは今日、しばしば虐待、外国人排斥、差別、酷使に苦しみつつ、また殺人の犠牲者にすらなりつつ、世界中に散らばっている。
当地のブルジョアジーとその諸組織が政治的に打ち破られたという事実が、民衆が選出した政府を認知するよう彼らを強要した。またこれまでに帝国主義によって示された暗黙の受容も、これを承認している。
労働者弾圧と
敵の解放ノー
現在の交渉を前にして、チャベス派の基盤は期待と不信というある種の混ぜあわせを示している。特に賭けられているものとわれわれ自身の利益を前提とした時、誰も秘密は好まない。
もっと満足できないものは、ブルジョアのテロリストへの免責続行の意図を示している主張や行為だ。確かにそれは、たとえば名高いフレッディ・「マリファナ屋」・ゲバラの承諾を得ない解放、また共謀者であるブルジョア組織と人物たちすべてに対する政治的自由の提供によって明らかになっている。政府は、今コヴィッド19の兆候で苦しんでいるブルジョアジーに政治的酸素を提供しているのだ。
したがってわれわれは、チャベス派民衆基盤がもっているそれらの懸念を共有する。加えて、それはわれわれに熱を与えその理由からわれわれは次の事実を糾弾する。つまり、政府が、ブルジョアジーとその高齢のグアリムベロス(抗議行動参加者、主に反マドゥロ抗議活動家を指す:訳者)に対する前もってのあらゆる種類の譲歩を行いつつも、エウディス・ジロット、サバリエゴ(PDVSA:ベネズエラ国営石油)のような、労働者指導者や他の者を刑務所や拘置所にとどめ続けている、という事実だ。後者では、2人の若いPDVSA労働者、アルイエニス・トッレアルバとアルフレド・チリノスが一例だ。また、10年以上を刑務所で費やした仲間の鉄鉱山労働者、ロドニー・アルバレスを例として、病に冒された仲間の刑務所収容者に対する特別ケアの要求に対する無視、も糾弾対象だ。
それこそがわれわれが警告する理由だ。つまり、この危機の困難の最中に、労働者、農民、女性、コミュニティ成員、若者、年金生活者、退職者が、整然としたまた民衆的な組織に基づいて守り獲得してきたものについて、交渉テーブルでの秘密合意はあってはならない。
勝利を打ち固め
前進への交渉を
交渉はあってもよいのか? イエスだ。そして交渉がなければならない。つまり、民衆の勝利から前進するための交渉だ。陰謀をこととするブルジョアジーは、この年月すべてを通じて敵に加えてきた敗北を打ち固める「公正に基づく和平合意」、に導かれなければならない。交渉は、和平を打ち固め、投機を解体し、帝国主義者の制裁政策に対する内部からの支えを清算し、結果として彼らが弱体化し、倒れる可能性をつくり出すために役立たなければならないのだ。
われわれが今見ているものはこれとは逆に、資本主義的な搾取の包括的な体制の確立(ブルジョアジーの切望と一体化した官僚のための)に向けたその計画における取引通貨としての、PSUV政府によるこの勝利の利用だ。そしてそこでは、ブルジョアジーの公然とした反革命主体すべてに対する自由と免責が交換材料になっている。
マドゥロと彼に「忠実な者たち」の降伏は、交渉という事実にあるのではなく、経済的降伏の諸要素、他国籍資本と国内資本に対する従属、極度の労働の柔軟化とブルジョアテロリストに対する免責、闘う労働者に対する政治的迫害にあり、これこそがこれらの交渉を今特徴づけているものなのだ。
こうして現在の交渉は、無駄であるだけではなく、犠牲の多い民衆の勝利をはっきりと裏切る危険がある。
LUCHASは、あらゆる労働者、諸組織、コミューン、左翼の知識人と諸組織、女性と農民の社会運動に、詐欺的な「平行政府」にわれわれが与えてきた敗北を基礎とした、抵抗中の勇気ある勤労民衆の必要に対する決意をもって前進するための交渉を支持して、自ら意見を述べるよう訴える。その必要とは以下のことだ。
(ⅰ)ブルジョアや官僚の見せかけの飾りやカジノという形の無駄遣いに反対し闘い抵抗してきたわれわれのような者たちの利益のための、国民経済の再建を可能にすること。
(ⅱ)賃金のインフレ連動、ドルに従属しない国民通貨の安定、共同体経済の防衛と拡張、労働協約の救出、これらに方向を定める和平の達成。
(ⅲ)以下の人びとを裁判にかけ拘留する代わりに、労働者、農民、コミュニティ成員、社会的闘士たちの政治的自由の強化。
われわれは、現在の条件下で、ブルジョアジーが、特に地方の中小規模の食料生産者が一定の経済活動に余地をもつべきだ、ということを否定しない。しかしこれも、飢餓賃金で、労働者の権利なしに、また国民主権喪失の下には行わせないようにしよう。逆に、ブルジョア経済により多くの場を与えることが必要であればある程、共同した労働者と民衆の組織はそれだけ多くの民主的統制を行使しなければならない。
われわれは、労働者、農民、共同体、民衆の抵抗を通して、帝国主義と犯罪的な右翼の新たな猛襲を打ち破ってきた。われわれはそこからわれわれの経済の再建を始めなければならない。政府の代表者たちがこの収支決算と深い考慮と諸提案を考慮するかどうかは、これから知ることとなる。(「インターナショナルビューポイント」2021年8月号)
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