ドイツ 総選挙を取り巻く異例な光景(10月4日発行)

政治的倦怠と社会的覚醒

ディマ・リューゲル

 以下はドイツ総選挙直前の現地の状況を伝えている。選挙それ自体は民衆の活力を引き出すようなものになっていないこと、他方で、同時的に社会的決起が続いていることが示されている。後者は日本の報道ではまったく伝えられていない。(「かけはし」編集部)
 9月26日に予定されたドイツ総選挙が次の政府を、したがって次期首相を決める。挑戦を受けることがなかったアンゲラ・メルケルの支配の16年後に来たいわば「時代の転換」だ。しかしながら選挙キャンペーンは、多くの人々の関心を高めてはいない。ドイツでは異例なこととして、特に鉄道労働者による大規模ストライキと病院における諸闘争によって、社会のニュースが選挙キャンペーンに影を落としてきた。

型にはまったキャンペーン


 キャンペーンのただひとつのテーマははじめから、偉大なメルケルの後釜に座る主な候補者たちの能力となっていた。病院問題については一語もなく、失業やエコロジー……についてもほんのわずかだ。そして、いくつかの小さな、ほとんど喜劇的なスキャンダル。
 緑の党の首相候補者、アンナレナ・ベアボックが3月には世論調査でリードを保ち、環境的移行(そしてそれに付随する諸々の補助金)に向け結集している企業家たちに歓呼して迎えられた。6ヵ月後、彼女の経歴に関する2、3行の誇張的ごまかしの発覚と論文盗用の非難を経て、緑の党は3番目に後退した。
 彼らは、ひとつの手続き間違いの後に、ヘッセ州でのリストを自分で取り下げることにより、自らを愚かに見せた。気候変動と無秩序な都市化の結末を残酷な形で前面に引き出した7月の苛烈な洪水でさえも、勢いの盛り返しにはつながらなかった
 3人の「大手」候補者のもうひとりも、この惨害の結果として苦しんだ。すなわち、もっとも影響を受けた地域のひとつであるノルトライン・ウェストファーレン州首相、そして保守派のCDUによって選出され指名されたメルケルの後継者、アルミン・ラシェットだ。彼の統治は多くから批判され、犠牲者追悼式典に際して、笑いながら携帯電話を使っているところを映像に撮られた。こうして今や、先頭に立っているのはオラフ・シュルツ――SPDの――だ。メルケルの副首相としての彼の主な成功は、この種のへまを避けてきたことだ。
 投票の終了時にはおそらく、さまざまな色合いの連立というゲームを演じることが必要になるだろう。つまり、新たな「大連立」政府(SPD/CDU)か、あるいは「赤―赤―緑」(左翼党、SPD、そして緑の党)か、あるいは緑―黒(緑の党―CDU)か、あるいは赤―黄色―緑の「交通信号」連立(緑の党、SPD、自由主義派のFDP〈自由民主党〉)か? 予想はおびただしい。そしてこのキャンペーンの沈滞した灰色にもかかわらず、虹のあらゆる色が巻き込まれている。

生気あふれる
社会的諸決起


 幸いなことに、これまでにもっと勇気の出るニュースがあった! 7月以来、繰り返されたストライキがドイツの鉄道をマヒさせてきた。諸労組関の競合という背景、および好条件を求める競り合いに余地を与える労組の多元性に対する攻撃に対抗して、少数労組のGDLは、2日間のストライキ行動を2回呼び掛け、次いで強い支持を受けた6日間ストライキを呼び掛けた。
 労組指導部の要求はおずおずとしている。コヴィッド一時金は減額変更され、賃金引き上げは、辛うじてインフレを埋め合わせているだけだ。何よりも彼らは、より良い労働条件と彼らの補足年金の維持のために今闘っている。彼らはパンデミックの中ずっと働き続けてきたが、ドイツ鉄道は、経営者たちには気前よく報いているのに、彼らのために何も計画しなかった……! 今後新たなストライキが告げられることになりそうだ。
 同時にベルリンでは、雇用と全員に共通の労働協約を求めて、ケア労働者による多くの力強いデモが起きてきた。ストライキは当初裁判所によって禁じられた。しかし近頃、ふたつの最大の病院組織によって新たな無期限ストライキの呼びかけが開始された。そして9月10日、商業労働者による1日ストライキ行動、ベルリンでは家賃上昇反対の決起、さらにルール地方における新治安法反対の大デモがあった。

意図しない中で
階級闘争の香り


 GDL指導者のクラウス・ヴェゼルスキーは、自身はCDU党員なのだが、鉄道の発展のためには緑の党に投票することが必要だろう……、しかしわれわれは本当のところ、それが誰であれ「最高位の救済者」を期待しているわけではない、と暗に示している。そしてそこには格好の根拠がある。つまりベルリンでは、現在病院労働者によるストライキを禁じ、公的病院を解体中であるのは、社会民主主義者、エコロジスト、そしていわゆる急進左翼を結集している連立政権なのだ。ヴェゼルスキーは、鉄道労働者ストライキの2、3カ月前マルクスについて聞かれ「階級闘争というその香りは、われわれがここで行っていることではない」と語った。しかしそれとは逆に、われわれはそう行動している……ように見える。(2021年9月16日)

▼筆者はドイツの左翼活動家。(「インターナショナルビューポイント」2021年9月号)

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