ドイツ既成政治の正統性喪失露呈下(10月18日発行)

左翼党大敗からの教訓とは
マニュエル・ケルナー

有権者75%が
第1与党不支持

 アンゲラ・メルケル政権の「大連立」を構成する政党のうち、保守系のCDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟)とSPD(社会民主党)は、それぞれ有権者の4分の1しか獲得できなかった。CDU/CSUの得票率は24・1%で、過去最悪の結果だった。SPDは、首相候補のオラフ・ショルツを擁し、数週間前には世論調査で15%を下回っていたが、25・7%で1位となった。
 つまり、有権者の75%は、次期政権の第1与党がどの党であっても、その党に投票しなかったことになる。CDU/CSUからSPDに流れた約160万票には、オラフ・ショルツの保守的な政治的プロフィールが強く関連している。ショルツは、「アジェンダ2010」(注1)という粗雑な反改革を作り上げた社民党指導者の世代に属する穏健派なのである。
 投票率が76%で、連邦議会に議席を持たない小政党への投票が8・7%あることから、ドイツ議会は有権者の約3分の1しか代表しないことになるだろう。その結果として民主主義の正統性が失われたことは、何年も前から進行してきたプロセスを反映しており、それはますます顕著になっている。

勝者は緑の党
そしてFDP


 連邦議会内の極右政党である「ドイツのための選択肢」(AfD)は、議席を減らしたことに満足していない。AfDは得票率10・3%にまで落ち込み、最大野党の地位を失った。さらに、AfDは内部対立で引き裂かれている。党員や指導者の中には、コロナ否定派を支持してネオナチと一緒に行進しようと考える人々がいる一方で、ブルジョア公式政治の環境により真剣に対応しようとする人々もいるからである。にもかかわらず、この政党は依然として手強い敵であり、東ドイツの多くの地域ではCDUを上回り、最強の政党にさえなっている。
 選挙での勝者は緑の党とFDP(自由民主党)である。緑の党は14・8%(数週間前にはCDU/CSUを抜いて最強の政党になっていた)という過去最高の結果で、リベラルなFDPは11・5%という目覚ましい得票だった。さらなる告知があるまでは、誰もCDU/CSUをSPDの従属的な相手とする「大連立」の復活を考えてはいない。

連立政府への
困難な妥協点


 来るべき数週間(あるいは数カ月)で議論され、交渉されるのは2つの選択肢である。つまり、SPDと緑の党およびFDPとの連立か、それともCDU/CSUとこれらの政党との連立か、のどちらかである。それゆえ、いずれにしても緑の党とFDPが次期政権において重要な役割を果たすだろう。
 妥協点を想像するのは容易ではない(FDPは高額所得者や富裕層への課税強化に反対する一方で、新たな公的債務を阻止したいと考えているため、SPDと緑の党が約束したインフラ、再生可能エネルギー、電子通信分野での投資にどのように予算をつけるかを考えるのは難しい)としても、CDU/CSUとその首相候補であるアルミン・ラシェが選挙の敗者と見なされていることから、「赤緑黄色」の連立があり得るかもしれない。

左翼党の敗北
の微妙な背景


 左翼党の得票率はわずか4・9%にとどまり、連邦議会に議席を持つのに通常は必要となる比例票での5%にも達しなかった。しかし、ドイツの選挙法では、少なくとも3つの小選挙区で当選した政党には比例代表での議席配分が認められており、左翼党は(ベルリンの小選挙区で)3人の当選を果たした。この非常に悪い結果により、左翼党は結成時に得た信用をすべて使い果たしたように思える。2009年[の正式結成後はじめての総選挙]では、左翼党は11・9%の得票を獲得し、これは「良いスタート」だと思われた。
 誰に責任があるのか? 革命派や急進的な反資本主義左派は、日和見主義や議会主義への順応(これは現実の問題である)のせいにする傾向がある。きわめて「普通の」親資本主義政策を適用する地方政府への参加により、この党はもはや資本の支配に対する反乱勢力としては認められなくなったというのである。しかし、それほど単純な話ではない。
 多かれ少なかれ左翼党に投票する用意のある人々の大多数は、連邦レベルでもこの党に政府への参加を望む傾向がある。彼らは、NATOに反対する党の立場(実際には、かなり観念的なもの)や連邦軍によるいかなる国際的な介入にも反対する党の立場(この場合、左翼党の議員は常にこの原則にしたがって投票してきたので、非常に実践的なもの)を、少し過激すぎるとさえ考えている。
 したがって、うまくいく秘訣を見つけるのは簡単ではない。どうすればより多くの票を獲得できるかを常に知っていると言えば、正直ではないだろう。ときには、時流に逆らって、人気のないことを声高に言わなければならない。さもなければ、左翼党からSPDに流れた60万票を例にとってみよう。それは、選挙前の最後の日には可能と思われた、アルミン・ラシェがSPDを打ち負かすことができないようにする「役に立つ投票」あるいは「戦術的な投票」だった。そのことは、選挙直前のまさに最終盤に可能になったように思われる。われわれに非常に近い人々の中でさえ、選ぶのがきわめて困難だという人々がいた。つまり、CDU/CSUが勝利するリスクと、左翼党が5%の壁を越えられないリスクは、どちらも現実だったように思えるからである。そして、より広範な環境の中での「より小さな悪」に賛成する「役に立つ投票」に対して、解毒剤を発明するのは簡単ではない。

政治的左翼構築
へ全体的討論を

 つまり、どのようにして中期的に、より強力な政治的左翼を構築することができるのかを左翼党や左翼全体の中で議論すべきときが来ているのだ。その政治的左翼とは、職場・居住地・学校により根を張った、社会運動において行動的で奮い立たせるような、大資本とその政治的下僕の権力を打ち破るために、急進的な社会変革の観点に合致した具体的な動員と行動のプロジェクトの担い手となるものである。
 というのは、われわれは2025年[次期総選挙]まで待つことはできないからである。次期政権は、気候災厄との闘いを考慮するだけでも、あと4年間は迷走することになるだろう。そして、私たちに残された猶予期間はなくなり始めている。連帯とエコロジー的責任という原則が勝利するのか、それとも地球上で文明を保ってきたすべてのものが終焉するのか、のどちらかなのである。
 まさに選挙当日に、ベルリンで、すばらしい草の根キャンペーンのあとで、(最初は3千軒のアパートから始めて)大手不動産会社の収用を求める大衆的提案が[住民投票で]勝利したことは、今後の道筋を示すものである(注2)。
(注1)SPDと90年連合・緑の党を与党とするシュレーダー政権が打ち出した政策で、「国家給付を減少し、個人の自己責任と自助努力を促進する」ことにより「社会(福祉)国家の建て直し」をおこなおうとする緊縮政策である。
(注2)総選挙と同じ日に、ベルリンで、大手住宅賃貸企業の所有物件を政府が強制的に買い上げることの是非を問う住民投票がおこなわれ、賛成56%、反対39%で可決された。結果に法的拘束力はないが、法制化された場合、市内の賃貸物件約24万戸が公営化される可能性がある。
(『インターナショナル・ビューポイント』2021年9月30日)
(マニュエル・ケルナーは、SoZの編集者で、左翼党とISO(第4インターナショナルドイツ支部)のメンバー)

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