英国 自動車工業大再編(10月25日発行)

多国籍投資会社が工場閉鎖攻撃イタリアと英国で現場から反撃
草の根からグリーン移行掲げ攻勢的闘いを
デイヴ・ケラウェイ

フィレンツェで反攻が始まった

 9月18日、工場を閉鎖し、そこでの仕事をポーランドに再配置すると経営者が6月に決定したことを受けて、400人以上の労働者を支援しようとフィレンツェに2万5千人の人々がやってきた。彼らの職を救い出そうと現在も闘争中の他の職場の多数が、参加した。たとえばナポリからの、現在まで数年間彼らの工場を維持しようと挑んできていたフイルポールの労働者たちだ。下部の独立諸労組や現労組指導部に対する左翼反対派潮流もまた目立って多数だった。デモの主な横断幕とスローガンは「インソルジアモ」(反乱しよう)だった。
 GKN工場の指導部は、介入し支援を与えるよう政府に強要するために、彼らが国を貫く他の労働者の連帯を必要としている、と実感している。ひとつの職場が単独であるならば戦闘に勝つのは困難、という政治的な理解がある。この工場の指導部がCGIL・FIOM(CGILはイタリアの最大労組連合、FIOMは金属労働者を組織しているその構成労組:訳者)指導部に対する左翼反対派潮流によって支配されていることは驚きではない。あらゆるテレビと新聞がこのデモを報じ、闘争は全国政治に実体的影響を及ぼした。

労働者によるグリーン移行

 同時に、ブリンガムのGKN経営もまた、工場を閉鎖し仕事を再配置すると決定した。GKNは自動車工業関連であり部品を作っている。明らかにされつつあることは、これらの企業すべては、よりクリーンな(環境を破壊しない:訳者)輸送への移行に関する話を語っているが、しかしその道筋でできる限り多くの労働者を解雇しようと完全に用意を整えている、という事実だ。
 ブリンガムのユナイト労組は、彼らの職を救い出すと思われる移行計画――おそらくは、数十年前の有名なルーカス・エアロスペース・プラン以後では初めて――を書き上げている。9月27日開始として総力ストライキが呼び掛けられたが、その後、全利害関係者の交渉結果を待って、それは10月18日まで延期された。
 以下で、ユナイト工場代表であるフランク・ドゥフィがより詳細な何点かを明らかにしている。

 ブリンガムのGKN自動車工場での私自身を含む500人以上の労働者は、われわれの工場と英国の製造業両者を救い出すためのストライキ行動を支持して票を投じた。それは、われわれがこれまでやりたいと思ったこととしては最後に位置することだが、われわれは選択肢がない形で放置された、と感じている。
 (……)2019年に、GKN製品の90%は伝統的燃焼エンジン向けだった。しかしそれは2025年までに、製品の15%を使用する電気自動車類(EVs)、および同約40%のハイブリッド類に基づいて、半減するかもしれない。英国の諸工場が、純粋の内燃エンジンが2030年に禁止される以前の、新しい自動車計画を明らかにしている中で、電気への動きは一方的に継続するだろう。
 われわれの職と英国の自動車工業を将来も耐えられるものにする目的で、われわれは、新推進システムやeドライブを含むEVs向け部品の生産へと移行する必要がある。GKNはそのオックスフォードシャー研究施設に対する英国政府資金供与を使って新たなeドライブを開発してきた。
 しかし悲しいことだがわれわれは、この新技術が英国の労働者に対し新たなグリーンな職を生み出すことを見ることはないだろう。GKNの所有者であるメルロースは、2022年にわれわれの工場を閉鎖し、職を海外に移すと決定しているのだ。
 われわれは、英国の自動車工業にとってのグリーンな未来を見たい、そしてわれわれの熟練職を救い出したいと思うならば、われわれはそれをわれわれの経営者に任せることはできない、そして問題をわれわれの支配下に置かなければならない、と実感した。われわれは、マネーを節約しこれらの新部品を作るために生産をどう再組織化できるか、を詳しく述べている90ページの代わりの計画をまとめ上げた。
 われわれの計画は、英国の労組職場代表たちが提案した自動車工場向けの初の移行計画であり、いわば1976年のルーカス・プランのまねだ。その当時ルーカス・エアロスペースの職場代表たちは、またブリンガムでも、彼らの工場を社会的に有益な生産へと転換することを提案したのだった。
 (……)それが「公正な移行」という文言が意味するものでないとすれば、私にはそれが何かが分からない。しかしながら、メルロースはわれわれの計画を前向きに考えることを断った。
 買い占めた上で製造事業を再売却することを専門にしている投資会社であるメルロースは、GKNを2018年に敵対的買収を経て獲得した。われわれの労組であるユナイトは、当時この買収を批判し、この会社が獲得し3年から5年後にそれらを売却するという、企業を再構築しようとするこの会社の軌跡の記録は、この会社が長期の所有者として適していないことを意味する、と主張した。
 (……)英国全土で失業率が最高である10の選挙区中5つは、ブリンガムで見つけることができ、われわれの工場の本拠であるエルディントンは失業率が12・5%であり、全国平均よりも相当に高い。
 ブリンガムはすでにこのようになっていた。ロングブリッジの大工場であったローバー工場が2005年に閉鎖した時、その影響は何年も感じられた。ユナイトの先行労組であるアミカスは、労働者の90%が代わりの雇用を見つけるとしても、66%は結局のところ暮らし向きが悪化し、平均所得は6千ポンド以上下がり、報告された25%は何とかやっていくために借金するか貯蓄に頼っている、と示した調査を支援した。
 世界のあらゆる自動車企業が移行に向け速度を上げている。未来は、諸国の労働者が底辺への競争を互いに強いられている、職の外注化や海外化の上に築かれてはならない。
 その結果として未来に雇用の機会があるような、環境に親和性のある新たな技術に向けた英国製造業の移行をわれわれすべてが見たいのならば、われわれは、それを現実化するために、われわれが今あるような職と熟練を維持する必要がある。われわれを支援せよ。われわれはみなさんの未来のためにも今闘っている。

草の根の決起が勝利への扉開く


 われわれはあらためて、英国国家が自動車会社が技術革新し移行に取り組むことを助けるための研究に資金をこれから出すこと、しかし実際に構成装置を作り上げている人々には何の保証もないこと、を見ることができる。同時にメルロースのような投資会社は、しばしば手元資金の何倍もの借り入れによって、値上がりを見越して買いを入れ、次いで工場を閉鎖し、それらをもっとコストが低い諸国へと再配置することで、素早く利潤を上げることを当てにすることができる。
 イタリアと英国の双方で、生産が緒国に社会的な投げ売りに出されようとしている。ジョンソンは、水準引き上げとグリーン移行を自慢しているが、しかし政府は傍観しており、人々は人員合理化を通じて水準を引き下げられようとしているのだ。
 イタリアにおける戦闘は7月に始まった。その時そこでの経営者たちは、顧客からの注文取り消しを理由にした、1日の臨時的閉鎖を提案することで大きなたくらみをうまくやってのけている、と考えた。労組は、前日の閉鎖を決めた役員会について知らないままに置かれた。役員たちは、労働者が工場に近づけず二度と戻れない、と期待した。現場の労組指導部は職場を放棄しなかった。そして地域的にまた全国的に動員をかけた。イタリアのドラギ政権はここでのジョンソン政権と同じ程に残忍な親資本家だとはいえ、ある種の「国民連合」内の政治的力関係とイタリアにまだ残存している労働規制が、当地の労働者が最初の勝利を勝ち取ることを可能にした。
 CGIL・FIOM労組は彼らの弁護士を差し向け、地方判事は彼らと、会社が人員整理実行に際し全国に適用される規則を破っていることで一致した。つまり企業は解雇される人々に対し正当性と理由を説明する一連の手続きに取り組まなければならず、労組があらゆる段階に関与しなければならないのだ。そしてGKNは、労組のあらゆる法的なコストを払い、裁定の彼らによる受容と新たな交渉を始める彼らの意志を説明する、全国紙5紙での広告に費用を出さなければならない。
 明らかだが、労働者は彼らの職を最終的に救う上で法廷に頼ることはできない。それは、地域的な、また全国的な決起の強さにかかる。法的な裁定は解雇を禁じたわけではなかった。しかしそれは、士気の押し上げとなり、工場指導部に闘いを拡大するより多くの時間を与えている。
 今、生産を他の国に移す企業に今後諸制約を課すひとつの全国的な法律が討論されている最中だ。穏健派のPD(民主党)から出ている労相のオルランドが昨日占拠されたGKN工場を訪れた。そのような閣僚に幻想はもたないとしても、現場の労組指導部は政治的取り組みの重要性は理解した。新型コロナウイルスによるロックダウン期間中、人員整理に対する正式の全国的な禁止があった。労組、経営、さらに政府が関わっている未解決の工場閉鎖が大きな数になっていることを前提に、何人かの左翼議員が新たな禁止を求めていたにもかかわらず、先の禁止令は先頃廃止された。
 ある左翼紙の記事は、この日のデモの規模とそれがほとんど労働者階級から構成されていたことに見解を述べた。それは、新型コロナウイルスからのあらゆる回復の条件をめぐる反攻の始まりを予告しているかもしれない。

反攻を妨害する右転換の労働党


 現在、グリーン移行と新型コロナウイルス回復計画が、EU諸政権の政策の中では目立つものになっている。当地とEU内の世論調査は、より多くの人々には、ある期間に対してというよりも、むしろより高い税とより大きな公共支出、さらにより公正な移行を深く考える用意ができている、と示している。
 スカンジナビアは社会民主主義の支配に戻っている。そしてわれわれはドイツで、SPD(労働党に似た)/緑政府の可能性を伴うSPDの勝利を見ることができると思われる。右派の経済問題研究所による調査は、18―24歳の10人中8人もの多数が反資本主義の感覚をもっていると見出した。彼らの怒りは特に居住と環境によって駆り立てられている。
 ジョンソン政府ですら、世論調査でのリードが続いているにもかかわらず、潜在的により大きな反対に直面中だ。ユニバーサル・クレジット(英国の社会保障給付。労働年齢の低所得者を対象とした従来の6つの給付を合体しひとつに置き換えている:訳者)の切り下げによって示された生活基準への攻撃、休暇の終わり、国民保健拠出の増額、地方政府予算に対する政府補助金の切り下げ、そして暖房コストの大幅上昇は、すべて決起に火をつける可能性がある。
 元労働党の選挙区に対する地方開発資金支出と並んだ、ブレグジット、大英国、文化戦争に関するジョンソンの空威張りは、多数の支持を保つに十分だろうか?問題は、労組と労働党の指導部に、フィレンツェの労働者が行ったような行動に人々を決起させる、あるいはブリングハムの労組のような具体性をもったグリーン移行計画を仕上げる、そうした意志や能力があるかどうかだ。
 進歩的なグリーン・ニューディールの動議に対するスターマーの拒絶、英国製品購入への彼の焦点合わせ、あるいは雇用/再雇用やゼロ時間契約(実働時間のみを賃金対象にし、拘束のある待機時間を無給にする契約:訳者)に対する言葉だけの反対は、大衆的な反対を動員することにはならないだろう。コービン主義に対する戦争の継続、左翼の人々の党外追い出しは、あらゆる種類の反攻の形成から、彼をむしろさらに遠ざけるだろう。(2021年9月22日、「反資本主義レジスタンス」より)

▼筆者は、第4インターナショナルと協力しているソーシャリスト・レジスタンスの支持者。(「インターナショナルビューポイント」2021年9月号)  

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