ブラジル 反ボルソナロ抗議行動が成功
草の根と街頭の力の結集へ
ロベルト・ロバイナ
10月2日のフォラ・ボルソナロ(ボルソナロ出ていけ)の抗議行動は、準備を整えて十分に時間をとって呼び掛けられた。軍警察は、サンパウロでのデモが10ブロックにわたった、と見積もっている。抗議行動参加者は約10万人だ。リオデジャネイロのシネランディアには群集がつめかけた。ベロ・ホリゾンテでも8万人が行進した。リオ・グランデ・ド・スルー州のガウチョ(南米のカウボーイ)に由来する町々を含むブラジル南端でも、「フォラ・ボルソナロ」の叫びが轟いた。これはまた、北部と東北部の全州都、そして国の主要都市すべての事例でもあった。世界中のいくつかの首都でブラジルでの闘争との連帯行動が見られた。
街頭での力比べ
民衆が巻き戻す
10月2日の結果は力関係を分析する上でひとつの基本的な要素だ。第1に、この統一行動が、政府に有利に働く街頭での力関係のあり得る悪化、を妨げているからだ。この悪化は、ボルソナロの再選をますますありそうにしていない彼の人気の傾きと深まる孤立、にもかかわらずあり得るのだ。
10月2日は、民衆の記憶の中で、ボルソナロが街頭での強さを見せつけた9月7日を消し去っている。そして2013年以来、ブラジルでの街頭における存在が、深部の社会的かつ政治的趨勢に対する指標のひとつになっている。そしてそれが制度的変化に向け今も圧力をかけ続けているのだ。
選挙に没頭する
支配層とルーラ
9月7日には、極右がその動員能力の多くを失っているように、しかしあらゆることにもかかわらず、街頭でのその重みは今も存在しているように、そして対応がなければ、極右が急進化しより実力行使的になった中で、ボルソナロが自らを維持することも可能、のように見えた。この日翌日のトラック運転手の行動は、経営者層による公然とした支援を受けて、危機をつくり出し、成り行きの方向に影響を与える、つまりすでに限定されている民主主義の諸制度に圧力をかけるか、あるいはそれらを麻痺させるかの、その能力を示した。
9月7日、民主運動の「フォラ・ボルソナロ」が集めたデモの人数は、ボルソナロのそれよりもはるかに小さかった。運動主催者のおずおずとした呼びかけは、前衛の諸行動が決然とした気概を示すものとなり、独立記念日におけるボルソナロ派の街頭独占に対抗することを可能にしたとしても、怖れの高まりに余地を与えた。
本日(10月2日)、街頭は完全に「フォラ・ボルソナロ」のものだった。これはわれわれがそれとして祝わなければならない大きな勝利だ。これは、世論調査の中だけではなく街頭を通じても反対勢力が最強である、という証明だ。
しかしながらわれわれは、10月2日のデモが過去における「フォラ・ボルソナロ」運動の闘争日の動員水準に達していなかった、ということを認めなければならない。しかしそれらは、9月7日のボルソナロ派より多くの民衆を結集し、まったく疑いなくより広い全国的な広がりを実現した。
サンパウロにより多くの民衆を集めてボルソナロ派が示した、自らを印象づける力がより「爆発的」だったとするならば、それは彼らの行動日がサンパウロとブラジリアにおけるふたつのイベントだけに焦点が絞られていたからだ。その上そのイベントにはボルソナロが登場した。
われわれの10月2日は、以下のふたつの理由からわれわれの行動の最大とはならなかったのだ。
▼PT(労働者党)指導部とルーラは早くから、ボルソナロとの選挙での対決を主な戦略と選択していた。抗議行動におけるルーラの不在は、彼の政治工作においては、かれが街頭での抗議よりもより多くの重要性を選挙に勝利するための連携構築に与えている、という一つの指標だ。その社会的基盤をあやふやな状態にとどめているPT指導部の政治では、しかしボルソナロを権力の座から本当に取り除くことになるのは票との考えを心に満たすことで、街頭は二次的な役割を演じている。
▼ボルソナロと闘うことのできる候補者がまだ見つかっていない自由主義ブルジョアジーは、弾劾のリスクを犯したくないと思っている。
他方でセントラオ(欲得づくの議員からなる中道派グループ)は、それ自身の腐敗した目的のために政権を利用し続けている。そして実業界グループはボルソナロを褒めそやし、さらなる新自由主義的な構造調整を実行するよう彼に圧力をかけている。
そのもっとも重要な知的な表現がデルフィム・ネトであるブルジョアジーの一派はすでにルーラとの連携に駆けつけているが、多数派は今もそれ自身の候補者を捜している。この部分はひとりが見つかるまで、街頭で弾劾に圧力をかけることにはまったく関心がない。
加えて、ボルソナロは9月7日に彼の強さを見せつけた。そして、彼の投獄や彼に近い者の投獄は無論のこと、彼の弾劾を抵抗することなく受け入れるつもりはない、と警告した。ボルソナロは、9月7日の演説と扇動的な諸行為から累が及ぶことを心配して、ミシェル・テメル(いかがわしい旧式な政治家だが、ディルマ・ルセフのこの元副大統領は、彼女の弾劾後に大統領になった)に、ボルソナロは議会と司法の諸機構との休戦を保証する署名を行うだろう、との手紙を書くよう頼んだ。
これが選挙まで続くかどうかは今確定しているわけではない。しかし、弾劾を前に自由主義ブルジョアジーが後退を決めたという合図はまた、ボルソナロの退陣を求めて街頭に繰り出してきた何百万人という民衆の信頼を打ち砕くことにもなっている。
ボルソナロ打倒
の力関係構築へ
こうして、統一した全国行動が不在だったかなりの期間後に実現した10月2日の抗議行動は、ひとつのオルタナティブに道を開いた。それは、街頭の力によってボルソナロをゲームから追い出す最新の実体のある大衆的決起であると共に、最初の選挙動員にもなり得るものだ。あるいはそれは、ある種のはね返り、「フォラ・ボルソナロ」による街頭の主導力をめざす新たな試み、でもあるかもしれない。
上から目線の上層諸勢力は、そのように大声で声を上げる街頭を欲してはいない。彼らは、伝統的な諸機構と選挙主義の主導力が支配するゲームを好んでいる。これまでのところ革命的な推進力は、これらの勢力を打ち破ることができずにきた。われわれは、それは現実とはほど遠い、とさえ言える。
しかしそれこそ、われわれが今行っている賭だ。それは、力関係を変え、制度諸勢力と選挙主義の諸勢力に対抗する中で政府の退陣を強要することでの、成功の保証がない賭だ。
しかし、これに賭けることには価値がある。それが、闘争の中で構築され、街頭の期待を満たす、そうした新しい諸制度に基礎を与えることになる、政治的なかつ社会的な諸力を発展させるただひとつの方法だからだ。これこそが、反資本主義の綱領の社会的基礎を建設する唯一の道だ。
▼筆者は、ポルト・アレグレに居住するPSOLとモビメント・エスクエルダ・ソシアリスタ(左翼社会主義運動)の指導者。(「インターナショナルビューポイント」2021年10月号)
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