アフガニスタン 占領者がアフガンを見捨てようが

自由求める女性の闘いは続く
勇気ある女性の存在が希望の源
進歩勢力、民主勢力、世俗勢力の連帯を
マラライ・ジョヤ

 米国が彼らの侵略と戦争を発動してから20年後、長く苦しんできたわが国の人民は、まさにわれわれが始めたところに戻っている。何兆ドルもが費やされ、数十万人もが殺害され避難を強要された後、タリバンの旗が再度アフガニスタンの上に翻っている。

人民がタリバンに引き渡された


 2005年にアフガニスタン議会に選出されたもっとも若い女性として、私の経験は米国とNATOの戦争――戦争の口実として女性の権利を利用したものの、単にわが社会のもっとも腐敗した勢力に力を与えることができたにすぎない政策――の破綻を映し出している。
 私は、米占領軍が据えたアフガン政権内の軍閥の存在と犯罪を声高く発言し、糾弾したがゆえの、いくつかの暗殺の企てを生き延びた。その後私は議会から完全にはじき出され、いわば地下の存在として暮らすことを強いられた。
 アフガニスタンにおけるタリバン、およびISIS、アルカイダ、さらに他の何十というテロリスト組織といったこれら過激派のイデオロギー的兄弟の台頭とその今の帰還は、何十年にもわたる外国の介入と腐敗の結果だ。その介入と腐敗が、人生と相対的に輝かしい未来の希望を、われわれの無力な同胞たちにとっての恐るべき悪夢へ変えた。
 今までの20年間、私は、自由、独立、繁栄、また社会的公正を求めるわが人民の闘いに声を与えてきた。そして常に、あらゆる色合いのジハード主義―タリバンの原理主義者とそれらの血に飢えた外国の主人どもに反対する抗議の先端に立ってきた。これらの原理主義者は40年の間、CIA、モサド、MI6、Wawak/Savak、ISI(いずれも各国の秘密警察・情報工作機関であり、先頭から、米国、イスラエル、英国、イラン、パキスタンの機関の名称:訳者)といった非道な組織の傭兵であり、子分だった。そしてそれらがわが無防備で無実の人民を殺害し、追い出したのだ。
 アフガン国民に対する米国の最大の反逆は、アシュラフ・ガニの傀儡体制の助けを受けた恥知らずな取引を通して、アフガニスタンをタリバンに服従させたことだ。この行為をもって、また指名手配の犯罪者として国連のブラックリストに載せられているテロリストのタリバンに対し、和平合意の名目で特赦と国際的認知を与えることをもって、米国はもう一度、その下僕との不可分の絆を保持していることを証明した。同じ反逆が20年前、9・11後アフガニスタンで犯された。米国は、1992―1996年のむごたらしい内戦に責任があった残忍なタリバンを、原理主義者の軍閥と何人かの西欧的テクノクラートで置き換えたのだった。
 今や再び彼らは、いわゆる「和平」という名前の下にタリバンを権力の座に据えた。アフガニスタンでは事実上歴史が繰り返され、彼らは民主主義の価値を足蹴にしそれを裏切った。この残忍な戦争は終わりにはほど遠い。外国の情報機関諸々により武装され支援された残忍な一集団との邪悪な取引は、これから平和をもたらすことは決してなく、公正を欠いた平和は無意味だからだ。

米国とタリバンの犯罪が今なお

 歴史を振り返れば米国政権は戦争犯罪を諸々犯してきた。そして彼らはそのアフガニスタンでの最後の作戦でもそうした。空港で待機していた群集に突進し、40人以上のアフガニスタン人を殺し負傷させ、必死の他の何人かを軍用機から落とすことによってだ。彼らは、ISISを標的にしたとの名目で空港から住宅地にロケットを発射し、結果として、女性と子どもを含む9人のアフガニスタン人を殺した。
 恥ずべき米国の取引の中でタリバンが権力の座に到達したということは誰もが知っている。そうでなければ、あらゆる軍事手段を備えた、またいわゆる国際社会から20年の支援を受けた米国政府とガニ政権が、どのようにして一夜にして完全に崩壊し得たのだろうか。これはおそらく、過去50年の中でもっとも見苦しくもっとも苦痛に満ちた悲劇だ。そしてその中で、CIAおよび他の外国の情報機関と軍隊が、自由を愛する国民に恥をかかせ苦しめ、彼らを残忍な恐竜の口の中に放置したのだ。
 この新たなタリバン体制に入って2ヵ月足らずで、われわれは早くも、わが人民に今後彼らが解き放つ残酷さを見ることができている。もっとも目立つ事例は、パンジシール(カブールの北東に位置する渓谷地帯、長くタリバンと対立していた勢力が拠点としていた:訳者)の広大な地域に対する爆撃とその破壊、そしてその住民の計画的で狙いを定めた殺害、即決処刑、住民の強制移住、デモに対する残忍な弾圧と拷問、多くのジャーナリストと社会活動家の行方不明、一定数の若い抗議行動参加者の行方不明、そして他の何十という悲劇的事件だ。最後のものは、これらの残忍な殺人者からなる死を呼ぶ体制の中で記録に残されてきた。そして先の行方不明者の運命は今も分かっていない。

不変なタリバンと抵抗の必然性

 私は過去何度も言ってきたが、今も繰り返す。タリバンは変わっていず、穏健に、穏やかに、そして人道的にもなってはいないと。「新たな」タリバンがもくろむ公的な関係が何であろうが、彼らがそれをもって社会の価値ある支柱を再び破壊する残酷さに疑いを差し挟んではならない。
 米国とその非道な利害に加えて、地域の諸大国もわが国への介入に、長い間利害関係をもって関与してきた。そしてアフガニスタンの占領あるいは支配を強く求めてきた――特に中国、ロシア、パキスタン、さらにイラン――。これらの国の各々がそれら自身の利益のために独自の特定的関心をもっている。その上、英国、ドイツ、トルコ、カタール、フランスのような諸国と他の多くも、それらの政治的、経済的、軍事的利害のために、暗黒の時代に押し戻してアフガニスタンの不安定化に力を貸してきた。
 タリバン政権下での女性の権利は存在せず、そこには拷問、むち打ち、強制結婚、石打、音楽の禁止、基本的ライフスタイルの剥奪、教育と職の剥奪、さらに彼らの女性蔑視と非人道的性格を示すもっと多くの事例が含まれるだろう。ひとつのはっきりした最新の事例は、カブール大学とクンドゥス、ファリャブ、カブールの街頭における黒いヒジャブで頭からつま先まで覆った女性たちだ。そして彼女たちは闇雲に、「民主主義に死を」「首長万歳」のスローガンの下にステージに登場した。
 タリバンは何十人もの女性と少女を残忍に迫害したが、彼らは女性の解放と平等を求める叫びを決して黙らせることはできない。タリバンの道理に反し不愉快極まりないイデオロギーに反対する抗議の広がりは、進歩的で怖れを知らない女性の存在から始まった。これらの信じ難い勇気の表出は、効果ある運動と全国規模の女性運動に向けた希望の源だ。

アフガン女性を忘れるな!

 破局は仕事を奪われた男と女を作り出すことになった。同時にインフレが高騰した。そしてそれらは、極度の貧困に導くだろう。カブール、へラート、バルク―の街頭を見つめれば、われわれが見ることのできるものは、貧困と悲惨の結果として暮らしの器具を売る人々の長い列だけだ。彼らの子どもを育てることができなかったために、いくつかの家族が愛する子どもや彼ら自身の腎臓を売ることさえ迫られたということ、あるいは自死を選ばなければならなかったということをみるのは、胸が張り裂ける思いだ。
 タリバンの継承後銀行は一時閉鎖された。そして人々は今、彼ら自身のマネーに対し限られた権利しかもっていない。俸給がなくなっている中で、多くの前政府被雇用者は、生き延びるための手段を探して困難でへとへとの日々を過ごすか、あるいは非合法な移民の機会を求めて死の危険を犯している。ほとんどの医療ケア労働者は彼らの職を失ってしまうか、彼らの分野外の不安定な仕事に転じた。アフガン通貨の価値は過去20年を通じて空前の低さまで下落した。そして、米国の犯罪的ないじめによる90億ドルの資本凍結が、現在の破局を深刻なものにし、わが抑圧された人民は日々闘争の中にある民衆となっている。
 アフガニスタンを救い出し、この破局状況を取り除く唯一の方法は、進歩勢力、民主勢力、そして世俗勢力の連帯だ、私は繰り返しこう強調してきた。民主主義を基礎に男と女が平等な権利をもつ、そのような独立し、民主的な、そして繁栄するアフガニスタンをわれわれがもちたいのであれば、人民は、原理主義者やあらゆる外国の介入から自由であるために強力な連帯を必要とする。私は20年の間繰り返し、「どのような民族も別の民族に解放を与えることはできない」と言い続けてきた。今私は、どの民族も自らを解放できるだけだ、とあらためて主張する。
 アフガン人は勇気があり断固とした人民だ。そしてわが国のこうした暗い時であってさえ、われわれはわれわれの解放に向け団結し闘う新たな道を見出すだろう。この時に国際的な連帯と支援が決定的だ。米国と他のNATO部隊が本国に去ったというだけで、アフガニスタンの女性を忘れてはならない。われわれは、いつの日にかわが国の真の旗が独立し自由なアフガニスタンの上に翻ることを共に確実にするよう、かつて以上に決意を固めている。(2021年10月11日)

▼筆者は活動家であり著述家でもある。またアフガン議会の元議員。(「インターナショナルビューポイント」2021年10月号)

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