イタリア 移民支援活動への見せしめ攻撃
ミモ・ルカーノに懲役13年の判決
デイヴ・ケラウェイ/反資本主義左翼声明
ミモ・ルカーノはイタリア南部のカラブリア州にある小さな町、リアーチェの市長だ。彼は彼の指導性を移民と難民を彼の町に喜んで迎え入れるために使った。
田舎の南部地域にあるそうした町は、若者たちがもっと大きな町や北部へと動くにつれ過疎になり続けている。若い移民家族は、生気とエネルギーをそうした地域に戻す助けになることができた。現地の人々は移民の何人かと結婚した。しかし司法当局は彼を、偽装の人為的結婚を仕組んだとして起訴した。彼は、新来者支援を助ける団体を設立し、そうするために公的資金を獲得した。
州は、その資金に間違った管理があったとして彼を告発した。彼は個人的な金銭的な利得をまったく得ていないと、彼の告発者が受け入れているにもかかわらずだ。それは、ラツィノ(ローマ地区)のようないくつかのところで起きたこととは正反対だ。そこでは、極右やファシストまで、大きな利益の下にそうした団体を運営し、彼ら自身の目的のために基金を吸い上げたとして告発されていたのだ。それらの団体が提供したサービスは呆れる程に貧弱だった。
自称「中道左翼」のPD(民主党)を含んだ事実上あらゆる政党が移民に対するレイシスト的姿勢を取り入れるか、彼らを十分に支援することができずにきた情勢の中で、歩みを進め、何ごとかを実際に行ったのはミモのような人々なのだ。進歩的なカトリック界ですら、そうした公式の「進歩派諸政党」の方を支持してきた。
ミモの扱いは、ベルルスコーニのような人々に与えられた処罰とは対照的だ。ベルルスコーニは、詐欺、および他の多くの大金銭スキャンダルに関する判決回避で、公式に有罪と確認されたが、しかし1日たりとも刑務所で過ごすことはまったくなかったのだ。
彼にはコミュニティのサービスが与えられ、こうして彼は、数少ない宿泊設備付きケアホームに出かけ、そこで歌を歌ったりすることができた。弁護士軍団を抱えている企業詐欺師たちが、彼らの裁判を何年も長引かせることができ、最終的に彼らの犯罪の報いを決して受けずに済ますことができるイタリアには、似たような事例が文字通り何千とある。
リアーチェは、犯罪集団のドラゲータの本拠地であるカラブリア州にある。そしてこの集団は、そこの政府のあらゆるレベルに浸透し、特にフォルッツア・イタリア(ベルルスコーニ)、フラテリ・イタリア(メローニ)、さらにラ・レガ(サルヴィニ)のような右翼政党に影響力を発揮している。正統な経済と犯罪的な経済の重要な部分を支配していながらこの犯罪集団が相対的に訴追から免れている中で、人権の擁護者と反レイシストに判決を下したことは、どぎつい程の不正義を照らし出している。
イタリアの友人が私に昨日メッセージを伝え、ミモがEU議会選候補者リストにひとつの位置を提供され、彼がそこで勝利すればそのことが彼に免罪を与えることになるだろう、と説明している。彼は、彼の場はカラブリア内にあると語ってその招待を拒絶した。彼は現在、前ナポリ市長のディ・マジストリスが率いるリストに加わり、10月始めに行われる地方選に立候補している(残念ながらこの選挙でミモは当選できなかった:訳者)
ミモは人々を引きつけるだろう。そして彼の未来は、裁判所の気まぐれにだけではなく、彼を支持する全国的な、またおそらく国際的なキャンペーンの強さにもかかるだろう。われわれは、訴えを受け取ればすぐ、彼を支援するためにできることの詳細を公表するつもりだ。左翼紙(唯一の)、イル・マニフェストは彼の事件を特筆中だ。当地の作家何人かは彼に特赦を与えるようマッタレッラ(現大統領:訳者)に訴えている。もちろん、そうした戦術につきまとう問題は、それが何らかの形で犯罪の責任を認めている、ということだ。
最後に、ミモ・ルカーノの事例は、2日前にわれわれが聞いたスターマー(英国の現労働党党首:訳者)の多言すべてと海峡を越えている移民の運命に対する彼の沈黙を、釣り合いの取れた見方へと向けている。彼の多言はまさに規則に従うことに関するものだったのだが、ミモは人道と階級的連帯の規則に従ったのだ。
階級的報復が行われた
シニストラ・アンティカピタリスト(反資本主義左翼)の声明
ミモ・ルカーノに懲役13年の判決を下すという裁判所の決定は、あたかもそれが可能な限り早く目覚めるべき悪夢であるかのように、人をほとんど容易には信じられないような状態に置いている。残念なことに、それは真実であり、階級的正義の実態であり、むしろ、不公正な世界と移民の苦しい体験の不正義に対応してきた立派な個人に対する卑劣な階級的報復だ。ミモは、戦争と悲惨を逃れてきた人びとと仲間の市民のために、連帯、歓待、仕事の未来、そしてまともな暮らしを構築した。
それは、国全体に対する参照点と建設的な経験を破壊するという目的の下に、2、3年前〔ミンニティとサルヴィニが政府の移民担当閣僚であった時期―トゥリグリアット〕(ミンニティはPDの政治家で当時の内相、サルヴィニについては後述参照:訳者)に始まったひとつの作り話だ。それは、政治的目的と利害がはじめからあまりに明確だった、そして今や下級審のこの判決に完全に表現された、恥ずべき作り話だ。
われわれは、今逆さまな世界に生きている。もっとも弱い人々への連帯と支援を行っている者たちが、危険な犯罪者になっている。これが、EUの多くの部分を今貫いて、特に国境に沿って流れているメッセージだ。そしてその国境は、あらゆる資本と製品の流れや金融投機には同等に開かれているが、しかし移民と彼らの生きる権利には敵対しているのだ。
これこそが、今日、力ある者たち、地方と全国的な経済人、さらにあらゆる種類のいかがわしい犯罪者がまさに数多くミモの判決を喜んでいる理由だ。彼らは、彼らの問題のある経済的・政治的利益を固めるためにそれを利用しようと努めている。
それはまた、同盟(レガ、イタリアの極右政党:訳者)の有名な「艦長」であり、移民とリアーチェの元市長の絶対的な敵であるサルヴィニが窮地に置かれた「トラブル」から注意をそらすという、都合のよい時期に現れた判決でもある。しかもそれは、地方選のほんの僅か前に降ってきている。
われわれは、控訴審(本当のところわれわれは、下級審の根拠を知りたいと強く思っている)がまもなくミモ・ルカーノのような価値ある人物に名誉と正義を復させるものと期待している。われわれは、彼に対する全面的な連帯を表明する。そして、彼を支える強力な運動が、そのようなひどく不公正な判決を前にした反乱がつくり出されることを期待する。
そのような運動こそが、この苦いできごとの中で、真正のまた市民の正義を、また人道の全面的な尊重を確認する上で、決定的かつ唯一の方法だ。経営者と政府の暴力的な攻撃と対決して土着の労働者と移民の労働者を闘争させる厳しい階級的衝突においては、同様の決起が国中で必要だ。
なお、現ドラギ政権の一部である同盟の指導者、サルヴィニは、国際法と人権の規範に敵対して移民を満載した船舶のイタリア入港を拒否した際の武器使用事件における、内務相としての彼の行動で裁判にかけられている。(2021年9月30日)
▼デイヴ・ケラウェイは第4インターナショナルと協力関係にある英国のソーシャリスト・レジスタンス支持者。
▼反資本主義左翼は、イタリアにおける第4インターナショナルの1組織。(「インターナショナルビューポイント」2021年10月号)
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