チュニジア大統領がクーデター

「春」ははるかに過ぎ去り
ジョセフ・ダヘル

大統領による
政府・議会否定
 今年7月25日、チュニジア大統領のカイス・サイエドは政府を解任し議会を停止にし、例外的な権力を彼自身のものとした。これらの方策は、2011年の独裁者ベン・アリの打倒を通して獲得した、民主的な枠組みと諸権利に異議を突きつけている。
 9月22日、チュニジア国家最高位者は、政府や議会を無にして彼の権力を強化する緊急条項を公表することで、彼の制度的なクーデターを正式なものにした。そして彼は、先の政府や議会を、事実上訓令による立法で置き換えることになるだろう。サイエド大統領は、これらの決定は一時的な性格のものであり、以下を目的にしている、と言明した。つまり、「人民が、実際に主権の保持者であり、選出された代表者を通じてか、国民投票によって、彼らが行使する権力の源である、そのような本物の民主体制の確立」という目的だ。
 2、3日後彼は、新たな政府を形成するために、首相としてナジラ・ボウデンを指名した。彼女はこの国の歴史上その地位に達した初めての女性であるが、しかし彼は、彼女の大権をかなりの程度切り縮めた。

民主的枠組み
は危機に直面
 しかし彼の制度的クーデター以後サイエドは、彼による反腐敗十字軍の一部として、何十件という恣意的な逮捕、自宅軟禁、移動禁止、を重ねてきた。しかしこれも、大統領が雇用主団体のUTICAとの緊密な関係を維持することを妨げるものとはならなかった。しかも当の団体は、多くの活動家にとっては、腐敗の主な根源のひとつなのだ。
 9月半ば、チュニジア労働総同盟(UGTT)書記長のヌレッディヌ・タボウビが、初めて大統領に警告を発し、「あなたが文民国家と民主国家という道から外れようと試みるならば、その時は闘争で経験を積みその準備のある労働組合が登場する」と語った。労組活動家もまた、「権力奪取」を糾弾した。

緊縮続行の中
生活改善皆無
 サイエドの権威主義的クーデターは当初、かなり重要な民衆的支持を受けた。新型コロナ感染の爆発を背景にした、社会的不平等の高まり、貧困、失業、支配階級の無視、を前に広範な民衆諸層が貯め込んだ鬱屈が理由だ。2万4500人近い死者を抱えるチュニジアは、アラブとアフリカ地域では人口当たり死者数で最高を記録した。この国はまた、NGOのFTDESが公表した最新統計によれば、今年最初の6ヵ月間で7773件の社会的抗議行動も記録した。比較のために前年の同じ期間の数字を挙げれば4566件だった。
 さまざまな政府連合を通じて10年間権力の座にあったイスラム原理主義運動のアンナハダは特に、チュニジア大統領の方策を支持して街頭に繰り出した抗議活動参加者の標的となった。アンナハダは、新自由主義の諸政策、私有化、緊縮の諸方策、民衆諸階層の一層の貧困化を力づけてきたのだ。
 次々と交代したチュニジア政府は、外国の債権者に一層の債務を重ねることになった。その対外債務は、2020年には公的債務のおよそ3分の2を占めた、そしてそれは、債務の利払い、持続可能性、公的財源に関する多くの疑問を高めた。その中で最後のものは、もっと生産的な目的や社会的保護システムに向けられるというよりも、債務返済に向きを変えられるだろう。同様に、民主的課題に関する運動の記録は、社会運動に対するかなりの締め付けとジェンダー平等への反対を伴って、肯定的とはほど遠い。

オルタナティブ
が語られるが…
 この国の社会・経済的危機と政治的危機において、2011年以来権力の座にあったアンナハダと他の諸政党の責任は明確だ。そうは言っても、サイエドはいかなる意味でも進歩的なオルタナティブではなく、それとはまったく逆だ。たとえばチュニジア労働者党書記長のハムマ・ハムマミは次のように語った。つまり「サイエドと政党間の戦争は、チュニジアの経済問題に対する異なった路線をめぐる戦争ではなく、権力をめぐる戦争だ」と。
 サイエドは同じく深く保守的であり、相続に関する男と女の平等、同性愛の脱犯罪視、また死刑の廃止に反対している。最後に彼の行動は、民衆諸階級の民主的権利防衛という点で1歩後退となっている。
 われわれは、チュニジアの民衆諸階級にとって耐え難くなっている現状維持への回帰を阻止するために、権力の座にあるアンナハダと他の諸政党に立ち向かう進歩的で民主的なオルタナティブを支えつつ、サイエド大統領の権威主義的動きに反対しなければならない。

▼筆者はスイス系シリア人で研究者、活動家でいくつかの著作がある。ブログの「シリア・フリーダム・フォーエヴァー」創設者であるとともに、中東アフリカ社会主義者連合の共同創立者。(「インターナショナルビューポイント」2021年10月号)

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