米国 生態系を破壊するパイプラインの撤去へ

多国籍資本から主権と生態系守る
抑圧を突破し先住民が闘いを先導
ダイアン・フィーリー/レベッカ・ケンベル

 新自由主義グローバリゼーションに反撃する闘いで、世界各地の先住民が重要な役割を果たしている。特に環境をめぐる闘いでの役割は顕著であり、COP26に際してもグラスゴーには各地の代表が結集、先住民を無視するなと声を上げた。そのような闘いのひとつが、米国における石油パイプラインへの粘り強い反対運動だ。以下がその闘いの現状を伝えている。(「かけはし」編集部)


 レベッカ・ケンベルは共同体活動家であり、ウィスコンシン州マディソン市民会議の元メンバーだ。彼女はこの夏、アニシナーベ領域保全活動家と新規のエンブリッジパイプライン3号線建設反対の盟友による封鎖行動に参加した。上記3号線は彼らの領域を切り裂き、条約上の諸権利を脅かしている。その時以来エンブリッジは、建設は完了し、タールサンドオイル(非在来型原油資源:訳者)を輸送中、と公表している。先住民の抗議参加者が今なお告発を前にしている中で、エンブリッジは警備のため警察に240万ドルも支払った、ということが曝露された。しかしながら抗議に決起した人々は彼らの反対を終わらせるつもりはない。ダイアン・フィーリーが「アゲンスト・ザ・カレント」誌(ATC)として彼女にインタビューした。

あらゆる手段使い3号線と闘う


――遠い地であるように見えるミネソタ北部で古い3号線を置き換えるエンブリッジの計画に反対する闘争についてお話しを。

 3号線はアニシナーベ領域の真ん中を走る。彼らにとってそれは世界の真ん中なのだ。
 カナダの多国籍タールサンド企業であるエンブリッジは現在、ミネソタ北部、ウィスコンシン北部、さらにミシガン北部を、タールサンドをアルバータ州(カナダ)北部からアニシナーベ領域を通過してパイプラインで運ぶための犠牲地帯として利用している。その輸送は、その後カナダに戻り、輸出のために東海岸へと出る。
 その原油は、米国市場に向かうことはまったくなく、それゆえ、エネルギー自立に関するバイデン、オバマ、トランプの主張は、エンブリッジの問題では間違っている。それは、これから起きようと待機中のすさまじい惨事にすぎない。
 そして惨害は四六時中起きている。20日毎にパイプライン漏れがある。そしてミシガン人としてダイアン、あなたは、2010年のカラマズー川上での、エンブリッジ6B線パイプラインタールサンド漏れを十分に知っているはずだ。
 タールサンドは瀝青が含まれているため粘着性が高い。だからオイルは水路の底に沈むだけであり、あらゆるものを殺す。エンブリッジは清掃に13億ドル以上をつぎ込んだ。しかし彼らが川を干し上げない限り、川が完全に復旧される可能性はないのだ。
 エンブリッジは3号線では去年冬に建設を始め、無理なスピードで仕上げにかかろうとしている。この路線の能力は84万4千バレル/日。彼らは11月までにオイルを流そうと躍起だ。
 連邦と州のどちらからも、包括的な環境影響評価はまったくなかった。それでも、川との交叉は22ヵ所、水路との交叉は200ヵ所以上あるのだ。
 河川地下の掘削だけでも掘削施工液の漏れが28件あった。そしてその成分は企業秘密であり、そこに何があるのかわれわれにはまったく分かっていない。
 3号線反対派はこれを止めるためにいくつかの異なったツールを使ってきた。つまり、環境影響報告の要求、法的な異議申立、抗議の直接行動、そしてエンブリッジ資金源への圧力行使だ。
 エンブリッジはこの仕事を完了させようと、週休なしで昼夜別なく交代で働くチームを何十と抱えている。彼らは、ミネソタで最大の建設プロジェクトとなっているこの作業に4千人を雇用してきた、と主張している。
 彼らは積み重なっている民事訴訟を打ち負かし、河川管理局事務局長補代理のハイメ・ピンクハムが環境影響評価報告を命令するのを妨げたがっている。たとえば陸軍工兵隊(土木工事に関する技術的任務を負っている:訳者)は今年早く、5号線に対し報告を命じていたのだ。
 われわれはものごとを遅らせるに十分な圧力を築き上げたい。これらのパイプラインにオイルがまったくないのであれば、計画は完成していないのだ。
 いくつかの法的な異議申立がある。特に、レッド・レイク・ネーション、オジブウェのホワイト・アース集団、オジブウェのミレ・ラクス集団からだ。もうひとつの重要な法的戦線がオジブウェのホワイト・アース集団によって始められ、1855年の条約上の権利下では、ミネソタ州にマノーミン(野生の米)と淡水資源を保護する法的義務がある、と強調している。
 彼らはこの条約を基礎に、3号線を不適切に認可しているミネソタ州自然資源局(DNR)に反対する部族法廷における訴訟を始めた。ミネソタ州DNRは連邦裁判所で裁判管轄権に異議を出したが、9月3日、判事のウィルヘルミナ・ライトは予備命令を求める彼らの動きを否認し、「裁判管轄権の主題の欠落として」この件を退けた。
 この先例となる事例には、彼らが彼らの主権、国土、水利権を守ろうとする中で、先住諸ネーションを強力な足場に置く潜在力がある。
 いくつもの創造的な直接行動や抗議行動が現れている。そこには、活動家がパイプの断片内に自分を固着する行動、樹木への座り込み、掘削機の妨害、さらに建設を止める他の方法が含まれている。
 このパイプラインの建設が膨大な資金の手当てを必要とする以上、銀行や金融機関に圧力をかけることが決定的だ。人々は、この企業の満期を迎えた借り入れ、3月末に期限が来た借り換えを繰り返す便宜的信用供与の30億ドル、に再融資しないよう、銀行に圧力をかけるために懸命に努めてきた。
 70億ドル以上に当たるさらに3件の便宜的信用供与は7月中に期限が来た。しかし見たところ、これらの借り入れもすべて更新された。チェイス、シティグループ、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン、ウェルス・ファーゴを含む20行以上が関与した。
 この大急ぎすべてには、彼らが今行っていることが気候の破局を促進しているがゆえに極悪非道な側面がある。3号線は、石炭燃焼発電所50基分に相当する排出をつくり出すだろう。それは正気の沙汰ではなく、全面的にそうだ。

生き残り求めやつらを止める


 キーストンXL(KXL)パイプラインはバイデン政権によって拒絶された。バイデンは、そうしたことでまさに自身を誇っている。しかし彼は、3号線に関しては何も行おうとしていない。KXLはニューオーリンズに向かうことになっていた。一方3号線はカナダ東岸に向かっているが、それも同じタールサンドなのだ。
 そしてこれは、われわれが全化石燃料の生産、採掘、さらに輸送の停止を、また早急な再生可能エネルギーへの移行を、非常に、非常に深刻に考え続ける必要がある時代のことなのだ。それゆえそれこそが、人々が3号線建設に反対して真剣に闘い続けてきた理由だ。
 3号線の終点はスペリオル湖だが、そこはさまざまなパイプラインが始まるところでもある。61号線はウィスコンシン州を縦断してイリノイ州へ、そしてそこからニューオーリンズへと下る。5号線と6B号線もまたスペリオル湖で始まる。
 しかし「双子」のパイプラインもある。オイルを運ぶ1本毎に、反対方向の1本がアルバータまで希釈剤を運ぶからだ。タールサンド・オイルは、希釈剤が加えられなければパイプライン内を動くことができない程粘着性が高いのだ。したがって、タールサンドを処理する目的でその屑を上流に送り、その後オイルを下流に流す1組のパイプラインが必要になる。
 私は、タールサンドを地中から取り出しそれを動かすために必要なエネルギーと金銭の総量を誰かが計算し終えているのかどうか、を知らない。私は賭けてもいいが、それは彼らがオイルそれ自身と引き換えに彼らが得る価格よりも相当に大きくなる。この操業が機能する唯一の方法は、カナダと米国双方からの巨額な補助金を通すことによるものだ。
 そうであればわれわれは、地球を傷つける抽出を行う多国籍企業に補助金を与えるためにわれわれの税金を使い続けることになる。そうしたことすべてによって彼らは利益を上げることができるのだ! われわれにはタールサンド・オイルは不要だ。

――私は、活動家たちがエンブリッジの5号線への反対を同時に3号線取り止めと組にしていることに気がついているが。

 エンブリッジの3号線が初めて建設されたのは1960年代だったが、それは能力一杯で操業できなくなる程腐食している。5号線はもっと早い1953年に建設された。このパイプラインは時代遅れであり、漏れが続き、その周辺の土地はむしばまれ続けている。
 5号線はこれまでに、環境に100万ガロン以上の有毒なオイルを放出した、29回の漏れを起こしたことがある。それでもこの漏れのほとんどは、エンブリッジの探知システムでは発見されなかった。5号線は、まさにバッド川保留地を貫きミシガン半島まで、ウィスコンシン北部を横切っている。それは、ミシガン湖とヒューロン湖の間のマッキナク海峡の下を5マイルの距離を走り、オンタリオのサーニアにある精油所に達している。5号線はこれらの水路を横切る中で、水底に沿って完全に保護されないまま走っている2本のパイプラインに分かれる。マッキナク海峡では流れが強く、常に変動し、それゆえどのような漏れも破局的になるだろう。
 それはそれほどに超危険で時代遅れのパイプラインであり、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィトマーがエンブリッジに2021年5月までにこのパイプラインを退役させるよう命じた程だ。エンブリッジは、ひとつの命令を得てオイルを流し続けるために連邦裁判所に向かった。
 この企業は前知事〔フリントの水道を汚染させたリック・スナイダー:ATC誌編集者〕との取引に署名していた。それは、海峡の底部岩盤下のトンネルに収める新たなパイプラインで5号線を置き換える、との取引だ。
 しかしながら、10年の工期となると思われるものを始める前にいくつかの許可を必要としている。重要なこととして、昨年夏陸軍工兵隊は環境影響評価報告を命じた。

最後まで法無視のエンブリッジ

 2013年、ウィスコンシン北部のチッペワ・インディアンのスペリオル湖部族に属するバッド・リヴァー集団は、彼らの保留地を貫く5号線の地役権に関するエンブリッジの貸借権を更新しなかった。
 気候変動、さらに強度を増す嵐、そして彼らの土地の増大する浸食を見て、バッド・リヴァー集団はエンブリッジと交渉しようと努めた。しかしそれがダメになった時彼らは法的行動をとった。
 しかしエンブリッジがどう知られていようが、それは一貫して法を無視して行動し続けている。彼らは、彼らが今行っていることを続けるだけなのだ。彼らは、法廷の代理人に代金を払うドルを何十億ともっている。そして今後も闘いを続けるだけだろう。
 今になってエンブリッジは、保留地の周りを通る5号線の新たなルートを提案した。しかし漏れはそれでも、その流域、その湿地、そして野生の米を汚染すると思われる。もっとも重要なことだが、スペリオル湖岸の野生米苗床の43%はまさにバッド川の河口にあるのだ。
 それらの野生米苗床はそこで暮らす人々の文化的基礎だ。それは彼らの精神的食物であり、彼らの物質的食物なのだ。それは本当に彼らの暮らし方と文化の中心だ。そしてそれが脅かされるならば、彼らはそれを集団虐殺とみなす。
 ウィスコンシン州DNRは現在環境影響評価を実施中だ。おそらく何ごとかが起きるまでには1年かそこらかかる。とはいえわれわれは、エンブリッジがバッド・リヴァー部族会議での票をいくつかひっくり返そうと工作中、と聞いている。それが、彼らが保留地を貫く後継のパイプラインを設置する可能性が生まれる方法なのだ。そしてそのパイプラインは、41マイルになる新ルートよりもはるかに短くなると思われる。
 エンブリッジは汚く、たちの悪い多国籍石油企業であり、アニシナーベ領域を貫くそのやり方で今もいじめつつ、あらゆる種類の大混乱を生み出している。

――エンブリッジが改良中の3号線と5号線両者はそれほど旧式なのか?

 そうだ。3号線は旧式のパイプラインだ。それは改良中というだけではなく新たな回廊に沿って建設されてもいる。それらは同じルートに沿ってはいず、その潜在能力ははるかに大きい――75万バレル/日――。
 複数のポンプ場がウィスコンシン州内で120万バレル/日を扱うことができるまで拡張された。それらがパイプに接続されるや否や、それらはポンプ場の性能を引き上げ、能力を高め、オイルを押し流すことが可能になる。

――エンブリッジはもちろん「安全第一」にすると主張している。彼らは、5号線は全期間を通じていかに安全だったか、について自慢している。そして新3号線をトンネル内に収めることに同意した。彼らは、代案――鉄道によって船積みする――はもっと危険だ、と言う。こうした議論への反論は?

 もっとも安全な代案はそれを完全に終わりにし、タールサンドも終わりにすることだ。われわれは一定数の異なった理由から――輸送の安全だけではなく気候のためにも――そうする必要がある。
 われわれは、これまでに記録された最も暑い夏として、地獄のような夏を経験した。ある者たちにとって、それは山火事や嵐を伴った連続した4年目になっている。われわれはオイルを地中に留める必要があるのだ。3号線と5号線を安全に保つ方法は、他のパイプラインすべてともろともにそれらを退役させることだ。
 われわれにタールサンドは不要だ。エンブリッジは地球上で最も裕福な企業のひとつだ。彼らは解決の一部になることができるだろうが、しかし彼らはそうではない、まったくそうではなく、問題を悪化させ続けている。

警察は「平和」を言明するが

――そのパイプライン建設でエンブリッジを助ける点でノーザン・ライツ・タスクフォース(諸々の郡の上級法執行官から構成、ダコタ・パイプライン阻止運動での不測の事態をさまざまな方法で回避する、として設立:訳者)が今果たしている役割について教えて下さい。

 抗議の人々を弾圧するために、司法権を持つ400人以上の法執行官がいたスタンディングロック(ダコタ・アクセス・パイプライン、DAPL)抗議行動を受けて、彼らは、パイプライン抗議行動を予測して、多くの機関、多くの州を特別部隊に結集させると決定した。
 ウィスコンシン州デーン郡選出の、私の地区の保安官であるデーヴィッド・マホーニーは、この計画を企画したひとりだった。先住民の権利を支持してわれわれの市議会が満場一致で採択した決議文を届けるために私がスタンディングロックに出かけた時、私は逮捕された。
 私は、逮捕されようとしている中でデーン郡の副官を見ている。われわれの郡保安官が郡執行部にも伝えることなくそこに13人の警官を派遣したことが判明している。われわれのコミュニティではそれを誰も知らない。
 私は家に戻るとすぐ保安官に会い、それについて彼を問い質した。私がデーン郡副官の参加についてそのような物議を起こしたために、またわれわれのコミュニティの他の人々がそのような物議を起こしたために、彼はその週末に彼の副官を引き上げるよう強いられた。
 彼は彼との面談の中で、彼がスタンディングロックまで出かけていたことを認めた。春にセイクレッド・ストーン・キャンプが始まってすぐ、彼は、大衆的な抗議にどう対応すべきかについて地方保安官事務所と相談を始めた。
 当時マホーニーは全国保安官協会の副代表だった。彼は続いて代表になり、トランプにも会った。彼は私に、スタンディングロックでの彼らの作戦は、本当のところ彼らが予想していた今後の他のパイプライン闘争向けに行われた練習だった、と告げた。
 エンブリッジは彼らのパイプラインへの反対を十分に自覚していた。そして、地下パイプラインに対する彼らの申請を2016年に撤回することも強いられていた。それは、ノースダコタからミネソタを通過してウィスコンシンのスペリオル湖で終点となる、600マイル以上になると思われたものだった。
 サンドパイパーパイプラインはシェールオイルを輸送するためであり、ミシシッピーを含んで28本の河川と交叉することになっただろう。彼らはその戦いに敗北し、その地域の保安官部局で構成される、そして国土安全保障省合同センターと結びついたある種の傭兵を抱えることに躍起となった。これらは全土に存在し、さまざまな司法権機関の法執行官のためのセンターとして機能を果たしている。
 それらの合同センターが、公的な法執行官のためばかりではなく、エンブリッジと契約した警備保障企業のタイガースワンのためにも、ある種の本部として利用された。なお上記企業は以前、DAPL闘争の中でエネルギー・トランスファーによって使用された。それらが共有した情報は水の保全活動家に関する監視情報だった〔タイガースワンは、3号線に関しエンブリッジのために活動しているとは、まだ特定されていない〕。
 ミネソタ州が3号線建設を認可した時、彼らは、法執行の費用を弁済するためにエンブリッジがカネを供託する権限を与えた。そこには、財産を守るために公的な法執行業務の費用を払っているエンブリッジとの直接の関係がある。これは新種のものだ。
 保安官たちは「われわれは平和を保つためにここにいる」と言うだろうが、本当だろうか? それでも、ミシシッピー源流部の地下掘削の終わり間際には何人かの、実に暴力的な逮捕があったのだ。
 AKA・バッド―ass婆さんとして知られるジル・ファーガソンは、多数の「苦痛制御」テクニックを使った警官によって逮捕された際、頭や肩や首に負傷した。他の者たちは、催涙弾やゴム弾を浴びせられた。

公職者が私企業に貸し出される


 そこには何十人もの警官が、水の保全活動家をパイプラインという財産から遠ざけるためにいた。だからここにわれわれは、ひとつの多国籍企業による賃貸しに出された、われわれの納税者が資金を出している法執行機関、を抱えているのだ。
 その取引は、ミネソタ州と知事のティム・ウォルツによって促進された。そしてその知事は、今確保している職のために選挙運動していた時は、条約領域を通過するどんなパイプラインも成功の見込みはない、と言っていたのだ。
 彼は副知事候補者として、オジブウェのホワイト・アース集団の一員であるペギー・フランガンを選んだ。彼はその選挙に勝つために先住民票を引き出したのだが、結局彼らを完全に無視した。彼は、水の保全活動家とは誰であれ話そうともしなかった。
 ミシシッピー源流部地下をエンブリッジが掘削する中で5件の吹き出しが起きた時に暴力的な逮捕が始まった。水の保全活動家はその時点で、州議会議事堂までの256マイルを歩き、今何が起きているかを広める、と決めた。
 彼らはセントポールまで2週間以上歩いたが、彼らの到着前、ウォルツは議事堂周辺の道路を封鎖し、コンクリートの障害物や高いフェンスでその建物を囲った。それは、彼がどれほど聞こうとしていないか、を示していた。
 議事堂を防護してノーザン・ライツ・タスクフォースの警官が200人以上いた。これらの行進参加者たちがそれほどにひとつの脅威を見られているからだ。ウォルツ知事には回答すべきことが多くある。
 現在までに逮捕者は800人を超え、スタンディングロックでの逮捕者数を上回っている。3号線建設はほとんど完成し、「決定者」は誰一人聞こうとはしていない。この国はあらためて先住民の領土を、利益漁りのための犠牲地帯として利用し続けている。

――エンブリッジは、ノーザン・ライツ・タスクフォースにこれまでどれほどのマネーをつぎ込んだのか?

 カナダのナショナル・オブザーバー(日刊のオンライン情報出版物でバンクーバー・オブザーバー紙系列:訳者)によれば、エンブリッジは今年4月現在で供託口座に125万ドル払い込んだ。かれらはそれを、時間外手当費用として、また新たな些末品やドローンを含む新たな武器や監視装備を購入するために使用している。
 人々が逮捕されたある時には、彼らはかごの中に拘留された。エンブリッジの遺産は、ミネソタの田舎における法執行機関の一層の軍事化ともなるだろう。
 この領域がどれほどの犠牲地帯になっているかに関するもうひとつの側面は、「男だけの飯場」と行方不明になったり殺されたりした先住民女性に関するスキャンダルだ。今年夏早く、性売買に関わったエンブリッジの労働者の逮捕が数件あった。
 実際にこれは、これらの建設飯場が設けられる際に展開する典型パターンだ。それは、人民、土地、水の大量搾取における、もうひとつの側面にもなるのだ。

先住民軸に連帯全土に拡大


――あなたはスタンディングロックにもいた。ふたつの決起を比較できるだろうか? 3号線をめぐる闘いを伝えたDAPLの闘争から、活動家たちは何を学んだのか?

 違いのひとつは、DAPLの闘いがミズーリ川での1河川との交叉に焦点を絞っていた、ということだ。3号線の闘いは、ミネソタ州北部と同中央北部を貫いて広められている。
 少なくとも5つの自律的なテント村があるが、もちろん彼らは互いに話し合っている。領域毎のテント村、文化のテント村、直接行動のテント村がある。各々には果たすべき役割があるが、それらはすべて水や土地や野生米、そして領域の保全で団結している。
 これは1ヵ所に1万人というようなことを意味しているわけではない。その代わりに、その領域中には、エンブリッジを監視し、直接行動を始めている、数え切れない数の人びとがいる。これが、普通の人々がどこにでもいる可能性があるために、警察にとって少しばかり難しくしている。
 スタンディングロックでわれわれが学んだ教訓のひとつは、計画を承認する上での陸軍工兵隊の役割、およびそれらに資金を出す銀行の役割だった。3号線の活動家は、現場に出かけることからこれらふたつの戦線で協調する行動に方向をとった。
 3号線に関する特別支部を備えた「ストップ・マネー・パイプライン」が、ウォールストリートの化石燃料資金供与に特化した情報があるところだ。
 スタンディングロックで起きたことは、それがタートルアイランドからだけではなく世界すべてからの先住民の集まりだったために、歴史的に前例のないものだった。そこで同類的関係と連帯の関係が形成された。スタンディングロックでは、彼ら自身の領域で自身の闘いを始めるために他の人々に向け種をまく点で、まさに多くのことが起きた。
 3号線の場合、連帯関係はすでに存在している。私がミネソタ北部にいたある3日間の時、われわれはウィスコンシン州のスペリオル湖からノースダコタまで、東から西へ歩き通した水辺の徒歩旅行者たちと会った。同時に、スタンディングロックとチェイニー川保留地からスペリオル湖まで走る若者もいた。ある1点で徒歩旅行者はその走者に出会ったのだが、彼らは互いの計画を知らなかったのだからその出会いは喜びの出会いだった。
 同じ週末、ルミニ・ネーションからの彫刻師が彼らのトーテムポールを運び込み、彼らが国越えの旅を行ったとして式典を行った。われわれはその晩宴会を開催した。その彫刻師が言うように、神聖さはトーテムポールにではなく集まりにあるのだ。
 パイプラインをめぐってはそれほど多くの先住民の連帯と自覚がある。今は聖なる土地の現場であるサッカー・パスで提案されているリチウム鉱山に抗議中の、ネヴァダ北方のテント村の人々ともつながった。インディアン国は、特に条約上の権利、土地、そして水を求めるこれらの闘いをめぐって結びついている。

――これらのパイプラインに関わっている労働者の誰かと関係を築くことは可能だったのか? あなたは男だけの飯場について話したが。

 直接行動が起きる時、時に労働者と話す機会がある。その時人々は「未来を築くために、未来の新たなグリーン経済を築くために働きたいとは思わないか? 新しい経済の中にはあなたのための仕事がある。あなたは全地球にとっての死であるこの仕掛けを作る必要はないのだ。あなたはあなたのスキルを別のやり方で使える」と問いかけている。
 これらが起きている会話の類だ。同じことが警察との間にもある。逮捕が起きている中で水の保全活動家は「あなたが保護と奉仕の宣誓を行った時、あなたが対象とする人々に害を与える計画を守るために、外国の多国籍企業にあなたが貸し出される、などということを考えたのか?」と言っている。

先住民主権について再確認必要

――あなたは、マディソン市議会で3号線閉鎖を支持する決議案採択を助けた。この決議採択後に予想されるものとしては何があり得るだろうか? それは、マディソン住民にどんな影響を及ぼす可能性があるだろうか?

 私は、いくつかの理由から清潔な水と条約上の権利を支持して決議案を起草する助けをするよう依頼された。   
 第1の目的は、まさに自覚を高めることであり、第2は、ここデーン郡のわれわれの裏庭を切り裂いて走る3号線、5号線、61号線の結びつきを指摘することだった。われわれには、化石燃料パイプラインとそれらが清潔な水に対して提起する脅威について自覚を高める必要がある。
 第3にわれわれには、条約上の諸権利について学ぶ必要がある。ウィスコンシン、ミネソタ、そしてミシガンの北方には米国と部族自治独立体間の条約がいくつかある。これらは、彼らの先祖たちが入植者に所有権を売り払ったことと引き換えに、狩猟や漁業や集会や彼らのライフスタイルを維持するために土地を使う権利をとってある。
 これらは、政府がインディアン国に仕掛け続けていた軍事作戦に対するコストがもっと小さい代案として、米政府が主導した和平条約だった。
 連邦政府は、土地を征服しそれを取り上げようともくろんでいた。条約に署名した諸々のネーションは、暮らし、彼らの生活のやり方を維持する権利を確保してそうした。
 米国憲法の第6条は、これらの条約は土地に関する最高法、と述べている。それゆえわれわれの決議は、われわれの州にもカナダにもそうした条約が存在している、との意識を呼び覚ましていた。それらは尊重される必要があるのだ。
 この決議は全体会を満場一致で通過し、市長は保証人として署名した。そしてデーン郡も同類の決議を採択した。その決議はウィスコンシン州DNRに5号線を退役させるよう求めている。
 われわれはさらに、われわれの警察署長に3号線と5号線のためのあらゆる法執行請求を拒否するよう命じた。われわれの新署長はそれに抵抗し、「よかろうが私はそうするつもりはない。君たちはただ私を信頼すべきだ」と言った。
 われわれは次のように返答した。すなわち「でもノーだ。これは公式の文書であり、われわれのコミュニティに、市議会と市長には実際に警察を上回る権威があると述べている公式声明だ。われわれはあなたに参加しないよう命じている。あなたがそうしたくないかどうかに関わりなく、あなた自身は問題でない。この文書は、この市の被選出者が警察署長は参加しないようにと命じている、と言っているのだ」と。
 今年夏のはじめ、ミネアポリスがこうした決議を採択した最初の市となった。うまくいけば、他の自治体もこのような決議を採択するだろう。

 私には、先住民衆の彼らの主権に関する主張が、地球を破壊中の資本主義経済に対する対抗力であるように見える。彼らの闘いは彼らの大義のための闘争であるだけではなく、人類の未来のための闘争でもある。(ATCより)

▼ダイアン・フィーリーは、退職自動車労働者活動家であり、自動車労働者キャラバンと下部組合員コーカスに参加している。ATC編集者でもある。(「インターナショナルビューポイント」2021年11月号) 

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