スイス 健康が個人的選択にされる時
連帯にもとづく公衆衛生を
GAARA
全国的なワクチン接種運動と平行して公衆衛生諸方策が徐々に緩和されたことを受けて、連邦議会は9月13日にコヴィッド証明書を発効させた。ワクチン接種終了か最新の検査陰性を証明するこの証明書は、今やレジャー活動利用のために、しかし雇用主が必要と考えた場合訓練や仕事のためにも、義務的となっている。
この証明書に反対して、いくつかの声が上げられ始めている。ローザンヌでは9月22日にひとつのデモが行われた。それは、学生のグループをはじめとして、多少とも制度化された極右グループ――特にUDC(スイス人民党)の強硬派からの若い人々――や反ワクチン活動家から活動家を、しかしまた一定の禁止令に批判的な個人をも結集した。
伝統的な学生団体、労働組合、あるいは多数派の政党の不在に注意しよう。それは、これらの組織がひとつの立場を決めなかったかコヴィッド証明書を歓迎したかのどちらかであったことに応じていた。ジュネーブでは10月1日、今回はオルタナティブ文化環境の関係者が主導して1日行動が組織された。彼らは全般化されたデジタル監視の危険性を指摘し、極右に反対する確固とした立場を擁護した。
こうした流れの中で必要なことは、必然的に問題の証明書に好意的なワクチン接種を受けた者たちと、無責任な、あるいは情報不足な,または陰謀論に傾いている人びとの間の不毛な類型化を避けることだ。連帯を基礎に置いた集団的な公衆衛生という観点において、左翼運動が彼らの立場を聞き取らせることが重要だ。そしてそれはこれまでのところ、大衆的な論争からは恐ろしい程に欠けてきたのだ。
連邦議会によれば、パンデミックを打ち破るために必要とされていることのすべては、ワクチン接種を受けると個人が決断すべきことになっている。しかしながら、パンデミックと闘う最良の短期的方策が依然ワクチン接種となっている中で、それは全員に利用可能なものにはなっていないのだ。
これは特に、医療ケアの利用が早くから貧弱である人々、あるいは経済的制約がセンターに行くための時間を解放することを困難にしている人々にとって真実だ。コヴィッド証明書の導入によって、これらの人々は、疾病の深刻な形態にかかる危険を犯すことで、またレジャー、社会化、また訓練の場から排除されることで、二重の罰を受けている。
われわれの考えでは、スイスに暮らすさまざまな住民の特性と必要を考慮して有効なワクチン接種戦略を実行するのは、個人の責任ではなく連邦の責任だ。しかしまたその責任には、この危機と今後やって来る危機を前に、公的病院という手段を強化することによる対処も加わる。
その上に、グローバルサウス諸国が生産されたワクチンの2%以下の利用権しか確保していない中で、特許の凍結は今なおまったくないのだ。世界の4分の3がワクチン剤を奪われているのであれば、ウイルスの広がりの停止は想像することも困難だ。
コヴィッド証明書は、集団的福利としてではなく、個人と国家の利益の源泉としての、公衆衛生に関するひとつの観念を体現している。そのようなやり方では、全員にとっての公衆衛生危機の終わりをみることは、依然不可能なまま残るだろう。(2021年10月10日、ソリダリテSより)(「インターナショナルビューポイント」2021年11月号)
The KAKEHASHI
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