米国 「ストライキトーバー」論争
本当に必要なことは?
ダン・ラボッツ
10月と11月を通じて、メディア特に左翼が、彼らが「ストライキの波」と呼んだものを伝え続けてきた。それは現にあるものなのか?
さまざまな場で
ストライキ闘争
米国には今日、ムラのある経済回復がある。雇用は改善中であり、理論的には労働者に大きなテコを与えている。尋常ではない440万人の労働者が、「大規模退職」と呼ばれるものの中で9月に彼らの仕事を辞めた。雇用主たちは、職の場を埋めるという問題を抱え、それゆえ彼らは賃金を上げ続けている。それでも諸労組は、私有部門で6・3%を代表するにすぎなず、その中で労働者全体の10・8%しか労組に組織化されていない。
こうした脈絡の中で、いくつかのストライキが起きてきた。アラバマでは約千人人の鉱山労働者が7カ月前ストライキを決行し、彼らは今もそうしている。パン焼き労働者の組合はいくつかの州で、一千人のナビスコ労働者をひとつの抗争に導いた。その契約は現在解決されている。同じ労組はまたケロッグの1400人のシリアル労働者もストライキに、今や数週間続いているストライキに入れた。トラクターを製造しているジョン・ディアでは、UAW(全米自動車労組)の1万人の労働者が、仕事を放棄しストライキを続けている(11月17日に暫定合意を受け入れ終結:訳者)。しかしまた10月と11月には、劇場と映画労働者の組合であるIATSEの6万5千人の組合員とカイザー・パーマネンテ病院の3万人の労働者が、ストライキに訴えることなく契約を新たにした。
分散的で小規模
まだ波ではない
ガーディアン紙は、それが「ストライキトーバー」(ストライキと10月を合成した造語:訳者)と名付けているものの中で、「労働者の戦闘性とストライキの驚くべき爆発」について書いた。革命的社会主義誌のテンペストの記者であるジョー・アレンは、「ストライキの波」について書いた。しかし社会民主主義誌「ディセント」でネルソン・リヒテンシュタインは、「われわれはそれを痛切に必要としている」ものの、「これはストライキの波ではない」と言明した。
事実、同じ職種の11万人の労働者内部に広がった本物のストライキの波であった2018年―同19年の教員ストライキとは異なり、近頃のストライキは数で小さく、さまざまな産業と労組間に分散している。われわれは一定数のストライキを見てきたが、しかしそれは波ではない。
真に重大な闘争
はまだこれから
われわれ社会主義者がストライキに焦点を当てるのはなぜか? 第1に多くの場合、提案された契約あるいはストライキに関する投票が、労働者が組合生活に参加する最初の、おそらくは唯一の機会だからだ。多くの労働者は、彼らの支部や全国の役員を選出する投票は行っていず、それゆえ、契約やストライキの投票が労組におけるただひとつの民主的な経験である可能性が高い。
第2に、労組役員が契約交渉を行い、組合員の前にストライキ投票を提起する中で、もし組合員がストライキに票を入れるならば、そこで労組内でのある種の移行が起き始めるかもしれない。ストライキの組織化――工場へのピケット要員の派遣、ピケット輪番の設定、ストライキ集会の組織化、他の労組やコミュニティグループへの代表団派遣――が、労働者を行動に引き入れ始め、彼らに決定を行う、そしておそらく初めて自らを労組として理解する、ひとつの機会を与える。
第3に、いったんストライキが始まれば、ピケットラインで職制やスト破りとぶつかりトラックを阻止するピケットをもって、経営者と労働者間の実体的対立としてのストライキの性格が、くっきりする。労働者は、彼らが自分の賃金を犠牲にしている一方、遠くの株主や企業役員、また工場管理者が彼らの俸給や配当を受け取り続けているのを知るのだ。共に犠牲になり、共にピケットラインを歩き、そして経営者に対し共に闘っている労働者は、連帯感を発展させる。
最後に労働者は、経営者との対立の中に自らを見つけ、しばしば警察を前にし、ビッグビジネスと政治両者に関し批判的に考えることをより拒まなくなる。それが起きる時、労働運動内の社会主義活動家は戦略的な考えを提供でき、資本主義に対する社会主義的な批評を提起し、革命的な社会主義的オルタナティブを、労働者は権力を掴み、経済を集団的に所有し運営しなければならないという考えを提案する可能性が生まれる。
このすべてがストライキを、しかし特に数万人あるいは数十万人を巻き込む大衆的ストライキを、非常に意義のあるできごとにする。
ここまでわれわれは、もっと急進的な労働者階級の意識を生み出し始めることも可能な大規模で戦闘的なストライキを、まだほとんど経験していない。それは疑いなく今後あるだろうが、それでもわれわれはまだその地点にはいないのだ。(2021年11月18日、「ニューポリティックス」より)(「インターナショナルビューポイント」2021年11月号)
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