米国 右翼が公衆衛生とレイシズム教育を攻撃

教育の場が暴力の場に
ダン・ラボッツ

 米国の地方学校理事会はこの数ヵ月、公衆衛生政策と人種に関する教育をめぐって親たちが――時には拳で――闘う中で、激しい議論の場に、また暴力の場にさえなっている。

トランプ復権へ
共和党が大動員
 戦闘というこの波は、ワクチン命令、マスクの必須化、また批判的人種論教育に反対して右翼の親たちが決起する中、8月末あるいは9月始めに学校が休み明けになった時に始まった。いくつかの事例では、秩序回復に向け警察が呼ばれなければならなかった。全国学校理事会協会は9月遅く、学校理事会メンバーを守るためにバイデン大統領が介入するよう求め、バイデンの司法長官は、暴力を阻止するために連邦捜査局(FBI)と他の機関を使うだろう、と語った。
 共和党の知事がマスク命令を禁止する指令を出したところでは、ワクチン接種やマスクを求める主張のため、あるいは他の場合はカリキュラムに人種とレイシズムに関する教育を維持するために、進歩的な親たちが学校理事会の会合に出かけた。
 共和党員と極右の者たち――この暴力のほとんどに責任がある――は、先の政策に反対し、右翼の設定課題を推し進めるために、また2022年11月の次期全国選挙に向けた意図の下に動員するために、この会議を利用している。ちなみに問題の選挙に際しては、34の上院議席と下院の全議席の435が、再選をめざす立候補の対照になるだろう。右翼の活動家たちは、しばしば騒々しくふるまい、叫び声を上げ場をかき乱し、何人かの親たちが殴り合いになる程の混乱をつくり出している。

民主的機能
も破壊され
 学校理事会の会合は過去には通常、むしろ静かな業務だった。米国には全国的な教育制度はない。むしろ、50州の各々がそれ自身の教育政策に責任を負っている。諸州内部で、およそ1万3800の地方学校管区理事会が州の政策を実行し、学校を管理し、教員と学生に関し大きな権力をもっている。
 ほとんどの学校理事会は、その市内に本社をもつ大企業出身のメンバー、小企業オーナー、当地の歯科医、あるいは弁護士という形で、当該地域の実業界により支配され、時には教員労組がメンバー候補者を支援したり、立候補させたりしている。こうした背景の中で、学校理事会の会合は歴史的に、幅広いメンバー、教員、また親たちが資金や政策という重要な課題を論争することで、かなり民主的なものになっていた。

渦まく陰謀論と
レイシズム黙認
 今や学校理事会は戦場になっている。米国疾病管理センターは、マスクはすべての学校の教員、職員、生徒の任務だ、と勧告した。しかし、テキサスのグレグ・アボットやフロリダのロン・デサンティスのような共和党知事は、学校管区がマスク命令を出すことを禁止する命令を出した。共和党の主張は、子どもがワクチン接種を受けるか、マスクを着けるか、それを望むかどうかどうかを決める自由を両親がもたなければならない、というものだ。
 親たちの中にはまた、Qアノン支持者もいる。そして彼らは、民主党、深部の国家、そして世界のエリートは魔王の信者であり、彼らのワクチン接種要求は米国民衆に今毒を注いでいる極悪非道な策略、と信じている。他の人々は、マイクロソフトの創業者で百万長者のビル・ゲイツが人々の行動を支配するためにワクチンの中にマイクロチップを仕込んでいる、と信じている。Qアノンは、魔王信奉と闘うための幅広い政治戦略の一部として、地方学校理事会を支配するよう共和党に訴えた。
 共和党もまた、教員たちは今白人すべてをレイシストと責めていると論じつつ、批判的人種論(構造化されたレイシズムの分析)を教えることを、あるいは人種についての教育すべてを教員に禁じ続けるよう求めて、白人の親たちを動員してきた。8州はすでに批判的人種論を教えることを禁じ、別の数十の州議会はそうした禁止令を熟慮中だ。多くの黒人の親と進歩派は、人種の歴史とレイシズム、また社会に構造化されたレイシズムの役割を教えることは教育の本質的な部分だ、と強調した。
 学校理事会の戦闘は、2022年の議会選挙および2024年の大統領選へのトランプ復帰の可能性を決定する上で、ひとつの役割りを演じるかもしれない。(2021年10月27日、「ニューポリティクス」より)(「インターナショナルビューポイント」2021年11月号)

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