フランス プトゥ大統領選キャンペーンの役割

ブルジョア政治をくつがえす党を建設するプロジェクトを共に
資本主義と階級意識が危機の時 党の戦略とは
アントワーヌ・ララッシュ

 フランスの反資本主義新党(NPA)は、今年4月に実施が予定されている大統領選挙に向けて、フィリップ・プトゥ候補の選挙キャンペーンを展開している。この選挙キャンペーンの中で、NPAは労働者運動の再建を担うことのできる党建設に挑戦している。フィリップ・プトゥは、2012年、2017年に続く三回目の立候補となる。

新たな目標でキャンペーン


 2017年のフランス大統領選挙において、反資本主義新党(NPA)が支援するフィリップ・プトゥのキャンペーンは小さな成功を収めた。4月5日のテレビ討論会では、、右派(共和党)のフィヨンと極右(国民戦線)のルペンとの対決で一定の評価を得ることができた。われわれは、急進的な人物であり、民衆階級が置かれた状況を認めない労働者であるというプロフィールを広めることに成功した。
 5年後、このキャンペーンに対するもっとも多い反響は、フィリップが「われわれと同じように話す人」であるということだ。テレビ討論会で他の候補者と一緒に写真を撮られることを拒否したこと、警察の役割や抑圧に反対する闘いへの支援といった難しい問題で自己主張する能力を持っていることによって、大衆的な知名度が上がった。
 2017年、われわれはそれ以上のことをすることができなかった。闘争のためであれ、オルタナティブの構築や党の建設であれ、より広いレベルで政治的展望を前進させることはほとんど不可能だった。メンバーの新規加入は限られており、NPAの危機は終わっていなかった。
 3回目のプトゥ・キャンペーンは、世界的な体制危機が深刻化するという状況の中で、こうした出発点と比べて目標を設定する必要がある。特にトゥールーズとストラスブールでのここ数日の集会の成功は、このキャンペーンの可能性を示している。

不安定な均衡点での階級闘争


 エコロジー・医療・社会・政治的な側面から、体制危機を再検討することはこの文章の目的ではない。しかし、政治的・制度的なレベルでのその影響には留意しなければならない。フランスは、他の多くのヨーロッパ諸国と同様に、政治的代表制の危機、つまり資本主義を運営する諸政党の危機をまさに経験しているところである。
 伝統的なブルジョワジーに基礎を置く古典的右派である共和党の信用失墜は続いている。制度内左派は、依然として自らを(再)構築することができないでいる。極右の勢力拡大は続いている。マリーヌ・ルペンの国民連合は、権力をめざす戦いの中に自らを位置づけようと苦闘しているが、極右の象徴であり続けている。
 その一方で、エリック・ゼムールは、とりわけ小ブルジョアジーやルペンの「脱悪魔化」に失望した人々の間で、公然としたファシスト的過激右派を体現している。それは億万長者のボローレの支援を受け、もっとも急進的な反動派に向けてポピュリスト的言辞を弄している。
 組織労働者運動の残骸である左翼は細かく分断されている。社会党は、資本主義を運営するという政策と反社会的な攻撃の代償を払っている。その同盟者である緑の党、共産党、ジェネラシオンズ[訳注1]なども同じである。ジャン=リュック・メランションが率いる「フランスの不服従」は、労働者運動と左翼の伝統から距離を置き、内部民主主義が欠如した中での制度内的戦略と支配政党の政策に反対する傾向を再建する試みとの大きなギャップを無視している。しかし、こうした問題―そして、とりわけ帝国主義や闘争の役割などに関する他の多くの問題―は、今日まで労働界の政治的表現がなく、政府や使用者の政策に対する拒否を表現できる組織―たとえ改良主義的であっても―がない理由を説明するには十分ではない。
 労働者運動の弱さと労働者階級の利益を集中して政治的に表現することの弱さが、この状況における重要な問題である。
 マクロンが不安定な均衡の中で、その職にとどまっていられるのは、左翼の弱さ、右翼の弱体化の持続、極右の台頭といった要素すべてのおかげである。彼の正当性は弱いが、その体制は強固であり、第五共和制の制度に支えられたボナパルト的体制である。それは社会的基盤が縮小しても、強固な体制を構築する能力を示しているのだ。
 この不安定さは、マクロンの成功、諸勢力の社会的・政治的バランス、国際競争という状況でのブルジョワジーのニーズなどによるが、いくつかの方法で解決可能である。医療・賃金・雇用をめぐって小規模ながら過去数カ月間続いてきた動員、とりわけグアドループやマルティニークにみられるような大衆的な動員は、衛生パスに反対する「黄色いベスト」運動の動員に両方の意味で影響を与えながら、労働者階級が諸勢力の均衡を変える潜在的な力を示している。たとえ、衛生パスに対する反応やそれが自由を破壊する結果に対する反応が限定的なものにとどまり、特許を拒否する要求や医療資源に対する要求が高揚しなかったとしても、である。
 このように、現段階では、カードを握っており、反社会的攻撃のペースを決めているのは支配階級なのである。このことが情勢の2番目の中心的要素である。つまり、政府に対する戦闘的な反対勢力を構築し、政府に大きな敗北をもたらすことが急務なのである。
この点は、労働界の政治的表現を再構築する可能性と完全に結びついている。階級が強化されるには、イニシアチブをとること、代表者と政策で武装できること、闘争に勝利することが必要である。マクロンが支配的かつ多数を占めるブルジョアの政治的代表を構成しているのに対し、プロレタリアートは、政治的指導部、行動の統一、そしてごく単純なことだが、行動を奪われている。

不可避的な左翼再編開始見すえて

 左派の状況は閉塞的である。制度との結びつきが強い諸政党―社会党、緑の党、共産党―は、右派とマクロンに対するそれなりの手段として自分たちを位置づけようとする以外の展望を持っていない。しかし、これがうまくいくかどうかを判断するのは難しい。というのは、民衆がもはや機能するとは考えていないシステムを作る以外に、いかなる希望をも与えられないように思えるからである。
 もう一方で、「不服従のフランス」は、所与の政治的人材や方向性に対する根本的なオルタナティブの可能性を煮つめようとしている。しかし、メランション体制はその限界に達してしまった。民衆階級の政治化された部門にとってのいくつかの指標(移民問題や左右の分断についてなど)に関するあいまいな言説は人を興奮させるものではない。と同時に、自分が「運命の人」であるという彼の姿勢は、前の二つの選挙で敗北を喫したのである。
その中心となる理由は、それが左翼の統一を拒否し、労働組合運動や協同運動を具体的に支援することを拒否する形で、労働運動の残りの部分との関係でセクト的なやり方で定式化されているからである。「大衆が第一」のようなとりくみは、大衆的左翼の諸グループがその分裂にうんざりしていることを物語っている。
 つまり、労働界のかなりの部分は新しい何か、左翼に希望をもたらすような何かを求めているように思える。そのことはシステムの世界的な危機と制度内諸政党の支持低下に対応したものである。
 こうした希望はあいまいさに満ちている。多くの若者や労働者がノスタルジーを感じているのは、社会的進歩をもたらす左派、自分たちの近いところにある左派、公約を裏切らない左派、制度、社会的対話、国民的団結の内部でのとりくみの一部としての左派である。この願望の中には、革命的な意識と資本主義に対する意識的なオルタナティブの計画は含まれていない。
しかし、他方では、われわれの潮流とは別に、労使関係の問題および国際主義や民主主義の問題について、とりわけ抑圧に反対する闘いにおいて、いかなる責任も放棄しない、誠実で闘争的で統一的で急進的な左翼を代表できる潮流はあるだろうか? 「労働者の闘争」(LO)、「民主独立労働者党」(POID)、「永久革命」のような極左組織[訳注]が代表できないことは明らかである。これらの組織は、労働者運動の他の潮流に対するセクト主義によって特徴づけられており、それゆえに、生じている問題を労働者運動の再建をまじめに願っている人々のために議論することを拒否しており、再建の戦略も持っていないからである。
 したがって、政策との決別を追求する政治的プロジェクトが切望されていることと、われわれの革命的プロジェクトとの間を橋渡しすることはわれわれの責任となっている。
 大統領選挙に引き続いて、新たな問題が発生することは間違いない。社会党は同じやり方で続けることはできないだろう。「不服従のフランス」はメランション派の新たな失敗によって大きな打撃を受けるだろう。再編成が制度内左翼の中で起こり、これまで以上に明確な政治的展望を持たないままで、何百万人もの活動家たちに党の問題が突きつけられるだろう。この新しい時代において、われわれは決定的な問題を提起しなければならない。すなわち、統一され、政治状況に影響を与えることができる労働者運動を再建する必要性、および資本主義を打倒する戦略、革命的プロジェクト、社会主義社会の構築を存在意義とする党を作る必要性である。
 プトゥが立候補することの意味は、基本的には、搾取されている人々のための党、ブルジョア政治家に対抗する党の建設、資本主義と階級意識の危機が深刻な時代における党の戦略について問題を提起することである。その問題を問うことは、現段階では、それを解決することができていないことでもある。フィリップ・プトゥに投票することは、このプロジェクトに対する支持を確認することなのだ。

政治的に明確にすべき4つの点

 これらの問題点からみて、いくつかの顕著な点がわれわれのキャンペーンの基礎を形成している。
1.われわれは労働者運動(再)構築の一部であり、マクロンとこの種の政治に追随するすべての人々を排除したいと考えている。
2.極右はわれわれの最悪の敵であり、われわれはそれと戦い、沈黙させ、制度内での解決に幻想を抱くことなく、極右に対して民衆階級と民主的権利を信じるすべての人々を団結させなければならない。
3.われわれは、資本主義、つまり深い危機の中にあり利潤の追求によって支配されているこのシステムを打倒し、もう一つ社会を築くことを望んでいる。われわれは、こうした対決や社会革命を準備するために、党を建設することを望んでいる。われわれは、このプロジェクトにとりくみたいと考えるすべての人々をいま組織することを望んでいる。
4.われわれは、資本主義の論理と決別する緊急要求を提起することによって、革命を待ちたくない人々のために、いま役立つことを望んでいる。

この期間の綱領的な重要点

1.人類に対する脅威と革命的エコロジー

 IPCC報告書、COPの失敗、パンデミックは、世界的な政策に進展がなく、人類が破局に向かっていることを示すものである。マクロンの対応は原発推進であり、それは世界の荒廃をさらに加速させる脅威である。
 われわれの解決策は、あらゆる分野、とりわけエネルギー分野において、労働者による管理のもとでの計画作成(エネルギーと生産の抑制、化石燃料からの撤退へと導くような)と公共サービス(交通、医療、研究、教育など)への大規模な投資を組み合わせることである。

2.貧困の拡大に直面し、雇用主が盗んだ金を取りもどす

 何百万人もの人々がより激しく、より長い時間働いている一方で、何百万人もの人々が貧困や不安定な状態に陥っている。われわれは、最低所得を1800ユーロとするとともに、400ユーロの賃上げをおこない、失業がなくなるまで労働時間をシェアし、解雇や人員削減を禁止し、すべての若者に勉強、訓練、就職のための自助手当を給付しなければならない。危機に直面して、われわれは銀行を接収し、債務を帳消しし、大企業へのあらゆる贈与(税金免除、CECIなど)および脱税をやめなければならない。

3.民主主義の危機と弾圧・抑圧

 ブルジョア民主主義は危機にひんしている。極右の台頭と権威主義的な政策は、超搾取、秩序維持、抑圧を支援するものである。ブルジョアジーと小ブルジョアジーの反動的潮流が組織化されている。われわれの側でも、平等主義と連帯にもとづく世界のために、抑圧され、搾取されているすべての人々を組織し、団結させて、彼らに立ち向かわなければならない。
 われわれは、労働の場で、女性の賃金であれ、外国人の労働権や移動と定住の自由であれ、差別に反対してすべての人に平等を求める。われわれは、被支配国であれフランスの植民地であれ、抑圧された人々の自由を求め、そうした人々のために自己決定権、公共サービス、適正賃金、弾圧の停止を要求する。われわれは、大統領府、上院、抑圧的な警察など第五共和国の反民主的制度を解体するのを望んでいる。われわれは、選出された議員の給与を平均賃金に制限し、すべての職務を取り消すことができるようにするのを望んでいる。

協働への過渡的な取り組み

 選挙期間中、多くの労働者や若者がわれわれに目を向けるのは、解決策を探し求めていて、われわれのような誠実な活動家がアクターになれると考えているからである。必ずしもわれわれの社会的プロジェクトを信じているわけではないが、資本主義にはもう耐えられないという人たちである。
 このようなすべての人々に対して、われわれはこれから一緒に活動すること、現在の政策との決定的な決別のためのスローガンを守ること、近年の諸闘争(黄色いベスト運動、年金・賃金・雇用のためのストライキ、フェミニストやLGBTIの闘い、反人種主義の動員、警察の暴力に対する闘い)と結びついた、強力で、団結した、戦闘的な労働者運動の再建のために働くことを提案する。
 逆説的だが、小さな組織としてのわれわれの位置は積極的な役割を果たすことができる。われわれは夢を売ることはない。フィリップ・プトゥに投票しても問題は解決しない。われわれには力の均衡が必要なのである。われわれとともに活動すること、この立候補を防衛すること、可能な限り多くの得票を獲得すること、議会選挙に参加して全国ネットワークと全国各地で活動家集団を構築することは、われわれの考えを前進させ、われわれの前で階級間の力の均衡を変える戦いを準備するのに役立つのである。われわれは、この時期に重要であることに関して小さな組織であるため、大衆的な党を建設しなければならない。われわれは、世界的にわれわれのプロジェクトに賛成してくれるすべての人々に、それに貢献するためにわれわれに加わることを提案する。
 われわれが望む党は、この政治的プロジェクトの具体的な実現である。また、われわれは、プトゥを支援する広範な委員会を設立したいと考えている。それは、キャンペーンの一般的な考えに賛成してくれる何千人もの人々を包含することを目指すものである。
 リーフレットを配布していると、プトゥ・キャンペーンを支持するというかなりの熱意が近隣住民の中で表明されていることを目にする。それを戦闘的な力に変えるのはわれわれ次第である。トゥールーズ大学ル・ミライユ校での集会には500人以上の若者が結集し、その中の100人がわれわれにコンタクトをとったことは、何千人もの労働者、若者、不安定労働者とともに政治的行動の経験をおこなう可能性が現にあることを示している。
 このキャンペーンが終了したとき、かなりの部分が通常の活動や党の建設に関心を持つ可能性がある。それを望まない人もいるだろうが、その可能性は長期的に労働者運動の再建に貢献する戦闘的な経験によって強化されるだろう。
(『フォース・インターナショナル』サイトに、1月20日に掲載された)
(アントワーヌ・ララッシュはNPAの指導的メンバー)

[訳注1]ジェネラシオンズは、2017年の社会党大統領候補だったハモンが社会党から分裂して結成した組織。
[訳注2]「民主独立労働者党」(POID)は、ランベール派トロツキスト組織のCCI(国際主義共産主義潮流)から2015年に分裂したグループが結成。ちなみに、CCIは他の左翼グループとともに「独立労働者党」(POI)を構成している。「永久革命」は、NPA内の分派である「革命的共産主義潮流」が運営するサイトで、モレノ派トロツキストの国際組織「第四インターナショナル-トロツキスト分派」に所属している。

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