ウクライナ ロシアの攻撃的帝国主義政策に反対を

今こそ国際的な反戦連帯の時

ウクライナ社会主義者

 以下は、「インターナショナルビューポイント」に掲載されたウクライナからの連帯を求める訴えである。ただ訴えた主体についての解説はないが、本紙1月24日号掲載論評の筆者とは、見解の違いがあるように見える。現地ウクライナをめぐって起きている問題を考える素材として紹介する。(「かけはし」編集部)

 クレムリンはロシア軍にウクライナ国境に向かうよう命令し、米国、NATO、またウクライナがその要求を満たさなければ介入すると脅し続けている。われわれ、ウクライナの社会主義者は世界の左翼に、ロシア政府の帝国主義政策を糾弾し、ほぼ8年続いてきた戦争に苦しんできた、そして新たな戦争で苦しむことになる人々への連帯を表すよう訴える。

ロシア帝国主義の攻撃的な復活


 ソ連邦崩壊以来、世界にはただひとつの超大国――米国――が残った。しかし何ごとも永久に続くことはなく、今そのヘゲモニーは下降中だ。アフガニスタンとイラクへの米国の介入は、これらの国の民衆に破局的な戦争をもたらし、米国にとっての面目失墜に終わった。不幸なことに、米帝国主義の後退には、より民主的な世界秩序の出現ではなく、他の帝国主義的略奪者や原理主義者、そして民族主義運動が伴った。これらの環境の下では、西側帝国主義のみに反対して闘うことに慣れた世界の左翼は、その戦略を再考しなければならない。
 この何十年にはロシア帝国主義の再生が起きてきた。そしてそれは今、米国に世界的影響圏を再配分させようと挑んでいる。諸々の事実は、プーチンのロシアの影響圏に入ることが人々に何らかのよいことをもたらすものではない、ということを示している。まさに今ロシアの部隊は、民衆的蜂起を力ずくで抑え込むという目的の下にカザフスタン国内にいる。
 これらの行動は、CSTO(集団安全保障条約機構)の反動的な本性を確証している。この部隊は、諸国を外国の攻撃から守るためにではなく、クレムリンの影響力を強化し、不人気な政権を革命から保護するために創出されたのだ。カザフスタン内の事実上のロシア軍部隊はまた、カザフスタン内石油産業の重要な部分を所有している、米国資本と英国資本の利益をも保護しているのだ。
 ロシアは、ベラルーシの抗議運動でも似たような役割を果たしてきた。クレムリンは、ストライキ中のメディア労働者を置き換えるためにそのプロパガンダ要員を派遣し、ベラルーシに派遣される予定の治安予備要員の組織化を公表した。ロシア帝国が欧州の憲兵であった19世紀とまさに同じように、プーチン政権は今、ポストソビエトの空間において、社会的、政治的変革に対するバリケードになろうとしている。この領域内のあらゆる社会運動は、いかにすればクレムリンにとっての刺激物にならないか、を考えるよう強いられている。
 われわれは、クレムリンの帝国主義政策に反対し、彼らの国内での民主的かつ社会的な変革を求めて闘争中のロシアの左翼活動家に、われわれの謝意と連帯を示したい。ロシア内の革命とプーチン体制の打倒のみが、ポストソビエト諸国に安定と平和と安全をもたらすことができる。

ドンバスの
真実の情勢


 クレムリンは、ドンバスでの軍事的攻勢を計画しているとウクライナ当局を責めているが、それはあからさまな嘘だ。ゼレンスキーの政策は、権力に到達後に平和を達成しようとした多くの不成功に終わった試みを受けて、ドンバスで何かを変えようとする計画を放棄した、ということを指し示している。われわれは、ウクライナ当局の新自由主義的な、また民族主義的な諸政策を強く非難する。しかしそれらはいかなる点でも、ロシアの帝国主義的攻撃を正当化するものにはならない。
 ロシアは変わることなく、ミンスク協定の政治的な部分を満たしていないとウクライナを責めている。しかし、それ自身は変わることなく、その協定の安全保障の部分を侵犯しているのだ。その最新事例こそ、ウクライナ―ロシア国境監視という、OSCE(欧州安保協力機構)への任務委任継続に対する、ミンスク協定4章における規定にもかかわらずなされたロシアによる否認だった。
 クレムリンにより統制を受けている自称共和国の部分では常に、接触線上でのOSCE派遣代表団の自由移動に対するさらに飛び抜けて多くの制約があった。しかしこれらの障害にもかかわらず、OSCEはこの間、前線からの重火器撤去に向けた諸条件に対する「DPR」(ドネツ人民共和国)と「LPR」(ルガンスク人民共和国)による何倍も多くの違反を記録してきた。
 しかし肝心なことは、一度も実行されなかったミンスク協定2の10条だ。すなわち、「外国の武装組織すべて、軍事装備、傭兵の、OSCE監視下におけるウクライナ領からの撤退。非合法集団すべての武装解除」だ。ドンバス内にはロシア軍部隊が過去存在し、今もいる。しかしクレムリンはこれを、今も偽善的に否認している。
 いくつかの西側左翼内部で広まっている神話とは逆に、「DPR」と「LPR」は民衆の意志の結果ではない。それらの首脳たちはロシア連邦の支配的エリートの隊列に統合され、クレムリンのもっとも攻撃的で略奪的な感情のこもった代弁者になっている。「共和国」それら自身内では、あらゆる反対派の政治活動が、ロシア政府にもっとも忠実なものさえ、抑え込まれている。
 同時に、「共和国」の諸領域は急速に非産業化されている。インフラは悪化し続け、都市内の公共交通ネットワークは解体されつつある。その製品がロシア連邦を通じて輸出されている企業の場合でさえ、何ヵ月もの賃金遅配が通常になっている。労働者の抗議の高まりは、ついに活動家たちの拉致や軍用車両導入に行き着いている。
 それに加えて、ドンバスは早くから環境的破局地域になっていた。多くの鉱山が適切な保全策もないまま閉鎖されている。そしてそれが、飲料水汚染を引き起こした。国連の評価によれば、ウクライナでももっとも人口密度が高い地域のひとつでありながら、ドンバスは全世界でもっとも多くの地雷が満ちた地域なのだ。

平和で中立な地へ必要なことは


 クレムリンは今、ウクライナの主体性、およびロシアとウクライナ間交渉の可能性、を否認している。ロシア政府は、ウクライナを完全に捨てカードにしつつ、あらゆることを米国との間で合意したがっている。しかし、紛争解決の決定は、紛争に直接左右されて生きている人々の観点を、またそれが解決されることになる方法を、考慮に入れる中で行われなければならない。ウクライナは、ふたつの帝国主義国家間の合意における取引札になってはならないのだ。
 われわれは平和で中立なウクライナを求めて努力している。しかしこのためには、クレムリンがその攻撃的な帝国主義政策を終わらせなければならない。そしてウクライナは、ロシア政府によって2014年にあからさまに踏みにじられたブダペスト・メモランダム以上に、真剣な安全保障の保証を与えられなければならない。
 われわれは、大資本とそれら自身の目標に奉仕する西側政府の政策に関して幻想を抱くことなく、ウクライナ勤労民衆の利益は、それら諸国の公衆と進歩的な諸運動の圧力下ではじめて考慮される可能性が生まれる、と確信している。
 何よりもまず、ドンバスにおける戦闘を最終的に終わらせ、前線上であり得る武力衝突の挑発を阻止することが必要だ。そうした挑発が新たな介入の口実として利用され得るのだ。したがって最初の1歩は、ドンバス内への国連平和維持部隊導入でなければならない。われわれは、現実の平和維持任務が抱える諸問題を自覚している。また、ブルーヘルメットが時として大規模な暴力を阻止できなかった、ということも心にとどめている。しかし現在のウクライナにおける環境下では、これが必要な強制的1歩だ。紛争の長期的解決という課題は、安全保障の課題が解決されてはじめて解決されるべきものだ。敵対の終わりは紛争の激しさを引き下げるはずであり、あり得る妥協を議論することがその後にもっと容易になるだろう。

 次の歩みは以下のようにならなければならない。
*ドンバスからのロシア軍部隊完全撤退。ロシア連邦指導者たちに対する圧力で最良の手段のひとつは、ロンドンや他のところにある公職者たちとロシア寡頭支配層の資産を接収することだと思われる。
*戦争被災地域の復興とその住民への支援に向けた国際的計画(ロシアとウクライナの寡頭支配層が略奪したものの没収を通じるものを含んで)の創出。
*西側によってウクライナに提案されている社会・経済路線の改訂。つまり、IMFの圧力下での破壊的な新自由主義的改革に代わるものであり、ウクライナの対外債務の帳消しも入る。
*ウクライナ極右の免責を終わらせ、「脱共産化」諸法を廃止させ、ウクライナ内でのもっと包括的で進歩的な人道的諸政策。
*「DPR」と「LPR」に暮らす者たちに対する人権遵守に向けた保証の規定、戦争犯罪に関わらなかった者たちに対する特赦法の採用。

 ドンバスでの戦争は、何千人もの命を奪い、何百万人をも彼らの家から去ることを余儀なくさせた。エスカレーションの怖れがダモクレスの剣のようにウクライナ人の上に覆い被り、進歩的な政治の展望を大きく狭めている。ウクライナにおける社会主義運動の未来は、国際連帯にかかっている。(「インターナショナルビューポイント」2022年1月号)   

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