世界不平等報告2022

高まり続ける不平等の世界
アンリ・ウィルノ

すさまじい格差
がなおも拡大中
 最富裕層が所得の巨大部分を掴み、資産のほとんどを所有、そしてCO2排出の比例とかけ離れた部分に責任を負っている。これらが、エコノミストと統計専門家からなる国際的グループによる「世界不平等報告」最新版の主な所見だ。
 1980年代以来、規制解体と自由化の諸計画の結果として、所得と資産の不平等はほとんどすべてのところで高まり続けてきた。この傾向はコヴィッド感染の中で加速した。
 現在、世界人口中の10%に当たる最富裕層が、世界の所得の52%を稼ぎ取り、他方で半分に当たる最貧困層の稼ぎは8%にすぎない。資産の不平等は所得の不平等よりもむしろはなはだしい。世界人口中半分に当たる最貧困層には事実上資産がまったくなく、全体の2%を所有するにすぎない。対照的に、世界人口中10%にあたる最富裕層が、世界の資産の76%を所有している。0・01%にあたる超富裕層が所有する資産の割合は、1995年と2021年の間に7%から11%に上昇した。
 頂点にある超富裕層0・001%は世界で2021年に成人の5万5200人にあたり、資産の6%ちょっとを所有するが、それは、彼らの資産が平均の6000倍以上であることを意味している。これを視野に置いた上で、超富裕層0・001%の5万倍以上の大きさになる集団、世界人口中の最貧困層50%の総資産は、超富裕層総資産の3分の1(2%)という小ささなのだ。

社会的不平等
炭素排出でも
 先の報告中のもっとも興味深い点のひとつは、気候変動への寄与に関係している。著者たちは、所得と資産の不平等と気候変動に対する不均等な寄与の間にある結びつきに光を当てている。平均では人間が、年に1人あたり6・6トンの等価CO2を排出している。しかしそこには、世界人口内部での大きな不均等があるのだ。
 最貧困層50%は年に平均で1・6トン排出し、総計の12%に寄与している。中間層40%は平均で6・6トン、あるいは総計の40・4%を排出している。最富裕層10%は31トン(総計の47・6%)排出している。超富裕層1%は110トン(総計の16・8%)排出している。したがって、総排出の半分近くが世界人口の10分の1によって引き起こされ、世界人口の100分の1(7700万人)が同人口の貧しい半分全体(38億人)によるもの以上を排出しているのだ。
 同報告は原理的な課題を強調している。すなわちこの不平等は、それが普通に提起されているやり方とは逆に、豊かな国と貧しい国という単純な問題ではない、との指摘だ。低所得や中所得の国の中に大量排出者がおり、豊かな国の中に少量排出者がいるのだ。著者たちによれば、1990年、世界の炭素不均等の大半(63%)は、諸国間の違いを原因としていた。つまり当時は、豊かな国の平均的市民が、明白に世界の市民の残り以上に汚染を起こしていた。
 この状況は30年でほとんど完全に逆転されている。今や諸国内部の不均等が排出における世界的な不均等のほぼ3分の2を説明する。これは、世界の諸国間、地域間の相当(しばしば巨大)に不均等な排出がまったくない、と言っているのではない。それが言っていることは事実として、炭素排出における諸国間の大きな不均等に加えて、個人間と社会的諸集団間のもっと大きな不均等がある、ということだ。
 欧州では、人口の貧しい半分が年に1人当たり約5トン排出している。その排出は東アジアで約3トン、北米では約10トンになる。これは、これらの地域のトップ10%の排出とは際立った対照だ(欧州での29トン、東アジアでの39トン、北米での73トン)。

問題にすべきは
資本家の所有権
 それゆえ同報告は次のように結論づけている。つまり、豊かな諸国内で温室効果ガスを抜本的に削減するために必要な変革の規模は、環境上の不平等と社会的不平等が環境政策の設計そのものに統合されないならば達成され得ない、ということだ。
 著者たちは、炭素税のような税を批判している。それは、豊かな者にも貧しい者にも無差別に打撃を与えるのだ。しかし、資産の不平等を制限するだけで十分だろうか? 資本主義の中では、超富裕層1%は何よりもまず、彼らが生産手段を所有しているがゆえに権力をもっている者たちだ。彼らは、投資と生産の方向を決定し、諸国家に影響を与える者たちだ。彼らは支配階級なのだ。挑戦されなければならないものこそこの権力だ。
 環境危機に関する数冊の著作の筆者であるわが同志、ダニエル・タヌロが同様なデータに基づく最新文書で指摘しているように、不平等の引き下げは不可欠であるが十分ではない。つまり「資本家の財産権を基礎とする生産力主義のモータ、利潤を求める競争、を問題とすることなしには、出口はない」(注1)と。

▼筆者はフランス反資本主義新党のメンバー。
(注1)「ゴーシュ・アンティカピタリステ」2021年12月9日。(「インターナショナルビューポイント」2021年12月号)世界不平等報告2022

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