米国 ウクライナをめぐって

米ロ戦争は切迫しているのか

ダン・ラボッツ

米ロが共に狙う
ウクライナ支配
 ウクライナが米ロ間の危険に満ちた力の試し合いの中心になっている。それは、ロシアの侵攻、西側の経済制裁、相互のサイバー戦争へと導く可能性が考えられ、さらに、ふたつの核大国が巻き込まれていることで、核戦争に火を着けるという可能性さえもある。
 この心臓部には、NATOに加盟するというウクライナの計画がある。バイデン米国大統領とプーチンロシア大統領の両者とも、東欧支配という彼らの権利主張を再断言する機会としてウクライナを利用し、彼らの民族の帝国主義的な歴史と現在の野心に訴えた。
 少し前プーチンは、ソ連邦崩壊を悔やみ、それを「20世紀の最大の地政学的惨事」と呼んだ。ツァーリ帝政とソ連邦の下で、ウクライナは帝国の一部を形成したが、プーチンはそれを切に再獲得し再統合したがっているように見える。プーチンは今、米国とその仲間たちがウクライナを支えることでロシアに脅威を与え続けている、と主張しつつ、侵攻の準備が十分に整った約10万人の部隊を動員している。
 バイデンは自ら攻撃的な断言を行ってきた。バイデンは昨年6月欧州の同盟国に、「米国は、われわれがもっとも深く保持している諸価値を共にする国民と並んで世界を指導する仕事に戻っている。……われわれの確信として、今世紀の残りにおける米国の安全を維持するわれわれの能力にとってNATOが決定的である」と告げた。さらに特別に、「われわれは、われわれの大切なパートナーであるウクライナとジョージアと連帯する。そして彼らをNATOにさらに近づけ、彼らの改革を支え続けるだろう」と述べた。同時に、米国はNATO条約第5条――一国に対する攻撃は全加盟国に対する攻撃である、と規定している――は「神聖な約束」だったと考える、とも言明した。

ソ連邦崩壊後
のウクライナ
 長い間ロシアの植民地であり、ロシアと西欧の間に位置しているウクライナは、親西欧と親ロシアの政治の間で、地政学的にまた政治的に深く分裂している。それゆえまたこれまである種の発火点となってきた。1991年のソ連邦崩壊以後の独立ウクライナは最初、独立国家連邦(元ソビエト諸国家)とNATO双方と関係を確立した。
 ソ連邦との連携を支持した元首相のヴィクトル・ヤヌコヴィッチが2004年に選挙を偽装した時、オレンジ革命がそのやり直しを強制し、西欧に傾いていたヴィクトル・ユシュチェンコが選出された。しかしながら、2010年の大統領選挙ではヤヌコヴィッチが勝利し、2013年に、EUとの連携を棚上げし、代わりにロシア・ユーラシア経済同盟に加盟する、と決定した。
 これがユーロマイダン抗議行動に、そして2014年のウクライナ革命に導いた。そしてその中でヤヌコヴィチは打倒され、親西欧の大統領に継承された。
 こうした展開への対応としてプーチンは2014年、ウクライナのクリミア半島に侵攻しそれを奪取するためにロシア軍部隊を派遣し、そこをロシアのものと主張した。さらに彼は、ウクライナ東部のドンバスで戦争を引き起こし、ウクライナにふたつの「共和国」を認めた。それは今も、自治を要求し、そこに今日もいるゲリラ部隊を支えている。2014年以来のこの紛争で、1万3000人と言われる人びとが殺された。

自立し民主的な
ウクライナを
 米ロ抗争の中心には、ウクライナのNATO加盟問題がある。ウクライナは、1991年にNATO協力評議会に加わり、その時以来NATOと協力し、なおも加盟を計画している。NATOの指導者たちはその2021年サミットで、ウクライナが完全な資格を持つメンバーになるという計画を再確認し、この決定に関しロシアには拒否権がまったくないだろうと強く主張した。
 一方プーチンは、ウクライナはNATOに加盟してはならない、また東欧内のNATO部隊は引き上げられなければならない、と語っている。さらに、ウクライナがもしNATOに加盟するならば、ロシアは「攻撃用兵器が米国の近くにあるならば米国がとると思われると同じふるまいを行う」だろうとも。確かに米国は、1962年にソ連邦がキューバにミサイルを配備した際に、それらを撤去するようソ連邦に圧力をかけ、世界は核戦争瀬戸際になった。
 欧州の極左はバイデンとプーチン両者に反対している。しかし米国内に反戦運動は皆無であり、ロシア内でもひとつの可能性もない。われわれは今、第1に米帝国主義に反対し、同じくロシアの介入に反対し、そして自立したウクライナを、反動的な寡頭支配層によって支配されないウクライナを求める運動を支持して、もっと大きな声を上げる必要がある。(2022年1月4日、「ニューポリティクス」より)(「インターナショナルビューポイント」2022年1月号)

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