スペイン アンチキャピタリスタ第3回大会
われわれの前進のために反資本主義を再組織する
労働者の現実の闘いを引っ張る党へ
「ある歴史的瞬間に解き放たれた実践的な力が効果的であり、拡大していくためには、決定された実践を基礎として、その同じ実践の決定的な要素と理論それ自身とを一致させたり、同一視したりすることによって、その実践をあらゆる面でより均質で、一貫性があり効果的なものにして、行為自体の歴史的プロセスを加速する理論を築く必要がある」(アントニオ・グラムシ)。
欧州規模での闘いを
「革命を可能にする:前進するために組織せよ」をテーマにして、アンチキャピタリスタ[第4インターナショナル・スペイン支部]第3回大会が、2021年12月11日と12日に開催された。この大会は、2020年に予定されていたが、パンデミックのために延期されていたものである。今回の大会は、前回大会とは違って、その全体像が不確かなまま政治的・社会的状況が変化してきたという枠組みの中で開催された。われわれが直面する巨大な課題にとりくむ能力を備えた新たな反資本主義の政治主体の構築および関連した革命的任務に加えて、戦略を深く再考することが必要とされたのである。
この新しい局面を特徴づけるのは簡単ではない。しかし、スペイン国内だけでなく、ヨーロッパ規模や世界的規模でも運動が起こっている。そのことによって、世界システムの輪郭を間違えることなく描くことができる。その世界システムは、資本による搾取の拡大から生じる、社会内部および国家間の両方において増大する格差と紛争によって特徴づけられている。
新型コロナウイルス時代の世界情勢は、経済危機が新しい局面に入ったという特徴をもっており、数十年にわたって資本主義につきまとってきた利潤率の低下傾向を目立たせている。この事実は、新たなグローバリゼーションの覇権を再定義するための激しい闘いにおいて、世界的な当事者と権力の再編成プロセスを加速させることになるだろう。だからこそ、新型コロナウイルス危機は偶発的なものではあるが、現在の経済システムに直接関連する構造的な根源を持っていると考えられるのである。それは新しい資源獲得競争であり、貧困国から略奪する新たな形態が登場し、資源の有限性、自然の破壊的な過剰開発、資本主義の発展可能性を阻害することによるエコロジー危機や社会危機と密接に関連している。そして、このことは世界を互いに競合する勢力地域に分割し、新しい政治展開の条件となるだろう。
資本はもはや行き場を失い、回復のサイクルを再起動させる必要がある。内部蓄積のレベルでは、前回の危機以降に観察された三つの重要な要因がある。それは、公共サービスの商業化、賃金への攻撃、社会的再生産に関わるすべてのものを権利分野から排除することである。新自由主義は、国家を衰退させるどころか、国家を強化して、国家を資本に資金を供給し、資本の利益に有利な立法をおこなうための重要な道具に変えてしまった。その一方で、不平等と貧困を減らすための真の国家的関与は廃止されてしまった。新型コロナウイルス危機のため、一部の政府は、消費を促進し、国民の大部分が社会的に破滅するのを緩和するために、公共支出を拡大するという金融メカニズム (赤字に関するオルド自由主義的規則の緩和、国債の再発行など)を通じて計画を実行しているが、これらは依然として資本所得の回復を促進する手段となっている。
EUの明らかな衰退は経済危機の中に反映されており、中心部と周縁部の格差を拡大させ、その政治的枠組みの麻痺を増大させている。その一方で、この制度的な構造に挑戦する極右が統治する国の数が増え、欧州の課題を設定する大きな能力を示している。そのことに関する限り、ギリシャの国民投票で緊縮が拒否されたことによって喚起された民衆の希望が敗北したことがまぎれもない転換点となって、左派は極端に弱体化している。
EU主要加盟国の極右が主導して、EUから離脱するという形でEUが解体されるならば、反動的な再編成が加速するだろう。有用な左派政権であれば、条約への不服従を通じてEUによって押し付けられた限界に立ち向かい、主要な大衆部門による決裂に向けて前進するとともに、国際的な連携を模索し、その闘いを拡大し、他の国のまさに核心的な部分での対立を作り出さなければならない。
政治的主体の構築という点では、われわれの提案は、各国ブルジョアジーに対するヨーロッパ労働者の大規模な同盟を求めるものである。言い換えれば、各国における階級闘争から出発して、国を超えた協力形態に進むことが必要であり、ヨーロッパ規模での解決策を求め、ローカルな現実にしっかりと根ざしたグローバルな社会・政治運動を構築しようとするのである。
危機における傾向と対抗勢力
こうした世界情勢の再構成から生まれた主な政治的表現は、主として極右の台頭および有機的な危機と反乱である。新しい権威主義について、古典的なファシズムとの違いと連続性を定義しながら、明確に特徴づけることが重要である。このことは、憲法体制の抽象的な防衛を中心にすえて、エリートとの同盟を正当化する軽薄で道具主義的な概念と戦うことができるためには重要なことである。こうした体制は、民主的権利をますますないがしろにしているからである。
われわれの反ファシスト提案は、人民戦線主義(ブルジョアジーやその政治的代表者との協定を通じて、民主主義の擁護を階級闘争の放棄と結びつけることによって、社会主義による断絶を放棄する)ではなく、防衛的でアイデンティティにもとづく反ファシズムでもない。それとは正反対に、われわれは、第一に、現在の労働者階級は多様であり、したがって移民労働者階級も労働運動の一部であることを理解し、第二に、それが状況を改善するとともに、社会における労働者階級の構造的地位とその戦闘能力に有利な改革を実行することであると理解した上で、広い意味での労働者階級の団結を再構成することを提案する。
解放をめざす階級運動を再建するために、われわれはすべての運動(労働組合、環境、フェミニスト、LGBTIQ、反レイシストなどの運動)に依拠しなければならない。なぜなら、それらは労働者と資本家の闘争に内在するものであり、あらゆる抑圧や家父長制などの制度を終わらせ、それによって生態系の崩壊を避けるために不可欠なものであるからである。だからこそ、解放をめざす運動の同盟を構築することに向けて、すべての努力を向けることが重要であり、労働者階級の構造的な力の結節点がどこにあるかを特定する組織的定式を発展させることが重要である。そのことによって、生産分野(どんなストライキなのか? それは今日どの部門でもっとも有効か?)および再生産分野(フェミニストストライキ)で資本を攻撃することができる。
極右の台頭と左翼の弱体化の裏側には、有機的な危機とその首尾一貫していない形態がある。これらは、チリにおけるプロセス(はじめのうちは、政治的枠組みと計画が欠けていた)で立証されたように、不安の大きさをあらわしている。単刀直入に言えば、こうした自然発生的な社会的爆発が成功するかどうかは、それが発生する社会に存在する現存の構造、そして運動に組織的な支援と政治的な方向性を与えることができるかどうかにかかっている。
したがって、左翼にとっては、政治的再編成に向けて前進するために、こうした出来事に備えることや社会的合意を回復しようとするプロセスから自らを守ることが急務である。格差という亀裂が深まるにつれて、これらの出来事がより頻繁に、より激しく起きることに疑いの余地はない。われわれはそうした亀裂が抑圧の力で修復されるのを許すことはできない。
このような傾向は、スペインにおいても相関関係がある。2008年の危機とともに開始され、党派的・社会的な政治表現(15M、ポデモス、カタルーニャの住民投票など)の発生へと至った左翼の台頭という激しい政治サイクルのあと、十数年を経て、これらはレンガの壁に突き当たり、社会の幅広い層を政治不信に陥れ、さらに憂慮すべきことに、すでに広がっている動員解除を加速しているのである。これは、社会運動や組合運動にまで拡大している後退であり、そうした運動は空間と社会的力、戦闘能力と自律性を次第に失い、政府への支持と政府との交渉の両方の論理を採用してきた。
国際的な労働分業におけるスペイン経済の半周縁的な状況(観光、解体された産業、低い付加価値など)のために、現在の危機がわれわれの階級(とりわけ女性、若者、移民層)に大きな打撃を与えていることを考えると、現在の連合政権は、社会のより多くの層の不安定な状況をくつがえすことができる強力な改革を実行できない政府である。
政府は抗議運動の可能性をなんとか一時的に弱めてはいるが、その控えめな選挙公約を構成していた最小限綱領の目標に到達することができず、エネルギー企業やハゲタカファンドのような大企業に立ち向かう能力がないことを実証している。また、市民的自由や権利の分野においても、民衆に有利な関与はしていない。それどころか、カディスで見られたように、ストライキの権利を合法的に行使する人々に対する激しい弾圧や、サラゴサの6人の若者に対する残酷な判決に見られるように、まったく逆のことが起きている。
したがって、われわれは、衰退モデル(不安定さ、低賃金、構造的弱点、公共サービスの略奪)の永続化へと向かっており、それは逆説的にだが、進行中のマクロ経済回復へと向かう弱々しい流れと共存しているのである。中長期的には、非常に深刻な社会的格差とエコロジー的悪化の間に弁証法的関係が存在する。短期的には、公的資金による産業救済にもとづいた部分的回復が企業を助けるだろうが、遅かれ早かれさらなる負債と削減へと変わっていくだろう。あるいは最低生活保障(IMV)のようなうわべだけの政策が採られるだろう。階級的な拮抗の場における闘争の形態を生み出す弁証法的な関係は、国家の構成とその民族的領土構造という点での内部的悪影響だけでなく、必ずしも左派でなくても、さまざまな形態をとりうる新しい領土的緊張と不満をともなっている。
困難な課題に直面した新たな任務
われわれがその中に置かれているこの新しいシナリオは、以前のものとはまったく異なり、予期せぬ突発的な事態もあり得るが、あまり変化がなく混沌としたものであることを考慮すると、われわれは、組織がどのような意味を持つのかを改めて考察し、組織内部においても、社会に対しても、根本的に民主主義的で、経済権力や国家権力から独立した、行動的で戦闘的な党の構築を深化する必要がある。
それは、民主的計画作成を通じた意思決定への市民の積極的、多元的参加にもとづく、資本主義に対するオルタナティブとしてのエコロジー社会主義社会のための新しい考え方とプロジェクトを立ち上げる党である。これはまた、われわれが一定の共同闘争にかかわり続け、さまざまな運動を誠実に建設することに関与し続けながら、階級的独立や綱領的オルタナティブを防衛する宣伝をすすめるとともに、定式化されたとりくみにおける、もっと大きな結束と一貫性を妥協せずに追求するのを促がすことを意味する。
この根本的な社会の変革を可能にする戦略の里程標を築くという避けられない課題にとりくみながら、こうしたことすべてをおこなうのである。
15M[2011年に起こった5月15日運動のこと]の段階で、われわれがすべての抗議運動と憤りを組織に変えようとしたとすれば、われわれはいま、それをこの傾向を食い止める必要性についての、圧倒的多数の労働者や民衆の意識を広げるスローガン・考え方・強力な提案に変えなければならない。そうしたスローガン・考え方・強力な提案は、この新しい段階の中心軸として階級対立を提起するものである。
われわれは、破壊的かつ階級的な観点から、国家からの自律性を強化するために、社会運動の内部で貢献しなければならないし、抵抗する唯一の方法として、行動の統一と綱領的同盟を実践する必要性を社会運動に納得させるために、大衆運動を再建し、世界を支配する権威主義の新自由主義に立ち向かうために必要とされるモメンタムを獲得するためにも、社会運動の内部で貢献しなければならない。
それはまた、スペインの歴史において何度となく明らかにされてきたように、解放運動と国家を持たない諸民族の間の同盟にもとづかなければならないという憲法制定の提案について考えることでもある。われわれは、諸民族の自由にもとづいた新しい連邦制と共和制のモデルを考えるために、首尾一貫したやり方で自決権を擁護している。現在の体制では、それは不可能である。また、それは国家を持たない諸民族の民族的大衆運動を指導するエリートの指導のもとでも不可能である。この意味で、われわれは、アデランテ・アンダルシア[アンダルシア自治州における左派の選挙ブロック]の場合のように、開いた裂け目が開いたままにするために戦うという選挙における政治的賭けをすることを放棄しない。
われわれは、ベンサイドが述べたことを思い起こしながら、一種の抽象的な運動主義に陥ってはならないことを自覚している。社会主義的なものを再構成し、強化することは、根本的であるとともに、大規模な支持と急進性を結びつける社会主義的で、環境保護的、フェミニスト的なプロジェクトを構築するための前提条件である。
われわれは、これにはリズムがあること、歴史は振り子のようなもので、開いたり閉じたりする機会とともにどのように動くかを知らなければならないことがわかっている。だからこそ、われわれは、実際の運動の中に身を置くことができる政治勢力を構築することに明確に賭けているのだが、その政治勢力は、長期的には権力問題(どの階級が統治するのか)について闘う戦略指導部をつくり出すことを切望しているのだ。
われわれは、すべての政治的な性急さやあらゆるセクト的気まぐれ(これは、衰退期の革命的プロジェクトが抱える大きなリスクであり、自分たちの小さな領域を誇示することやすぐ横にいる誰からでも活動家を奪うことに関心がある)ではなく、たとえ集団的意志を築く努力をしたとしても、そのペースは単にわれわれの願望によって決まるものではないことを当然だと考えている。
(『第4インターナショナル』サイト、2021年12月24日)
(ロレーナ・カブレリソは、アンチキャピタリスタのスポークスパーソンの一人)
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