「ネットゼロ」とNATO スコットランドは絶縁を
スコットランド
気候変動と反戦
イアイン・ブルース
世界の科学者の最新報告はその言葉を惜しんでいない。気候変動の影響は、彼らが以前から予想してきたよりもさらに早く、より深刻に、もっと頻繁に感じられつつある。人間への脅威は、食べ物を得る能力ですら、さらに深刻でもっと近づいている。
そして国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は初めて、不平等と社会的公正の必要をその分析の中心に置いている。「何とか切り抜ける能力がもっとも小さな民衆とエコシステムがもっとも厳しく打撃を受けようとしている」が、「影響、適応、脆弱性」に関するIPCC第Ⅱ作業グループによる今回の報告を貫く不変の主題だ。ほんの100日前に、グラスゴーの街頭でまさに力強く打ち出された、社会的公正、人種的公正、ジェンダー公正、を含むクライメート・ジャスティスを求める主張が、科学界の中にそれらの反響を見出しつつあるように見える。
危機の結びつき
強烈に突きつけ
それでも、世界中の科学者による働きから集められた切迫したメッセージは、戦争の霧の中で聞き逃される危険がある。「気候変動に関する国連枠組み会合」のメンバー国195ヵ国による、先の報告への要約に関し合意するための先週の会議中に、ウクライナの代表者たちはズームミーティングの呼びかけから外れることを余儀なくされた。彼らが外での爆発音を聞いたからだ。それは、人間社会が今直面している多くの危機と脅威の間にある諸々の結びつきを、強烈に思い起こさせるものだった。
同報告に関わった者たちの何人かはすでに、ウクライナでの戦争が国連の気候に関する話し合いシステムを不安定化し、人間の幸福に対する脅威の深刻さ、および緊急の行動に対する必要性から注意をそらすかもしれないとの彼らの怖れを表明している。しかし先の結びつきはもっと深く広がっている。
英保守党右翼の諸部分の主張は、ロシアの燃料に対する依存を断ち切るNATO欧州諸国にとっての必要性は、別のところからのもっと多くの原油と天然ガス(米国からのシェールオイル、あるいは北海からの追加的天然ガス)が今後必要になるということを意味する、というものだ。化石資本にとってNATOは、「ネットゼロ」と並んで、クリーンエネルギーについて駄弁をふりまきながらいつも通りに事業を続けるための、もうひとつの正当化材料になっている。
「ネットゼロ」と
NATOが問題
スコットランド政府はウクライナへのロシアの攻撃に反対する原則的な立場をとってきた。そして、戦争を逃れる人びとへのより思いやりのある歓迎を支持している。しかしそれは、NATOの責任は識別できていない。デーヴィッド・ハーヴェイが指摘するように、プーチンの熱を帯びた「大ロシア」愛国主義は、西側帝国主義諸大国から受けた30年におよぶ恥辱により育成されてきたのだ。それは、何年もの新自由主義的ショック療法と嘘を重ねたNATO拡張から離れては理解できない。
SNP(スコットランド国民党)は、クライド湾(スコットランド西岸)のファスレーン(英海軍基地)に置かれた英国の核兵器(原潜搭載のトライデントミサイル)を取り除くという約束にもかかわらず、以前の立場を物議を醸して逆転した2012年大会以後、NATO加盟に傾注してきた。
気候変動をめぐってグローバルサウス諸国とのさらなる連帯を擁護しているSNP政府には、それに平行するものがひとつある。政府は一方で、気候変動ですでに影響を受けた打撃と損失に対価を払う基金を推し進めようと努めている。しかし他方では、化石燃料産業に北海から原油と天然ガスを採掘し続ける余地を与える、「ネットゼロ」という作り話になおも執着したままなのだ。
気候変動の脅威
と不平等にノー
今回の最新IPCC報告は、その別のくっきりとした警告の中で、「ネットゼロ」に向けた言い分、そしてそこには変わることなく地球温暖化1・5度Cという臨界的限度の一時的超過という予想が含まれているのだが、その土台を厳しく削り取っている。それは「この温暖化レベルを一時的に超えることであっても、それは追加的ないくつかの厳しい影響になり、そのいくつかは不可逆的になるだろう」と述べているのだ。
戦争、化石燃料、そして気候変動間のつながりは理解に難しくはない。急進的な気候活動家のダニエル・タヌロが彼のIPCC報告要約の中で説明しているように、われわれは、気候変動の脅威と不平等の間に科学者が明確化させたつながりをとらえる必要がある。スコットランドでそれが意味することは、もっとも全面的な意味で、クライメートジャスティスの基礎の上に独立運動を構築することだ。(2022年2月28日)
▼筆者はグラスゴーに暮らすジャーナリストでエコ・ソーシャリスト活動家。元IVラテンアメリカ通信員。(「インターナショナルビューポイント」2022年3月9日)
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