習総書記!プーチンに部隊の撤退を要求せよ

バンドン会議の約束を守れ

區 龍宇

 習総書記!どうかプーチンに部隊を撤退させるよう要求してほしい。そして「全ての国家の主権と領土の保全を尊重する」という諸君らの約束――アジアとアフリカの旧植民地の訴えを世界に向けて発した1955年のバンドン会議で中国が最初に行った約束――を堂々と掲げるべきである。

ロシアの主張に正統性は皆無

 外相の王毅は、ロシアの侵略の2日後に、ウクライナ問題に関し中国の立場を提示する彼の5点の中で先の約束(主権と領土)に言及した。にもかかわらず中国は、ウクライナでのロシアの行動が侵略であることを認めるのを拒否し続けている。バンドン会議と国連の諸原則の双方を擁護する点で、中国によるこの失態は王毅が言及した第2の点で説明可能だろうか? その第2点は、「NATOの5回におよぶ東方拡大を前提とした時、ロシアの正当な安全保障の要求は真剣に、また適切に扱われるべきだ」と読める。
 これは明らかに説得力に欠ける。NATOの拡張それ自体は不公正だ。それはソ連邦崩壊後ずっと前に自ら解体していなければならなかった。それでもロシアには、NATOの失策への対抗としてウクライナに侵略する権利など全くない。それは帝国主義者の言葉、「力こそ正義」の教義であり、国連憲章からしても不当である。真の社会主義の立場ではなおさらそう言える。
 そしてそれは、ロシア帝国の長期的利益からみても逆効果だ。恒久的に帝国を維持しようとするのであれば、軍事力だけでなく、ある種の文化的なヘゲモニーを発展させなければならない。しかしこれは、プーチンにはできないと思われる類のことだ。彼の軍隊がウクライナで泥沼に沈められた後、何者かがオンライン上の画像を作成した。それは、「プーチンの致命的な失敗は、自由な民衆を解放するために奴隷を送り込んだことだ」との言葉を添えて、剣をふるう戦士と見える戯画を示すものだった。
 この画像は言い過ぎの面もあるが、ウクライナ人だけではなく、世界中の人々の感情をも掴んでいる。自由民主主義が内包するあらゆる欠陥にもかかわらず、独裁全般と、特にそのプーチン版と比べた時、それはよりマシな悪なのだ。EUにはそれ自身のオリガルヒがいる。しかしEUは、活発に抵抗する社会運動の存在も大目に見なければならない。
 対照的にプーチンと彼のオリガルヒは、あらゆる制約から自由であり、それゆえ彼のゴロツキどもは驚くような短期のうちにこの国を上首尾に略奪できた。しかしこれには代償が伴う。
 プーチンは今、抗議行動と選挙を通して専制者の首を何度も挿げ替えてきた主権国家を侵略中だ。この対照性は彼の体制の正統性を巨大な規模で掘り崩している。そしてそれがロシアの隣国であり、ロシアとの間でまさに長く内的に絡み合った関係をもつ国であれば、二重にそうなる。なるほど彼の侵略は、ウクライナからの抵抗だけではなく、世界中の民衆内部での強力な抵抗の引き金を引いている。侵略が泥沼にはまればそれだけ、ロシアにとっての危険も高まる。

習とプーチンにある種の共鳴

 習とプーチンが彼らの「タブーなきパートナーシップ」を打ち固めるために会談を行った、北京冬季オリンピックから1ヵ月も経たないうちにおこなわれたロシアの侵略は、北京にとってはやはり限界がある、ということを明かした。北京は現在まで、強力な精神的支持を与えているとはいえ、プーチンの戦争との関係では事実上中立を保ってきた。そしてロシアを批判する国連の投票では棄権してきた。その諸々の銀行はロシアに対する制裁にしたがってさえいる。
 北京がロシアのパートナーの戦争行為に対する直接支援を控えているとすれば、それは唯一そのプラグマチズムが理由だ。中国はずっと以前にグローバル資本主義に統合され、それゆえ西側からの警告を真剣に受け取らざるをえないのだ。しかしながら長期的にはこれも変わるかもしれない。核心的価値という点で、北京は今、国民国家に関するプーチンの考え方を、および彼らの周辺に沿った小さな諸国に対する傲慢さも、共有しているからだ。NATOが悪だとしても、中国とロシアの現政府間パートナーシップはいずれも、それよりも良いものにはならないだろう。
 プーチンは彼の2回の演説(第1は昨年7月、次は今年2月)で、ウクライナを含んだマイノリティの自決権に関するレーニンとボルシェビキ党の立場を、「ロシア人とウクライナ人はひとつの人民―単一の全体」という原理を裏切ったとして攻撃した。彼の2回目の演説では、ウクライナの独立を容認することはボルシェビキにとって、「多くの場合彼らとまったく関係のなかった巨大な領域を、新たに形成された、そしてしばしば恣意的に形成された統治諸機構――連邦の諸共和国――に渡すこと」だった、と力説した。

プーチン支持にはより深い根源


 われわれは、現在の国民国家すべては近年の人間による構築物であったという事実、そしてそれゆえさまざまな程度で「恣意的に形成され」ているという事実について、読者に講義する必要はない。中華民国と中華人民共和国(PRC)の双方とも、同じくこの類型に入る。それらは代わる代わる、「中華民族」という半ば虚構的な理念を共有した。そしてそこでは、人数だけではなく、国家のあらゆる領域と少数民族を犠牲にした社会的力でも、漢人が有力なのだ。
 中国共産党がかつて国民党と違ったところは、1921年の創立後の最初の20年間、それが、その後それを単に放棄しつつも、少数民族の自決権というボルシェビキの綱領を取り入れた、という事実にある。1949年に中華人民共和国が建国された時、共産党はチベットや新疆や他の多くの少数民族には自治を認めただけだった。そして少数民族はすぐさま、この「自治」が「政治的自治」ではなく、「行政的自治」(行政トップが少数民族出身というだけ)になる運命だと知った。その時以来、自決に関するレーニンの著述物の配布だけで弾圧された。チベット共産党の創立者であるプンツォク・ワンギャルは、この罪状と他の罪状あわせて20年間も投獄されたのである。
 思考するすべての中国人にとって、ツァーリスト・ロシアの継承者――プーチン政権――との「タブーなきパートナーシップ」など認めることはできないだろう。これを論じるだけで、かつてのロシア帝国主義の犠牲者になった中国人の歴史的な利益に対する裏切りだ。中国政府がこれを論じ始めたとすれば、それはただ、彼らもまた、帝国の建設というプーチンの考えを、それゆえ民族自決に関するあらゆる言及への憎悪を一層共有していることが理由だ。
 ごく最近の事例は、ウクライナ支持の署名キャンペーンに乗りだした大学生を攻撃した、香港の共産党系メディアだ。そこでは民族自決に対する学生らの支持を、「反中国かつ香港でトラブルを扇動する」ことと同一視している。
 だが、この攻撃はすぐさま論駁された。この署名キャンペーンの共同提案者があるエッセイの中で、「大学生は反中国でも反ロシアでもない。署名の呼びかけ文が語ったことは、抑圧を受けた者がどこにいるか――中国にかロシアにか、あるいはウクライナにか米国にか――に関係なく、権力をもつ者によって抑圧された人々すべてと共にある、ということだ」と書いたのだ。そしてこのエッセイはさらに、中国共産党がかつて民族自決をどのように支持し、その後どのように裏切ったかに言及している。
 なるほどこの党は、未来もひきつづき支配を確保するため、定期的に党の過去を改ざんしなければならないようだ。まさにジョージ・オーウェルが描いた予言どおりである。(「アンティキャピタリスト・レジスタンス」2022年3月20日より)(「インターナショナルビューポイント」2020年3月22日)

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