対ウクライナ戦争はアフリカにとっても惨事
ポール・マーシャル
プーチンの軍によるウクライナ侵略はアフリカに対しても諸結果を及ぼすだろう。もっとも明白な危険は、この大陸を正面から襲う危険がある経済的危機と食料危機だ。この侵略はさらに、特にアフリカのフランスの裏庭における政治的な離反にも光を当てている。それは、アフリカにおけるフランスの弱体化を例証している。
ロシア糾弾への
抵抗感が表面化
「マダガスカル・トリビューン」のサイトが指摘するように、アノシー(マダガスカルにある22地域のひとつ)の大統領官邸では、ロシアと西側の外交使節による間断ない謁見儀式があった(注)。その目的は、ウクライナ侵略糾弾に関する3月2日の国連総会投票に際して、マダガスカルに影響力を行使しようとすることだった。最終的にこの大きな島嶼国は、棄権した17のアフリカ諸国に加わった。マリと中央アフリカ共和国は、今それらの指導的な軍事的パートナーであるロシアに対し糾弾を拒否するだろうと予想されたものの、もっと驚きだったことは、セネガル、トーゴ、カメルーン、またコンゴ共和国の同じ方向での投票であり、ブルキナファソとギニアの投票不参加だった。これらの諸国は伝統的に、元の植民地宗主国であるフランスとは共生関係にあったのだ。フランス外交の軍事部門と見られていたラ・フランコフォーニー国際機関(OIF)の場合は、ひとつの立場をとることを拒否した。
西側には
うんざり
この大陸上にある諸国の半数がロシア糾弾を拒否しているという事実は、西側に対するある種の怒りを明らかにしている。ある者はNATOへの仕返しについてすら話している。そのNATOは、確かに強奪されたものだがまったく実体があったある種の人気から利益を受けたカダフィ体制を打倒するために、リビアを攻撃したのだった。
そして、スーダン、エチオピア、カメルーンの同じほどに人命を奪う戦争に対しては一度も向けられたことのないウクライナに対する相当な決起、を見るのもいらだたしい。ある者にとっては、米国とEUの力に刃向かうことができるひとりの男を見るのも、一種の満足になる。その上に、ウクライナからのアフリカとアジアの避難民に対する扱いに際した恥ずべきふるまい、またウクライナ人と他の避難民間における差のある受け入れが、欧州内のあからさまなレイシズムを見せつけることになった。
これが、特に多くの諸国が現在、ロシアと西側諸国双方と商業的関係と軍事的関係を維持しているか、そうする準備をしている以上、何人かのアフリカの指導者たちがいかにして彼らの民衆の感情から離れなかったか、を説明するものだ。
大飢饉の
リスクが
これは極めてふさわしいある種の慎重さを示している。諸々の経済的危機がこの大陸を厳しく襲いそうにあるからだ。すでにアフリカ経済は、コヴィッド19に結びついた公衆衛生危機から浮き上がろうと闘っている最中だ。天然資源需要の低下となる世界的需要の後退、観光における事実上の途絶、グローバル・バリュー・チェーンの弱体化、FDI(外国直接投資)における40%近い縮小が、アフリカ諸国の経済的健康を弱めてきたのだ。
プーチンが引き起こした戦争は、たとえ差があるとしても、全アフリカ諸国に対し諸々の結末をもたらすだろう。ナイジェリア、アンゴラ、アルジェリアのような原油と天然ガスの産出国は、価格上昇から利益を得るだろう。しかしそれらも、すぐさま農産品不足によって襲いかかられる危険がある。それらの国が食料品の大輸入国だからだ。
他の農業志向アフリカ諸国は、エネルギー価格の極度に大きな上昇から影響を受けるだろう。いずれにしろこの大陸諸国における財政の弱さを前提とすれば、住民にとって影響は暴力的なものになりそうだ。
早くも国連食糧農業機関(FAO)は、アフリカの30ヵ国以上がすでに食料の緊張状態にある、と指摘している。その原因は積み重なっている。それらは、中央アフリカ共和国、ニジェール、チャド、コンゴ民主共和国(DRC)東部、エチオピア、南スーダンにおけるような、諸々の紛争であるかもしれない。気候の攪乱が干ばつ――これがケニア、ソマリア、マダガスカル南部の場合だ――に、またブルンジ、ジブチ、コンゴにおけるような猛烈な降雨、あるいはマダガスカル東部やモザンビークが経験したようなサイクロンへと導いている。
国連世界食糧計画(WFP)は、多くの国にとっての4月の食料ストレス状況に関し警報を鳴らした。プーチンが始めた戦争による今日の危機は、アフリカの場合大規模な飢饉である。(週刊「アンティカピタリスト」からIVが英訳)
▼筆者はIV通信員。「アフリク・アン・リュット」編集者であると共にフランスの第4インターナショナルメンバー。
(注)「ロシアのウクライナ侵略を糾弾するようマダガスカルが求められている?」、madagasucar-tribune.com、2022年3月1日。(「インターナショナルビューポイント」2022年3月23日)
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