6つの結論的回答 ウクライナでの戦争における今日の根底的反帝国主義とは
帝国主義の侵略を拒絶する民衆への支援を
ジルベール・アシュカル
質問1
「グローバルサウス」は今なおロシアを支持しているのか?
以下は、「覚書:ウクライナにおける戦争に関する反帝国主義者の基本的立場について」(本紙3月7日6面参照)に関連した6つの質問だ。
事実を見てみよう。これまでも対照的な立場が諸々あったグローバルサウスの左翼をまずよく考えよう。私の出身地である世界のアラビア語の地では、ロシアの侵略をこれまでに支持した左翼政党は、ロシアの保護を受けたバシャル・アルアサドの血に飢えた体制を支持した諸政党にすぎない。この地域の主要なふたつの共産党、イラクとスーダンの党は、他方で米帝国主義の政策をも非難(当然のこととして)しつつ、きっぱりとロシアの侵略を糾弾した。スーダン共産党はその声明の中で、帝国主義諸勢力間の対立を強く非難した後で、「ロシアのウクライナ侵略を糾弾し、この国からのロシア軍部隊の即時撤退を求める。他方、緊張と戦争を扇動し、世界の平和と安全を脅かしている政策の、米国主導の帝国主義連合による継続を糾弾する」と述べている。スーダン共産党は、ロシアの帝国主義に関する真実を知る上では十分な位置にいる。何しろロシアは諸大国の中で、彼らの国のクーデター実行者を公然と支持している唯一の国なのだ。
グローバルサウス諸国に関しては、ロシアの侵略を糾弾する国連総会の票決で、そのうち35ヵ国が棄権した。グローバルノースに位置するすべての国家は、決議支持(すべてが西側かそことの連携諸国)か、反対(ロシア自身とベラルーシ)か、のどちらかだった。しかしながら、同決議に支持票を投じた141ヵ国の中に、同じグローバルサウスの国が上記の35ヵ国をはるかに超える数でいた、ということを理解する上では大変な洞察力などいらない。
したがって、この票決は、「北南分裂」ではなく、一方の西側帝国主義の顧客あるいは友達、他方のロシア帝国主義の顧客あるいは友達、この両者間の分裂だ。そして、後者のほとんどが同時に西側帝国主義の顧客あるいは友達である以上それらは、決議に反対投票した5ヵ国にそれらの票を加えるよりも棄権の方を好んだ。ちなみにその5ヵ国とは、前述の2ヵ国に加えて、北朝鮮、シリア、エリトリアだ。
グローバルサウスに位置づけられているふたつのもっとも人口の多い国、つまり中国とファシストのナレンドラ・モディのインド政府がロシアに親しみを見せた、というのは事実だ。ちなみに中国それ自身は、その帝国主義的性格に関し論争の対象であり、それは、諸政策における北南図式がどれほど単純かを示している。
しかしわれわれは、国連決議支持の票を投じた諸国内部に、AMLOのメキシコ、タリバンのアフガニスタン、ボルソナロ(それでもプーチンの称賛者)のブラジル、将軍連のミャンマー(北京に守られている)、さらにドゥテルテのフィリピンがいることに気づいている。
質問2
ウクライナのロシアに対する持ちこたえはNATOを利さないだろうか?
最初に言うべきことは、「それがどうした?」だ。帝国主義と闘っている人々に対するわれわれの支持は、帝国主義のどちら側が彼らを支持しているか、に依存するべきではないだろう。そうでなければ、同じ論理によって、ある者たちがネオ陣営主義の偽左翼界隈で論じているように、「西側ブロック」に対する至高の闘いに対し、正義は犠牲にされなければならないだろう。
私の場合私は、ロシアの成功――残念だが依然として本物の可能性にとどまっている結果――は、「彼らの侵略的行為を継続するよう、米帝国主義自身とその連携者を大胆にするだろう」と書いた。実際米国とその西側連携勢力は、プーチンの行動からすでに多大な利益を得ている。彼らはロシアの独裁者に大いに感謝しているはずだ。
ロシアの上首尾のウクライナ接収は、世界の新植民地主義的分割の激化、および地球的敵対の悪化という流れの中で、米国が力による世界征服という道に戻るよう鼓舞すると思われる。他方ロシアの敗北――イラクとアフガニスタンでの米国の敗北に加えて――は、ワシントンの中で「ベトナムシンドローム」と呼ばれているものを強化するだろう。
その上、私には明白であるように見えることは、ロシアの勝利はNATO諸国内での軍事支出増大への道と好戦化を相当程度強化すると思われる、ということだ。そしてそれはすでに、ロケットスタートを始めている。他方ロシアの敗北は、全般的軍縮とNATO解体を求めるわれわれの闘いに、はるかにより良好な条件を提供するだろう。
もしもウクライナがロシアのくびきの拒絶に成功することがあるとしても、ウクライナは西側諸大国に従属化されると思われる、ということはありそうなこと以上のことだ。しかし肝心なことは、ウクライナがロシアへの服属を拒絶できないならば、ウクライナはロシアの農奴にされるだろう、ということだ。そして読者は、従属の条件は農奴の条件よりも比較できないほどに好ましい、ということを分かるためには、資格のある中世研究者である必要はないのだ。
質問3
右翼ブルジョア政府に率いられた抵抗を、根底的反帝国主義者はどのように支持することができるか?
われわれは、重武装の帝国主義者の侵略に抵抗している民衆を、その抵抗が共産主義者によって、またブルジョア政府によってではなく率いられている場合にのみ支持すべきだろうか? これは、民族問題に関する非常に古いウルトラ左翼の立場だ。正しくもレーニンはそれと彼の時代に闘った。民族的抑圧への正義の闘いは、外国の侵略は言うにおよばず、その指導部の性格にかかわらず支持されなければならない。この闘争が正義であるならばそれは、関係する住民がそれに精力的に参加し、その指導部の性格とは無関係に支持に値する、ということを意味しているのだ。
即製の国民防衛隊や新しいスタイルの「火焔瓶作成隊」の形態でウクライナ軍諸部隊と共に大挙して決起を続けているのは、確実に、ウクライナの資本家たちではなく、ウクライナの勤労民衆だ。そしてウクライナの民衆は、この地球上で最も不平等な国のひとつの運命を統御しているモスクワの専制的かつ寡頭支配の超反動政府が率いる、大ロシア帝国主義に対する彼らの闘いにおいて、われわれの全面的な支援に値する。これは確かに、キエフ政府をわれわれが批判してはならない、ということを意味するわけではない。
質問4
進行中の戦争は帝国主義間戦争ではないのか?
各々の側が競合する帝国主義によって支援されている戦争すべてが帝国主義間戦争ともしも呼ばれることがあるとすれば、その時われわれの時代の戦争すべては帝国主義間戦争になるだろう。そうした呼称は一般に、競合する帝国主義が一方を支援し、他方が反対側を支援するだけで十分だからだ。
帝国主義間戦争とはそういうものではない。それは、第一次世界大戦が非常に鮮明であったように、各々が他の領土と(ネオ)植民地領域の侵略をめざす2大国間の、代理人によるものではない、直接の戦争だ。それは、レーニンがそう呼ぶのを好んだ、両側での「強奪戦争」だ。
ウクライナの中の紛争を記述するために、そしてその紛争では、後者の国にはロシア領土奪取の、意図は無論として何の野心もなく、しかしロシアにはウクライナを服属させその領土の多くを奪取する言明済みの意図があるのだが、これを帝国主義侵略戦争と言うよりも帝国主義間対立と呼ぶことは、現実の極度のねじ曲げになる。
したがって、ウクライナへの武器供給における第一段的な、もっとも直接的な機能は、他方でウクライナが自由の唯一の保証との確信の下にその従属化を願うとしても、その農奴化への反対を助けることだ。もちろんわれわれは、その従属化にも反対しなければならない。しかしさし当たり、もっとも差し迫った必要に取り組まなければならない。
もちろん、他の帝国主義陣営の戦争への直接参入は、現在の諸対立を本物の、概念の正しい意味における、われわれが断固として敵対する、帝国主義間戦争へと転換するだろう。今のところNATOメンバー諸国は、ウクライナの土地でロシア軍部隊と戦うために部隊を送るという、あるいはウクライナ空域でロシア航空機を打ち落とすという、後者に関するゼレンスキーの熱心な求めにもかかわらず、その禁止線を越えるつもりはないと明言し続けている。これは彼らが、最初から核の脅迫を振り回すことを躊躇しなかったプーチンの合理性について懐疑的になるにしたがって、致命的なスパイラルを正しくも恐れているからだ。
質問5
われわれは、ウクライナへの西側による武器引き渡しを支持できるのか?
ロシアの侵略と対決するウクライナ人の戦闘が正義である以上、数と武装ではるかに上回っている敵から彼らが自らを守るのを助けることはまったく正しい。これこそが、われわれが躊躇せずにウクライナ人の抵抗に対する防御的武器の引き渡しを支持する理由だ。しかしこれは何を意味するのだろうか?
一例だが、われわれは確かに、携帯や他の形式の対空ミサイル引き渡しに賛成だ。それに反対することは、ウクライナ人には二者択一の選択しかない、と言うことだと思われる。一方では、自らを守るために必要な手段がないままに、ロシアの空軍によって虐殺され、彼らの町が破壊されるのを見ること、他方では彼らの国を逃れること、この間の二者択一だ。
しかしながらわれわれは同時に、ウクライナあるいはその一部上空に飛行禁止ゾーンを設定するという、無責任な考えに反対しなければならないだけではない。つまりわれわれは、ゼレンスキーがこの間要求し続けてきたウクライナへの戦闘機引き渡しにも反対しなければならない。戦闘機は厳密な防御兵器ではない。そしてそのウクライナへの供給は、ロシアの爆撃を一層激しくする現実の危険を相当に高めるだろう。
つまりわれわれは、対空、対戦車兵器の、また領土防衛に不可欠な武装すべてのウクライナに対する供与を支持する。これらの引き渡しをウクライナ人に否定することは単純に、危険の中にいる民衆を助けることの不履行という罪を負う! われわれは過去、シリア反政府派へのそうした防衛用武器の引き渡しを求めて声を上げたことがある。米国は、部分的にはイスラエルの拒否を理由に、当地の連携勢力がシリア人にそれらを渡すことを拒否し、それを邪魔することまで行った。われわれはその結果が何であったかを知っている。
質問6
ロシアに課された西側の制裁に対するわれわれの姿勢はどうあるべきか?
それは私の覚え書きに書いた通りだ。付言すれば次のようになる。
西側諸大国はウクライナ侵略を理由に、ロシアに対する新たな制裁のひとそろい全体を決定してきた。それらのいくつかは実際に、その戦争機構に資金を回すプーチンの専制体制の能力を削ぐかもしれない。他のものは、体制やその寡頭支配層の取り巻きには大した影響を与えずに、ロシアの住民に害となるかもしれない。西側帝国主義諸政府に対するわれわれの不信と組になったロシアの侵略に対するわれわれの反対が意味することは、われわれは後者の制裁を支持すべきではないが、またそれらの解除を求めるべきでもない、ということだ。
これを言い換えるもうひとつのやり方は、われわれはロシアの戦争遂行能力とそのオリガルヒを脅かす制裁を支持するが、住民を脅かすものは支持しない、ということだ。後者の定式は原理としては正しい。しかしそれはさらに正しく言い直されなければならないだろう。しかしながらわれわれには、ロシアに対し西側諸国がすでに課した制裁の全範囲による影響を検証する手段がない。そしてそれこそが、われわれはこの制裁を支持すべきではないが、ロシアの犯罪的な侵略が進行する限りその解除も求めるべきではない、と私が提案する理由だ。(2022年3月19日、「ニューポリティクス」より)(「インターナショナルビューポイント」2022年3月21日)
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