ウクライナ ロシア帝国主義との対決を
大目に見ることは恐るべき間違い
ロシア社会主義運動(RSD)/ソツィアルニー・ルク
戦争が始まって以来左翼は、戦争に対するNATOの責任の程度、およびウクライナに対する軍事援助要求、という問題に取り組んできた。ロシア社会主義運動のわれわれの同志によってわれわれに送られた以下の声明を掲載するに当たって、われわれは、この問題に関する多数の亀裂を自覚している。
われわれすべては、その名に値するどのような左翼も、ウクライナへのロシアの侵略をきっぱりと糾弾しなければならない、という点で一致している。しかし、「レフトイースト」編集委員会メンバーの一定数は、NATOおよびウクライナへの軍事援助に関するこの声明の立場については保留を表明した。同時にわれわれは、左翼の多様な政治的形勢、具体的な状況と戦略が、これらもっと論争を呼ぶふたつの点に関し、異なった見方に結果している、ということを理解している。そこでの多様さとは、プーチンの爆撃下にあるウクライナにいるのか、プーチンの迫害下のロシアにいるのか、戦争応援団がそれ自身の設定課題を推進中の西側にいるのか、あるいは主な敵が異なり、西側の偽善が露わなグローバルサウスにいるのか、といったことだ。
戦争の始まりに際して「レフトイースト」は自らの声明を公表し、そこでわれわれは、われわれ自身の考えをはっきりさせようと努めた。そうであってもわれわれの主な使命は、地域の進歩諸勢力との連帯に向けひとつのプラットホームを提供することだ。われわれはこの精神で以下の声明を掲載する。(「レフトイースト」編集者)
ロシア帝国主義
支える民族主義
左翼の多数派はウクライナに対するロシアの侵略を糾弾してきたとはいえ、左翼陣営の統一は依然欠けている。われわれは、この戦争を帝国主義間戦争と見る「双方の母国にある疾病」の立場に今もこだわっている左翼の人々に声をかけたいと思う。
今は、左翼が目覚め、冷戦に発するすり切れた枠組みを再度もち出す代わりに、「具体的な情勢の具体的な分析」を実行する時だ。ロシア帝国主義を大目に見ることは、左翼にとって恐るべき間違いになる。ウクライナで戦争を行っているのはプーチンであり、NATOではないのだ。それこそが、われわれの焦点を西側帝国主義からプーチンの侵略的な帝国主義へと移すことが基本である理由だ。そして後者には、経済的根拠に加え、思想的根拠と政治的根拠もある。
ロシア帝国主義は、ふたつの要素から構成されている。まずそれは、修正主義的ロシア民族主義を意味している。2012年以後、プーチンと彼の既成エリートは、国民の市民的概念(「ロシアと関連づけられた」ロッシスキー)から、排他的、民族的な基礎をもつロシア人性の概念(「民族的/文化的なロシア人」であるルスキーとして)へと移行した。2014年と2022年の彼の侵攻は、「元々の」ロシアの大地を取り戻すこととして正統化された。
その上(民族的な)「ロシア人性」というこの概念は、ロシアという国に関する19世紀の帝国観念を生き返らせている。そしてそれが、ウクライナとベラルーシの独自性を地方的な特性に切り縮めている。この観点に従えば、ロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人は単一の人民だ。公式の言い回しとしてこの観念を使うことは、ウクライナの独立した国家の地位の否認を意味する。
われわれが、プーチンはクリミアとドンバスに関するロシアの主権の認知を求めているにすぎないなどとは、確信度合いがいかなるものであれ言うことができないのはこの理由からだ。プーチンは、ウクライナ全土の併合か服属のどちらかを切望している可能性がある。それは、「ロシア人とウクライナ人の歴史的統一について」という彼の論文の中に、また今年2月21日の彼の演説に現れている怖れだ。
最後に、ウクライナ―ロシア和平対話の見通しはむしろ厳しいように見える。ロシアの交渉団が前文化相のウラジーミル・メディンスキーに率いられているからであり、彼がルスキー・ミール(民族的なロシアの世界)――確かに、誰もが幸福にならない世界――というイデオロギーにもっとも傾倒した信者のひとりだからだ。
プーチンの切望
世界秩序の変更
第2に、ロシアの侵略を合理的に説明することは難しいとはいえ、現在の諸々のできごとは、そうであってもそれは、ロシア帝国主義者の言語表現を額面通りに受け取れば、十分に合理的かもしれない、とはっきり明らかにした。ロシア帝国主義は、いわゆる「世界秩序」を変えようとの切望によって駆り立てられている。こうして、東欧からのNATO撤退というプーチンの要求は、ロシアはウクライナで止まらないかもしれない、またポーランド、ラトビア、リトアニア、あるいはエストニアがプーチンの侵略で次の標的になるかもしれない、との合図であるかもしれないのだ。
東欧の非軍事化を要求することはウブすぎるのだ。現在の諸環境に照らせば、それはプーチンを喜ばせることになるだけであり、東欧諸国をプーチンの侵略に対し脆弱にするだけだからだ。NATO拡大に関する議論は、欧州における影響圏を米国とロシア間で分割しようとのプーチンの切望をぼやけさせている。
ロシアの影響圏にあるということが意味するのは、その国のロシアへの政治的従属であり、ロシア資本の拡張に対する服従なのだ。ジョージアとウクライナの事例は、プーチンには、ロシアの影響圏から出ようと願っていると彼が信じた国の政治的問題に影響力を行使するために、力を使う用意ができている、とはっきり示した。重要なことは、世界秩序において鍵になる設定課題に対するプーチンの理解は、基本的に米国と中国に限定されている、と理解することだ。彼は他の諸国の主権を認めず、それらの国を、国際秩序における先述したような代理人のひとつの衛星国、とみなしている。
プーチンと彼の既成エリートは非常に冷笑的だ。彼らは、ウクライナに対する爆撃を擁護する楯として、NATOによるユーゴスラビア爆撃、米国によるアフガニスタン侵略とイラク侵略、を利用している。こうした脈絡の中で、左翼は首尾一貫性を示さなければならず、世界における帝国主義の侵略すべてにノーを言わなければならない。今日、帝国主義的侵略者はロシアであり、NATOではない。そしてロシアがウクライナで止められないならば、それは確実にその侵略を続けるだろう。
さらにわれわれは、プーチンの体制にいかなる幻想も持ってはならない。それは西側の資本主義に対するオルタナティブを何ひとつ提供しない。それは、権威主義的で寡頭支配の資本主義なのだ。ロシア内の不平等水準は彼の指導下にあった20年の間に相当に上昇している。プーチンは労働者階級の敵であるにとどまらず、民主主義のあらゆる形態に対する敵でもある。ロシアでは、政治への民衆的参加や自発的な団体は疑いをもって扱われる。プーチンは本質的に反共産主義者であり、左翼が20世紀にそのために闘った、そして21世紀に今闘争中のすべて、に対する敵なのだ。
彼の世界観では、強者には弱者を打ち負かす権利があり、豊かな者には貧しい者を搾取する権利があり、権力を握る豪腕の者たちには力を奪われた彼らの住民に代わって決定する権利がある。この世界観には、ウクライナで厳しい一撃が与えられるべきだ。ロシア内に生じる政治的変化のためにも、ロシア軍はウクライナで敗北を喫しなければならない。
EUの武器多数
ロシアは既に確保
われわれは高度に議論のある要求、ウクライナへの軍事援助という要求を扱いたい。われわれは、世界中の進歩的な運動、およびNATO拡張や西側の介入に対する左翼の抵抗、に対する軍国主義化のはね返りを理解している。しかしながら、もっと完全な構図を明らかにするためにはさらに多くのつながりが必要とされる。
何よりもまずNATO諸国は、2014年の禁輸にもかかわらず、ロシアに兵器類を提供した(フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、ブルガリア、チェコ共和国、クロアチア、スロバキア、そしてスペイン)。こうして、この地域に送られた兵器が最終的に届いたのが正しい者へか、間違った者へかに関する討論は、少しばかり時期を失しているように聞こえる。
それらはすでに悪者の手中にあり、EU諸国はウクライナに武器を提供することで単に、彼らの以前の間違いを今修正しているにすぎないと思われるのだ。その上、ウクライナ政府が提案した代わりの安全保障は、一定数の諸国の関与を要し、おそらくまた、それらの関与があって始めて達成可能でもある。
第2に、多くの論評がこれまで強調してきたように、アゾフ連隊がひとつの問題だ。しかしながら、2014年の時とは異なり、極右は今日の戦争では今目立った役割を果たしていない。それは人民戦争になったのだ。そして、ウクライナ、ロシア、ベラルーシの反権威主義左翼は帝国主義に反対して共に闘争中だ。
ロシアは今、この数日にはっきりしたように、地上でのその敗北を空からの攻撃で埋め合わせようと試みている最中だ。対空防衛はアゾフにはどのような追加的な力も与えないだろうが、ウクライナがその領土に対する支配を維持するのを、また交渉が失敗しても市民の死を減らすのを助けるだろう。
EUの武器多数
ロシアは既に確保
われわれの見解では、左翼は以下のことを要求しなければならない。
◦ロシア軍部隊のウクライナからの即時撤退。
◦プーチンと彼の百万長者どもに対し、新たに的を絞った個人的制裁(重要なことは、プーチンと彼の既成エリートは彼ら自身の私的な財産しか気にかけていない、ということを理解することだ。彼らは明らかにロシア経済全体を忘れている。左翼はまた、プーチン体制と軍を過去後援し、今でさえロシアに武器を売り続けている者たちの偽善を曝露するためにも、この要求を利用できる)。
◦ロシアの原油と天然ガスに対する制裁。
◦ウクライナに対する軍事支援の引き上げ、特に防空システムの供与。
◦緑の回廊の保護や原発の防護を含んだ、市民を防護するための非NATO諸国からなる国連平和維持部隊の導入(国連安全保障理事会におけるロシアの拒否権は、総会で克服される可能性がある)。
左翼はまた、抵抗を続けているウクライナの左翼を、彼らに可視性を与え、彼らの訴えを中心に置き、彼らを財政的にも支えることで、支援しなければならない。われわれは、抵抗をさらに可能にしている者たちが、ウクライナの何百万人にもなるエッセンシャルワーカーであり、人道援助のボランティアである、と認めている。
一定数の他の要求――市民権に関係なく欧州内での難民すべてに対する支援、ウクライナの対外債務の帳消し、ロシア人オリガルヒに対する制裁など――は、左翼の側では幅広く受け入れられている。したがってわれわれはここでそれらを議論しない。
ロシアのウクライナ侵略は、核戦争の危険を伴う紛争の解決に向けて、恐るべき先例を出している。これこそが、国際関係のわれわれ自身のビジョン、多国間の核兵器放棄(核大国すべてに対し拘束的になる)を含むかもしれない国際的な安全保障組織、そして世界におけるあらゆる帝国主義的侵略への国際的な経済的対応の制度化に基づいて、左翼が登場しなければならない理由だ。ロシアの軍事的敗北は、地球の秩序の民主化と国際的な安全保障システムの形成に向けた第1歩でなければならず、世界の左翼はこの大義に向け貢献しなければならない。(「レフトイースト」より)
▼ロシア社会主義運動は、第4インターナショナルロシア支部である社会主義運動プペリョード(「前進」)とソーシャリスト・レジスタンスの2組織により2011年に創立された。
▼ソツィアルニー・ルク(ウクライナ社会運動)は2015年に創立された。(「インターナショナルビューポイント」2022年4月9日)
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