インド 矛盾が深刻化するにつれマイノリティ攻撃が激化
エティエンヌ・ブリデル
2014年以後のインド首相であるナレンドラ・モディは、ヒンドゥー主義極右の主要政党のBJP(インド人民党)を率いているが、新自由主義的かつ権威主義的政策を実行し続けている。そしてその結果は、インド民衆にとってますます深刻になっている。中国およびパキスタンとの間で高まり続ける軍事的緊張、2020年秋と冬におけるパンジャブとハリアナの農民によるニューデリー封鎖のような大規模な社会的反乱、汚染やますます統制不能になっている気候変動に対する全面的な無関心、その他がその結果だ。
これらの脅威を前に政権は、ヒンドゥー教徒大衆の憤激を、宗教的マイノリティ、主にはキリスト教徒(2800万人)とムスリム(1億7000万人)のコミュニティに向けようと追求している。
対マイノリティ
攻撃の全面利用
ナレンドラ・モディは彼の権力到達のはじめ以来、ガウタム・アダニのようなもっとも強力なインドの資本家と結びついて、それらを通じて、彼の競合相手とはまったく比較にならない資金力とメディアの力を確保している。モディは、このかけがえのない支えのおかげで、インドの大ブルジョアジーに支援され、2014年以来インドの福祉国家の体系的な解体政策を実行し続けてきた。そしてその中で、労働者運動の獲得成果、また中小農民ブルジョアジー……人口の圧倒的多数派……の獲得成果を正面から攻撃してきた。
BJPは、そうした政策を広範な反乱を生み出すことなく実行するために、その仲間によって圧倒的な部分が支配された、ほとんどすべてのメディアの開けっぴろげな支援を当てにできている。しかしプロパガンダだけでは十分とはならないだろう。
モディは、中央権力への到達以来、またすでにそれ以前グジャラート州の知事として(2001年から2014年まで)、統治の一手段として大量虐殺を利用してきた。ムスリムのマイノリティに主に狙いを定めて、これらのテロリストの暴徒は、ほとんどの場合BJP民兵と警察部隊の共同で組織されている。
その最新例が4月16日、ジャハニプリであった。ここはニューデリーの主としてムスリムと貧困層の居住区だが、そこで、ヒンドゥー主義者の武装デモ隊と彼らを投石で追い払った住民間でいくつかの衝突が勃発した。2、3日後、北デリー市当局――BJPに率いられた――は、投石への報復として店から店を完全に破壊するためにブルドーザーを送り込んだ。
抵抗の気運があると疑われたムスリム居住区での家屋に対する体系的な取り壊しというこの行為は、極右が支配する多くの地域内に広がるようになった。それは、この国の人口が最大でもっとも貧困な地域であるウッタル・プラデシュ州の知事であるヨギ・アディティアスが、今彼の追随者たちから「ブルドーザー導師」とあだ名を付けられているほどになっている。
古い社会秩序の
強要に未来は?
ヒンドゥー主義者民兵の協力を受けた暴徒以上に、忌まわしい流言と差別的な諸方策の一組が、主にムスリムの、しかしまたキリスト教徒、いわゆる不可触カースト、低位カースト、その他のマイノリティを標的に利用され続けている。
極右はムスリムに関して系統的に、人口増加率が平均よりも相当に高いと強調している(それが次第に安定化する傾向にあるにもかかわらず)が、その方策は、それを「愛のジハード」(ムスリムの男とヒンドゥー教徒の若い女性の結婚)、および一夫多妻のせいにすることなのだ! 「大々的な置き換え」という幻影(ヒンドゥー教徒であるインド人の比率が2011年の80・5%に対し今は79・9%であることによって、それは日程に上っていることからはほど遠い)を振りかざしながら、民兵は今若い未婚の女性の道徳を監視しようと、公共の場を、特に大学の構内をパトロールしている。そしていくつかの州は、事実上異なる帰属間の結婚を不可能にする点まで規制を厳しくした。
この政権の人口統計的かつイスラム排撃の強迫観念は、唯一の主としてムスリム地域で、今やヒンドゥー教徒の「入植」に解放されているジャム・カシミール州の、2019年の自治の地位廃止をもって、はっきりした加速化を示すことになった。同時に、隣国(バングラデシュ、パキスタン)からのヒンドゥー教徒難民に市民権を解放する法が、何百万人ものムスリムインド人女性から政府が彼女たちの市民権を奪う好機になり、それは大規模なデモに導いた。これらのデモは、首都では約50人を殺害する反ムスリム大量虐殺によって抑え込まれた。
これらのヒンドゥー主義極右による見せつけるような力の誇示は、インドの住民を今も準備されているもっと大規模な虐殺をも受け入れるよう慣らすひとつの方法だ。しかしそれはまた、最貧困層でもある様々の被差別諸グループ(宗教的マイノリティ、低位カースト、民族的マイノリティ、その他)が疑いなくインド人口の多数を形成しているとしても、古代に起源をもつカースト制と家父長制の秩序を強化するという問題でもあるのだ!
このインド人口の多数は、まだ知られていない巨人的な勢力だが、しかしできごとの圧力の下で、インドの現在の支配者たちがそれに向けて準備中の宿命を逃れることも可能だと思われる。(2022年5月)
▼筆者は「ランティカピタリスト」(フランス反資本主義新党機関紙)向けに書いている。(「インターナショナルビューポイント」2022年5月9日)
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