米国11月中間選挙 共和党が大反動攻勢

ダン・ラボッツ

トランプによる
権力奪取の攻勢
 2021年1月6日の反乱に対する下院の調査、およびいくつかの州における犯罪捜査にもかかわらず、前大統領のドナルド・トランプは今なお共和党の指導者としてとどまり、その政策に対する強力な影響力を保っている。来る今年11月の予備選に対し、トランプは、これまでに下院と上院の共和党候補者130人への、また州知事や他の公職者に向け他の者たちへの承認を済ませた。
 それらを選ぶ際の彼のもっとも重要な基準は、彼らが彼と彼の主張を支持している、ということだ。そしてその主張とは、もちろん彼らが彼の右翼的な「米国を再び偉大に」政策をも支えなければならないとはいえ、2020年にバイデンではなく彼が大統領に選出された、というものなのだ。しかしもし議会調査が、あるいは犯罪事案がトランプを排除することになっても、他のトランプ同類の候補者、たとえばフロリダ州知事のロン・デサンティスが、同じ政治的課題設定に基づき2024年大統領選に立候補する用意を整えている。

レイシズムと
性差別の反動
 その間共和党の知事たちと諸々の州議会は、人種とジェンダーの諸課題を政治的立法と公衆的議論の中心に置くことで、来る予備選に準備を整えつつある。共和党議員たちは、今年これまでのところ30の州で中絶を厳格化するか事実上排除する諸々の法の提案にこぎ着け、また6州ではすでにそれを採択させた。とはいえこれらは、法廷でひっくり返される可能性もある。
 オクラホマ州法は、中絶の実行を10年の投獄で処罰可能な重罪にすると思われる。これらの法の多くは、最高裁がまもなく女性の中絶権を保護している連邦法の「ロー対ウェイド判決」(中絶を憲法に保障された権利、と判断:訳者)を逆転させる、との仮定に基づいている。民主党はそれに対抗して、他の多くの州で中絶権を保護する法を提案してきた。双方の党とも、中絶の課題を彼らの潜在的な支持者を動員する方法と見ている。
 共和党の議員たちはまた今年、238本の反LGBTQ+法を提案してきた。それらの半数はトランスジェンダーの人々を標的にしている。これらの法は、トランスの若者に対しジェンダー自認の健康管理を禁止あるいは犯罪とし、洗面所の利用を禁止し、トランスの学生の学校やスポーツへの参加を制限し、トランスの人々に対する宗教に基づく差別を容認し、彼らが彼らの名前とジェンダーによって身元確認文書を得ることをより難しくしている。
 共和党議員は、これらの法は子ども、両親の権利、また宗教的自由を保護することになる、と主張する。フロリダ州と他のいくつかの州は、公立学校教員がゲイを教えることから子どもを保護するとの想定の下に、「ゲイを語るな」法を採択した。この法は、公立の義務教育校および高校の生徒とゲイの課題を議論することを禁じている。
 有権者扇動のために計画された共和党による立法における第3の主要舞台は、公立学校における批判的人種理論(CRT)に関する教育の禁止だ。この理論は事実上、これまで学校では一度も教えられたことのない、レイシズムに関する精緻な法理だ。
 しかしそれは共和党議員にとって、レイシズムの周辺に触れることへの敵対を意味していた。彼らの主張では、その理論は、白人すべてはレイシストとの考えで、また白人の子どもたちに彼らが「恥」を感じるように仕向けるために、生徒を教化するよう利用され続けている、とされている。16の州はすでにそうした法を採択し、さらに19の州がそのような法を考慮中だ。
 共和党の反中絶、反LGBTQ+、反CRTの立法は、1960年代と1970年代の社会運動を敵視する、あらゆる社会階級の白人民衆内部にある継続的な反動を表現している。そして先の社会運動は、黒人やラティーノの人々、女性、そしてLGBTQの人々に進歩的な法の制定をもたらしたのだった。レイシズムと性差別が共和党の政策の核心にある。

白人の反動動員
が共和党の戦略
 共和党はもちろん、経済の課題でも民主党とバイデン大統領の対立候補として運動するだろう。そして現在インフレ率が8・5%であるこの課題は、イデオロギー色がより薄い無党派の有権者にうけるものだ。
 しかし彼らは今、彼らの支持者を動員し、2022年に議会の支配権を彼らに与え、2024年にトランプか彼に似た誰かを大統領職に戻すために、女性の権利、LGBTQの権利、黒人の権利への攻撃を頼りにし続けている。この数ヵ月間、これらの諸課題が地域の学校管理委員会、州議会、さらに支配的なメディアをかき回してきた。反動が成長し続けている。
  (2022年4月17日)  

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