イスラエル政治

パレスチナ/イスラエル
パレスチナ抹殺へさらに一歩

 7月1日、イスラエルのクネセト(国会)は、イスラエル国家の資金を受ける諸機関すべてで「敵の旗」の掲示を禁止しようとリクード党議員のエリ・コーエンが進めた法案について、予備読会を通過させた。1回目の読会の後、クネセトは賛成63票、反対16票でこの法案を支持した。この法案を進めることに対する口実は、今年5月のベン・グリオン大学でのパレスチナ国旗の掲揚だ。法案は第1に首相のナフタリ・ベネットによって、またイスラエル・ヤミナ(ベネットが代表の右翼政党連合:訳者)や「ニュー・ホープ」(中道右翼から右翼にまたがる:訳者)の諸党議員によって支持された。

露骨で悪らつな
レイシズム攻撃


 法案は「敵の旗」に言及しているが、明らかに言及されている唯一の旗はパレスチナのものだ。
 クネセトの投票の中でコーエンは、パレスチナ人議員のサミ・アブ・シェハデーを含むアラブ多数派共同リスト連合の法案反対派に対して、「ガザかヨルダンに行け」と力を込めた。彼は、「自らをパレスチナ人と見ている者たちは、ガザかヨルダンに移動するよう勧められる。私はその移動のための資金をあなたたちに約束する」と発言した。票決に先立ってコーエンは、似たような反パレスチナ感情を表し、「自身をパレスチナ人と見る者はすべて……、ガザへの片道切符のために必要な助けをわれわれから得るだろう」とも発言した。
 この法案は、主要な国際人権諸組織がイスラエルの行為に対する何年もかけた調査の結果を発表し、イスラエルが人道、アパルトヘイト、また迫害に対する罪を犯している、と見出したことを受けて登場している。
 法案は、法律になる前にさらに3回のクネセトでの票決を通らなければならない。しかしクネセトでの圧倒的な支持は、イスラエル内に暮らす、また占領されたパレスチナ領域中のパレスチナ人内部の、彼らの生活とパレスチナ人としてのアイデンティティにそれがどんな意味をもつ可能性があるかについての懸念、に火を着けることになった。

パレスチナ国旗
は双方が重要視


 パレスチナ国旗は、パレスチナの政治では比較的に新しいシンボルだ。それは、1960年になってはじめてPLOによって公式に取り入れられ、2015年になってようやく国連本部で初めて掲げられた。
 イスラエルがシナイ半島、ゴラン高原、ガザ、さらに西岸を軍事力で確保した1967年のナクサ(アラビア語で「後退」)の後、イスラエルの公式政治は、パレスチナ国旗の民族の色(赤、白、緑、黒)を禁じた。1980年代には、イスラエルの法作成者たちが、「政治的な意味」を含んでいると見られたアート作品を禁止した。イスラエルの軍と警察は、彼らのアート作品に旗の色を使ったとして、パレスチナ人アーチストを脅すまで進んだ。ポピーやスイカまで扇動やイスラエル法の侵犯と見られた。この法は、1993―4年のオスロ協定署名後に無効化されたものの、パレスチナ国旗とその色の犯罪視と没収はありふれた行為のままだった。

今回の動きの
今後への意味

 この法案は5月に行われたイスラエル国旗行進に関連して登場している。イスラエル人グループが「アラブ人に死を」や「あなたの村は燃えるかも」といったスローガンを唱和しながらエルサレム市街を行進したのだ。それは、昨年パレスチナ人敵視の大規模攻撃をさらに挑発し誇大に宣伝した同じスローガンだった。
 この法案を提起したエリ・コーエン議員はまた、クネセトでは最強のロビー団体のひとつである、「エレツ・イスラエルを求めるロビー」のメンバーでもある。このグループの主な目標は、占領した西岸と領域Cでイスラエル国家の拠点を強化すること、そして西岸内の違法なユダヤ人のみの入植地をイスラエル主権下の領域として含めることだ。
 パレスチナ人にとってこの法案は、彼らの旗に対する攻撃というだけではなく、パレスチナ人のアイデンティティを表す標章に対する継続的で体系的な攻撃の象徴でもある。この法案の潜在的にあり得る結末は、特にエルサレムのパレスチナ人とイスラエル市民権を持つ者たちにとっては実体的であり、そのパレスチナ人のアイデンティティこそ、イスラエルの人口統計上の懸念に対する脅威とみなされているのだ。
 この法案は、地域内のパレスチナ人の存在を抹消しようとのもうひとつのもくろみと見られている。国家が資金を提供している諸機関における旗の禁止は、大学を含むだけではなく、中でも文化的な諸施設にも伸びている。
 パレスチナ国旗への攻撃は、デジタル空間内のパレスチナのシンボルに対するさらなる弾圧の合図でもある可能性がある。2021年5月のパレスチナ人に対する大規模攻撃の間、パレスチナ人はソーシャルメディア上で、シャドー・バニング(ユーザーに簡単には見えないやり方で、ユーザーやその内容を遮断する:訳者)、検閲、パレスチナ人の証言や記録の消去、を目撃したのだった。(2022年6月9日、「モンドワイス」より)

▼筆者は、「モンドワイス」(米国を本拠として2006年に設立されたニュース・ウェブサイト:訳者)のパレスチナ主任通信員。(「インターナショナルビューポイント」2022年7月6日)

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