公衆衛生 コヴィッドとグローバルサウス:ナイジェリアの場合
グローバルノースの無責任今回も
現地女性の痛切な声
エミリア・ミクノヴィック
エミリア・ミクノヴィックは、ナイジェリアでONE(後掲筆者紹介参照)と共に事に進んで当たっているラフィアト・アタンダとツィグワイ・タグワイにインタビューした。彼女らは20代の専門職女性だ。この記事はもっと長い版から編集された。(IV編集者)
パンデミックは
終わっていない
この3月は、コヴィッド19は地球的なパンデミック、とのWHOの宣言から2周年に当たる。その時以来われわれは、われわれのもっとも傷つきやすい人びとを守るために、また世界を上向かせ再び動かすために、救命ツールやワクチンを開発してきた。
今諸政府は、基本的にパンデミックの終了を宣言しつつ、諸々の制限を緩めようとしている。英国は公式に、「コヴィッドと共に生きる」戦略を宣言し、英国をそうする最初の国にしている。欧州と北米の諸政府はすでに、2回目のブースター接種分を投与中だ。
科学界には、コヴィッド19を地方的感染(エンデミック)の疾病――マラリアや結核のような――として受け止めることを唱導する話題の浮上がある。しかしながらこの対照は、地方的感染症がグローバルノースでは管理可能であるとしても、グローバルサウスでは今なお猛威をふるっている、という状態を目立つものにしている。
たとえば4人の感染症専門家が『ザ・アトランティック』誌に手短に書いたこととして、「今『第3世界の疾病』と見られているマラリアや結核やエイズのような感染症は、かつて富裕な諸国で深刻な脅威だった。しかしこれらの疾病の発生率がそこで下降し始めると、グローバルノースはそのまま進み、新たなツールや計画への投資を減らした」。
研究は、深刻な疾病から人々を守る上でブースターが重要、と示している。それでも低所得国は、第1回目の接種を得るために今なお闘争中だ。現在、ワクチン接種を受けていない者の死亡率は、ブースター接種は受けていないがワクチンは受けた住民よりも、4倍から12倍高い。ワクチンを接種していない住民はさらに、将来の命の脅威になる変異株でも危険な状態にある。
貧困の中で生きている何百万人という個人にとって、パンデミックは終わりからはほど遠い。それ以上のこととして、コヴィッド19をエンデミックと考えるという決定は、グローバルノース内の富裕な諸国の指導者によって――それが今後周辺化された民衆にどのように影響を与え、人種とジェンダーの不平等を悪化させるか、を深く考えることなく――行われている。
いくつかの国が彼らの戦略をコヴィッド19と共に生きることに会わせる中で、裕福な国民は基本的にグローバルサウスを、彼らの住民と経済を守るために必要なツールとワクチンを欠いたまま、この高度な感染性をもつウイルスを相手に独力で何とかやっていくよう放置しようとしている。
現実は、コヴィッド19が世界をさらにもっと不平等にしている、というものだ。パンデミックがグローバルサウス内の不平等を悪化させたというだけではなく、女性もコヴィッド19による不釣り合いな悪影響を受けている。これは、ジェンダー平等に関する2030年持続可能な開発目標(SDG)に到達するアフリカ女性の可能性を低下させている。
女性への影響
特に重い負担
ナイジェリアでコミュニティ開発運動に取り組んでいるラフィアト・アタンダとツィグワイ・タグワイが、コヴィッド関連の公衆衛生ケアにおけるこれらの不平等が彼女らの国で女性に影響を与えてきた状態に関し、いくつかの識見を与えている。
以下が、パンデミックの厳しい諸結果に対するタグワイの概括だ。
「ナイジェリアは、コヴィッド19隔離、治療センター、病床、公衆衛生労働者、酸素や人工呼吸器といった決定的な装備、を限界のある数しか保有していない中で試練にさらされた。パンデミックは、コヴィッド19の死亡を最小化できず、疾病の広がりを抑制できなかった公衆衛生システムを圧倒した。パンデミックは、ナイジェリアの公衆衛生ケアの諸組織とシステムの脆弱性を露わにした」。
さらに、ナイジェリアの連邦政府は、先進諸国からワクチンを獲得することに頼った。それでも彼らは、グローバルノースが2回目のワクチン接種とブースター分を準備するためにワクチンを貯め込む中で、そうすることができなかった。
タグワイは、すべての国は人口の10%にワクチンを接種するというWHO設定の目標を、これまでにナイジェリアは達成できていない、と報告した。2022年2月25日時点で、ナイジェリア人の1760万人が1回目のワクチン接種を終えているが、2回目を終えたのは810万人だ。これが意味することは、ナイジェリアの2億600万人のうち4%しか完全なワクチン接種を受けていない、ということだ。
以下は、公衆衛生システムについてコメントしつつ、ラフィアト・アタンダが認めたことだ。
「一般的に言って、ナイジェリアの公衆衛生ケアは昏睡状態にある。病院の多くの装備は不十分であり、公衆衛生ケアの専門職への報酬は十分でない。ありがたいことに、明らかな理由(ナイジェリアで多様で稠密な人口をもつ州)から感染の中心だったラゴスのような州は、ウイルスの発生に対しまったく印象的に十分対応した」。
それでも、肯定的な政府の対応にもかかわらず、ワクチンを利用する術の欠落は、コヴィッドの作用がナイジェリアを、特に女性を悩ませ続ける、ということを意味する。
すなわち「ナイジェリアの女性は、パンデミックを通じて確実により多くの困難を抱えてきた。いくつかの公衆衛生センター同様、妊娠期間中のいくつかの経験を積んだ貧しい母親向けケアは利用できなかった。それらが隔離と治療のセンターに転換されたからだ。これは、母親と子ども双方への感染の危険をつくり出した」。
ツィグワイ・タグワイは、ナイジェリア女性の生活のあらゆる側面にあるジェンダー不平等は広がった、と付け加えた。
つまり「学校が再開するまで、ほぼ6ヵ月生徒が学校の外に留まらざるを得なかった中で、何人かの少女は性的虐待の犠牲者になり、妊娠し、学校に戻ることができなかった。われわれの元にはまた、家庭内暴力件数での上昇もある」。
「彼女らの家計を維持するために、あるいは個人的な発展のために、零細な商人であったり、中、小規模の事業からの所得に頼ったりしている一定数の女性は、制限とロックダウンの時期に巨額の損失状態に陥った。子どもと配偶者が一日中家にいなければならない中で、女性の家庭内雑仕事は倍化した。そして女性たちは家族の必要を満たし続けていた。同時にそれほど多く――職の喪失、商品価格上昇、家族への支援――に対処することで、何人かの女性のメンタルの健康は悪化した」。
彼女は、自身の隔離を通じて、仕事と社会生活双方の中でコヴィッドが彼女にも影響を与えたと説明した。彼女は、プロジェクト管理者として、アンドロイド携帯電話とラップトップを利用できたが、彼女のチームで他の者は不安定な電源しか確保していなかった。この意味は、個人的なやりとりでの自由闊達な発想交換がリモートでは困難と分かった、ということだ。
アフリカの
悲惨な実態
ラフィアト・アタンダは、タグワイのコメントを補強して、女性の身体的、メンタル的安全にパンデミックがまさにどれほど破局的になったか、を説明した。
「『パートナー・ウェスト・アフリカ』が編集した報告によれば、ロックダウン以来の軽犯罪関連の性とジェンダーに基づいた暴力は国中で言葉を失うほどのものだった。諸制限の結果として、女性たちはたちの悪いパートナーと長い時間を過ごすことを強制された。そして中でも一家の稼ぎ手は、毒気のある男らしさ誇示から形を変えられた攻撃に耐えた」。
多くのアフリカ諸国にとってパンデミックは終わりにほど遠い、ということを考えた時、エンデミックのコヴィッド19という扱いは、諸国民が今後共ウイルスの広がりを抑え込むための方策の中にあり続けなければならない、ということを意味するだろう。これは、もっと強力な公衆衛生システムの構築、また破局を回避するために必要な研究と受け身ではない能動的な監視をやり切ることのできるインフラの構築、を意味する。
何年にもわたって、ナイジェリアの公衆衛生ケア労働者にとっての労働環境は、困難なものとなっていた。最初にあるのは、貧しい報酬、安全保険の不在、安全に保証がないことが続いていることだ。労働条件は不十分であり、そこには、不安定な電力と水の供給に対処しなければならないこと、診断と治療のための適切な装備の欠落、が含まれる。これらの条件が、コヴィッドパンデミックでさらに悪化している。
ラフィアトは締めくくりとして、「これらのすべての結果として、貧困なサービス、そして与えられた責任を効果的にやり切れないこと、がある。そこに取り組まなければ、この公衆衛生システムは、エンデミックのコヴィッド19という扱いに耐えることはできない」と語った。
タグワイは、コヴィッド19パンデミック以前ですら、「ここで訓練を受けた医療専門職の巨大な損失(外国への移動)がこれまであった。そしてそれが、ナイジェリアの公衆衛生ケア内のすでに病んでいる職員配置構造に巨大な真空をつくり出している」と特に言及した。
アテンダはひとつのシナリオを概括した。
「非正規の労働者がコヴィッド19が理由で日々の活動をしっかりやることができないことを想像してみよう。経済が今後も苦しむだけではなく、暴動やパンデミックの新しい変種――ひとつのウイルスによってではなく食糧不安によって呼び寄せられた――も今後あり得るだろう」。
北だけは安全
はあり得ない
ナイジェリアの非正規労働部門はGDPの60%に寄与している。非正規労働者の家計を保護する公衆衛生の仕組みがなければ、感染爆発とロックダウンが起きる時、人々は自分で何とかやっていくよう取り残される。UNDP(国連開発計画)の新たな報告は、低所得国は経済回復がより厳しくなっていると今気づいている、と強調した。
公的債務が対処不可能なほど高いままにある中では、労働市場は回復できない。タグワイは、「エンデミックのコヴィッド19という扱いは世界にとって悲惨だ。今ある世界は相互につながり、全員が、すべてのところが安全になるまでは、誰ひとり安全でない」と強調する。
グローバルノースの諸政府が「エンデミックのコヴィッド19」という話を実践に移しつつある中で、われわれは同時に、ワクチン接種を受けていない、そして自分自身でワクチンを製造する能力のない、そうした大量の住民――ナイジェリアのような――の中で感染症が拡散するのを許している。これは今後、すべての国民に再び悪影響を与える新種の変異の出現に帰着するだろう。われわれは、次の変異がどれほどきびしいものになる可能性があるか、を語ることはできない。それは、われわれの「コヴィッドと共に生きる」戦略に早々に終止符を打つかもしれない。
グローバルノースが世界的なワクチン接種のための協力した努力を引き上げなければ、富裕な諸国は、ジェンダー不平等に世界的に取り組む努力を真剣に行っている、と言うことはできない。(「アゲンスト・ザ・カレント」2022年7・8月号、219号)
▼筆者は、国際的な協調の下での、極度の貧困と防ぐことができる疾病を終わらせるキャンペーン、ONE、のロンドン事務所で働いている。(「インターナショナルビューポイント」2022年7月3日)
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