NATOサミットの「新戦略概念」

世界への臆面もない脅し隠さず
新たな永続的世界戦争に身構え
反帝国主義を基礎に国際主義と連帯へ

ハイメ・パストル

 米国大統領のジョー・バイデンとスペイン首相のペドロ・サンチェスのより大きな誉れを表して開催された、費用がかかり族長風な見せ物を経て引き出された結論は、西側帝国主義ブロックに奉仕する世界的な憲兵として自身を確立している古い構想における新たな跳躍に、NATOが一定の形を与えた、ということだ。実際、その「新たな戦略概念」は、敵と脅威について、1948年にその誕生に導いた概念、あるいは1980年代の「第二次冷戦」として知られたものの中で理解されたものよりはるかに幅広い再定義を設定している。

「防衛的」装いをかなぐり捨て

 今や、9・11の余波の中で行われた「そのあらゆる形態と表現をとったテロリズム」に対する世界的戦争の継続があるだけではなく、2010年の亀裂の後、ロシアがあらためて「もっとも重要で直接的な安全保障への脅威」として描かれている。中国は、中・長期的な、あらゆる分野における「戦略的な競合相手」とみなされている(それが「われわれの安全保障、利益、そして価値」に対する「体系的な挑戦」を代表しているとして)。
 もっとも深刻なことだが、「不法移民」は、NATOメンバー諸国の「主権と領土的完結性」に対する「脅威」と記述されている。ついでながら、新たな候補者であるフィンランドとスウェーデンが加えられるひとつのリストもあり、それは、このサミットのもうひとつの勝者であるトルコの要求を、両国が彼ら自身の国内に居住しているクルド人を犠牲にして受け入れる、ということが条件だ。
 このすべてでも十分ではなかったかのように、この文書は、「権威主義の主体」、「戦略的競合者」、「ハイブリッド戦争戦略」――「情報遮断作戦、移民の道具化、エネルギー供給の操作、経済的威圧の利用」を含む――に訴える「潜在的な敵」に対する言及で満ちている。われわれは、「アフリカと中東における諸々の紛争、脆弱さ、不安定さは、われわれの安全保障とわれわれのパートナーのそれに直接の悪影響を与える」というものも読むことができる。
 この文書は、そのいわれるところの「防衛的」性格が単なるレトリック、と認めることを避けてもいない。つまり「NATOは防衛の連合だが、連合国領土を1インチであっても守るという、連合国すべての主権と領土の完結性を保持するという、またあらゆる侵略者に打ち勝つという、そのわれわれの決意、およびそのためのわれわれの強さを人は決して疑ってはならない」と。その上このすべては、NATOの「至上性の保証」としての核兵器に対する再断言を基礎としている。

米国の世界的主導性の再構築

 この全般的な軍事化に奉仕するものとして、東部での米国のプレゼンスの補強で特別に特権化されている欧州の区域、およびNATO即応部隊の4万人から30万人への拡大に加えて、全メンバー国による軍事支出の最低GDP2%まで増額の約束は、今や「天井ではなく床」としてのみ現れている。それをたとえば事務局長のヘンス・ストルテンベルクは、われわれに請け合ったのだ。
 したがってこれらの提案は、元米大統領のアイゼンハワーが厳しく非難した古くからの軍産複合体の利益を増大させ、兵器競争を再開させることに奉仕するだろう。後者には、世界規模での核兵器競争が含まれる。
 つまり米国は、ロシアのウクライナ侵略をアリバイに使い、アフガニスタンで喫した敗北の影響を非常に素早く忘れさせることに成功した。ワシントンは、EUの自律性をほのめかすものすべてを押しとどめ、欧州諸国の広大な多数派を、米国の主要な戦略的な敵に対する米国のヘゲモニー再構成構想の忠実な従僕へと変えた。その敵は短期的にはロシア、中・長期的には中国を意味するが、また世界のどこであれEUに対する、またその地―経済的かつ政治的利益に対する、脅威を意味するかもしれないすべてのことおよびすべての者でもある。このアプローチは、西側の白人至上主義の防衛と密接に関連づけられている。
 スペインの場合、この新たな好戦的なシナリオは、ペドロ・サンチェスによって多幸感をもって承認されている。そして彼は大急ぎで、「スペイン王国とアメリカ合衆国間の共同声明」という手段によって、彼の米国の友人に彼の奴隷根性をあらためて示している。この声明の中でふたりの指導者は、「民主主義の防衛」の声明と並んで、自らを「同盟者、戦略的パートナー、そして友」とあらためて確認、米艦船を4隻から6隻に増やした上で、スペインのロタ海軍基地での「米艦船の永久的母港化」に同意している。
 彼らはまた、「不法移民流入の管理」、あるいは、別の言い方をすれば、移民に対する死を呼ぶ政治で協力する共通の意志をも確認している。彼らはこの任務を即座に、彼らの共通の友人であるモロッコ政権に委任している。そしてこの政権は先頃、もっとも基本的な人権を侵犯した、メリリャ(アフリカ大陸にあるモロッコと国境を接するスペインの都市:訳者)での残忍な虐殺に責任があるのだ。米国とスペインはモロッコによる西サハラ違法占領では共謀している、ということも忘れないようにしよう。

不安定な世界(不)秩序へ


 東と南における、またアジア太平洋の鍵になる地政学的領域を見据えた攻撃的力としての、この臆面もないNATOの声明は新しいものではない。しかしこの最新の声明は、資本主義のグローバリゼーションの決定的な危機という全般的脈絡の中で、また新たな商業的かつ軍事的なブロック形成を伴って、ほとんどあらゆる領域での帝国主義間競合の強まりの中で起きている。
 こうしてわれわれは今、西側が軍事力へのより大きな依存によることを含め、彼らが自由になるあらゆる手段によってその支配的な地位を維持しようと決意しているとはいえ、新たな多極的で非対称な世界の(不)秩序に向かうある種の移行を目撃中だ。この新しい局面は、ウクライナでの戦争によって加速され悪化させられている多様な挑戦を巻き込んだ、「多重危機」という脈絡の中で起きている。これらには、気候危機とエネルギー危機、数を増す諸国の食糧危機と結果としての移民の動き、スタグフレーションと不況の危機、新たな世界的債務危機の見通し、新たなパンデミックの仮説と公衆衛生およびケアの危機、そして最後にしかし最小とは言えない、核戦争へといたる軍事的エスカレーションの危険、などが含まれる。
 この危機群は、現在の権威主義的新自由主義の強化に力を貸している。そしてその内部で、リベラルと非リベラルの境界はぼやけることになるだろう。トルコ、ハンガリー、ポーランドは鍵となる参照点であり続けている。多くの影響力がある諸国で今課題を設定する能力を得ている極右の圧力下で、さまざまなタイプの抗議や反乱が起きるだろう。これらの理由からわれわれは、権威主義に対する防波堤としてNATOを示すふりをしている者たちの、そしてこの軍事組織と何よりも米国の歴史そのものをわれわれに忘れさせようと試みている者たちの、人を惑わすプロパガンダの再出現にだまされてはならない。
 NATOはその「新戦略概念」で、ウクライナ占領というロシアの正当化不可能で不埒な戦争以前にすでに直面していた、その多重的な危機とあらゆる種類の不平等をただ増大させ悪化させているにすぎない。NATOはこの新概念によってこれらの危機を、軍事力依存という高まる脅威に向けた枠組みとして、敵と脅威の際限のないリストの中に差し込んでいる。

何より攻撃受ける民衆の支援を


 われわれは今日西側世論の主流と制度圏左翼の多くに逆らっているとはいえ、オルタナティブ左翼には、マドリードサミットで合意された西側のむき出しの新帝国主義戦略、およびそれが世界の民衆に提起する実体ある脅威、を糾弾するあらゆる理由がある。この糾弾は、ロシアの侵略に対するわれわれの糾弾、そして武器をもってであろうが武器なしにであろうが、またゼレンスキー大統領の大西洋派的主張と否応なく一体化することなく、彼ら自身を防衛する正統な権利を行使しているウクライナ人民への連帯、とは決して矛盾しない。
 われわれの任務は変わることなく、ある者たちの新陣営主義と他の者たちの新大西洋主義を超えて、攻撃にさらされている民衆を、避難と難民の権利、あるいは単純に尊厳ある暮らしへの権利を主張するすべての人々を、彼らの出自や条件に関わりなく、最前面で支援することでなければならない。このやり方ではじめてわれわれは、NATOとあらゆる帝国主義――それが大きかろうが小さかろうが――に立ち向かうことのできる、また安全保障の軍事化された概念に対するオルタナティブを打ち固めることができる、民族を超えた運動を建設する可能性を得る。一方で帝国主義者たちはすべて、先の軍事化された安全保障概念を共有し、その各々が支配を伸ばそうと追求するさまざまな地政学的領域にそれを適用するのだ。
 われわれは、これらの帝国主義者のさまざまな利害関心に奉仕する狭い見方と対決して、上述した危機群に応えることのできる、世界的安全保障の多次元的な理念を主唱しなければならない。われわれは、長期化した地球的緊急性を前に、生命および公共的で共有された財の防衛を中心に置く。もちろんわれわれは、西側であろうが東側であろうが、また南であろうが、そのさまざまな型のいずれの下にある資本主義でもその生き残りとはこれが両立不可能だ、と分かっている。

自律的な左翼の再構成に挑戦を

 結論として私は、このすべてがスペインにとって意味するものを多く語る必要があるとは考えていないが、しかしひとつのことは明白だと思われる。つまり、米国の指導者および彼の好戦的な主張とのペドロ・サンチェスの連携は今、限度を知らないものになっている、ということだ。これは、スペインの軍事予算倍化に対するサンチェスの約束、およびロタ海軍基地再強化に対する彼の受容、によって十分に確証されている。
 これらの決定は、サハラの人民に対してこの首相がとった他のひどすぎるふるまい、あるいはもっと最近の、メリリャのスペイン国境を越えようと試みる、スーダンやチャドや他のアフリカ諸国の人々に対する虐殺における彼の共謀、に続くものだ。
 したがって、アルベルト・ヌニェス・フェイショオらの国民党(PP)との開けっぴろげになっている論争の中で、PSOE(社会労働党)がより右翼になりつつある、ということに疑いはほとんどあり得ない。主流両党は今、スペイン政治の「中央部の両端」をめぐる競争の中で、一層の新自由主義的、レイシスト的、かつ軍国主義的課題設定を推し進めようとしている。この動き、およびそれが生み出す可能性もある社会的不穏の成長を前にありそうなことは、今後民衆諸階級内部には新たな政治への不満が高まる、ということだ。
 問題は、出現するかもしれない新たな抗議がどの方向に発展する可能性があるか、を予想することだ。そしてその場合には、15M―ポデモスのサイクルが決定的に枯渇していること、またPSOEの左に存在している、少なくとも全国レベルにおける巨大な政治的真空、を心にとどめておかなければならない。
 したがって、現在の政権に反対する、そして右翼に永久的に立ち向かう、オルタナティブなかつ自律的な左翼の再構成の歩みを開くこと、が急を要している。必要なものは、社会運動のもっとも活動的な部分と共に、諸決起の新しい波を推し進め、その決起に反新自由主義と抜本的な民主主義の意味を与えることに貢献する用意がある左翼だ。

▼筆者は、政治学教授でアンティ・カピタリスタス(第4インターナショナルスペイン支部)メンバー、かつ「ビエント・スル」誌編集長。また、2014年1月の、彼が所属するポデモス運動を発進させることになる最初のアピール、「ギアを変えろ:憤りを政治変革へと転形せよ」、に対する署名者だった。(「インターナショナルビューポイント」2022年7月7日)

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