ベラルーシ「鉄道パルチザン」

死刑に直面する逮捕者の防衛を
国際的連帯の強化へ
シモン・ピラニ

 犯罪捜査官たちは、最初の3人――スヴェトラゴルスクのズミトリ・ラヴィッチ、ヅィアニス・ヅィクン、アレー・マルチャナウ――の事件に関する捜査記録一式を法廷検事に回した。
 国家捜査委員会は、彼らは死刑になる可能性もあるだろう、と語っている。とはいえ弁護士たちは、ベラルーシの法律にはその根拠が全くない、と語っている。ベラルーシ人たちは7月23日、テロ容疑で逮捕されたスヴェトラゴルスクの被告と他の8人を支援して、ロンドンの彼らの国の大使館で抗議行動を行う予定だ。

実力行使による
ウクライナ連帯


 ラヴィッチ、ヅィクン、マルチャナウは今年3月4日――ロシアの全面的なウクライナ侵略の1週間後――に、アレーの娘とヅィミトリの妻であるナタリア・ラヴィッチと共にスヴェトラゴルスクに拘留された。なお後者の2人は数日後に釈放された。
 ヅィアニス・ヅィクンの兄弟であるドミトリは先月のインタビューで、ヅィアニスは「少しでもウクライナを助けたい」と思った、と語った。3人が逮捕されたが、彼は次のように語ったのだ。
―私が理解する限り、人々は〔当時〕、ロシアの全装備はベラルーシを通ってウクライナ北部へと動いていた、と知っていた。そしてそのために彼らは鉄道を利用した。彼らは、これらの武器を止め、それらが確実に先に進めないようにして、少しでもウクライナを助けたかった。
 「鉄道パルチザン」事件には11人がいる。そして今最初の3人の裁判が始まろうとしている。私にとってこれらの人々はヒーローだ。彼らは、「肘掛け椅子の部隊」のように家でじっとしていなかった。少なくとも彼らは何ごとかを行おうとした。
 ドミトリは、ゴメルの拘留センターにいるヅィアニスはこれまで、手紙の交換を行うことができ、彼のパートナーや姉妹と面会もできてきた、と語った。
 3月の逮捕直後それは非常に難しかった。ヅィアニスはひどい殴打を受け、いわゆる自白をビデオに録画することを迫られた。そうした録画はベラルーシの治安部隊が使う標準的なテクニックのひとつだ。ドミトリは次のように語った。
―いわゆる自白ビデオで、私の兄弟の顔が強打されたことははっきりしている。黒い目、あごまでの腫れ上がりが見られた。彼が逮捕される前日にわれわれは夜に〔オンラインで〕話したのだ。彼がどう見えたかを私は見て知っている。そのような傷はなく、気分も良かった。〔しかし逮捕後は〕彼は片足を引きずっていた。彼は彼の立場を守り、彼の顔は傷つけられた。

鉄道妨害事件は
大戦以来の規模


 ラヴィッチ、ヅィクン、マルチャナウへの立件は、鉄道のリレーボックスへの放火攻撃に関係している。報道では、これが鉄道サボタージュのもっとも普通の形態だ。すなわちそれは、自動信号システムを台無しにし、運行予定を攪乱し、列車を時速15―20㎞の低速で移動することを余儀なくさせる。
 スヴェトラゴルスクの3人組にかけられた容疑は、過激派組織への参加、テロ行為、深刻な損害や生命への脅威にいたる交通システムへの故意の危害、そして反逆だ。
 捜査委員会は、この3人組は死刑になる可能性もある、と語った。しかし独立ニュースサイトのゼルカロは、今年5月に導入されたテロ攻撃に対する死刑は、遡っての適用はできない、との法的な助言を掲載した。その日付の前では、その攻撃が死にいたった場合でのみ適用の可能性もある、ということだ。明白だが、アレクサンドル・ルカシェンコの体制がそれ自身の法に従う、と考える根拠は全くない。そうであれば起訴されたスヴェトラゴルスクの3人組の命は危険にさらされている。
 4月21日、6つの人権組織からなる連合がスヴェトラゴルスクの3人と他の8人の「鉄道パルチザン」を政治犯と認定した。ベラルーシ・ダイジェストによる「鉄道パルチザン」運動の概要は、ロシアによるウクライナ侵略後の最初の2ヵ月で80件以上の行動があった、と見積もった。その報告でリザヴェタ・カスマッチは「この規模の事件は、ふたつの世界戦争以後では見られたことがない」と書いた。逮捕された者たちの中には鉄道労働者もいた。3月の最終週、独立のテレグラムチャンネルが、その40人以上が逮捕された、と伝えた。
 当局は拘留者たちに、高度の反逆、スパイ行為、テロ行為の容疑をかけた。治安機関と提携しているテレグラムチャンネルは3月30日までに、逮捕された鉄道労働者に焦点を絞った30ダース以上の「自白」ビデオを掲載した。

広がる不満
弾圧の激化


 これらの拘留者の運命は、私がこれまでに接触したベラルーシ人活動家には知られていない。彼らは人権組織の政治犯リストに含まれていないが、しかしそれは彼らが安全、ということを意味するわけではない。活動家たちがそのすべてを絶えず注視しようと闘い続けているほど多くの拘留者がいる。人々が含められているリストは、狭い基準にしたがったものにすぎないのだ。
 4月、ベラルーシの反政府派政治家であるフラナク・ヴィアコルカが、サボタージュと並んで、「何ダースもの」もっと小さな行動、すなわち装備輸送を拒絶した鉄道運転士による行動、がある、と報告した。
 ワシントンポストの報道では、バイポル(現在亡命中の元治安機関将校集団)、「鉄道労働者コミュニティ」(テレグラム上で組織された)、「サイバーパルチザン」(現在亡命中のベラルーシ人IT専門家集団)を含む分散的ネットワークが、ロシアの軍事輸送に対する行動の促進を助けた。「鉄道パルチザン」の行動は、ウクライナに対するロシアの戦争への支持に関するベラルーシ政権に対する、広範な不満を暗示している。その反応として当局は、労組活動家、ジャーナリスト、さらに他の反政府派に、抑圧を新たにして激しく襲いかかってきた。

多数の拘留者
連帯が不可欠


 ベラルーシ最高裁は先週(7月12日)、ベラルーシ独立組合に解散を命じた。この組合は30年間にわたって、労働者の諸権利を求める闘いで指導的役割を果たしてきていた。そのオルグたちはこの決定の前「同労組の活動家たちは常に、賃金引き上げ、職場の安全、職場における人々との公正かつ尊厳ある関係に関わってきた」と述べた。そして、1991年以来わが労組メンバーは、モズィル、ノヴォポロスク、ソリゴルスク、グロドノ、ボブルイスク、ミンスク、モギレフ、ヴィテブスクの主要組織に団結し、集団協定をまとめることで彼らの法的な権利を自立的に守った、と。
 この労組代表のマスキム・ポズニャコフは5月にノヴォポロスクで逮捕された。彼は1週間前に、ベラルーシ民主労組会議の代表に選出された――同様に逮捕されたアレクサンドル・ヤロシュクと彼の代理であるセルゲイ・アンチュセヴィッチの代わりとして――ばかりだった。
 この月、ジャーナリストのカシャリナ・アンドレエヴァは、2020年の抗議行動への参加を理由とした2年の投獄刑に加え、反逆を罪状に8年の刑を受けた。さらに学生のダヌタ・ペレドニアも、反戦声明を再投稿した、として6年半を宣告された。
 人権諸団体は、ベラルーシには今1200人以上の政治犯――抗議行動を理由に拘留されている者(たとえば上述の鉄道労働者)の総数はもっとはるかに多いとはいえ――がいる、と語る。 
 反戦運動に対する鉄道労働者の支援は、2020年にベラルーシを覆った抗議の波への彼らの参加に続くものだ。
 これらの行動はまた、解雇、逮捕、投獄に導き、それらは、市民社会キャンペーングループである「アワー・ホーム」による報告の中に、「鉄道パルチザン」に関する情報と共に文書化されている(同報告は、英国労組の内部に配布された)。
 今月はじめ、英国鉄道労働者の労組であるRMT(鉄道海運運輸労組)の評議会は、抑圧に直面するベラルーシの鉄道労働者を支援する決議を採択した。この歓迎すべき立場は、是非とも必要な連帯を強化する助けになるだろう。(「民衆と自然」より)

▼筆者は英国のブロガー。(「インターナショナルビューポイント」2022年7月24日)  

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