南アANCの政治的変質
腐敗と新自由主義に挟まれて
ポール・マーシャル
恐るべき腐敗
次々明るみに
グプタの姓をもつアハイ、アトゥル、ラヘシュは、南アフリカでもっとも有名な3兄弟だ。うち2人は数週間前、アラブ首長国連邦で逮捕された。彼らは、2009年から2018年まで南アフリカの大統領だったヤコブ・ズムマの助けを得て、国家から36億ユーロ相当を吸い上げ、主な行政機関に浸透できてきた。それは、われわれが「国家のぶんどり」について話すことができるほどのものだ。この大規模な腐敗は、与党のアフリカ民族会議(ANC)の状態について大量のことを物語っている。そして民衆内部の絶望感を強め、それは繰り返し起きる外国人排撃の波に映し出されている。
ヤコブ・ズムマは、2009年に権力に到達する以前に早くも、サレス社による兵器売却に絡んで腐敗の件で起訴されていた。彼は2016年にも、ヌカンドラにある彼の邸宅の修理に公金、1500万ユーロ近くを使ったとして告発された。しかしこれは、グプタ兄弟に関する腐敗における彼の共謀について、調査委員会が2018年に暴露したものに比べれば、何ものでもなかった。
後者は、あらゆる公的企業に段階を踏んで浸透を進めた。ゾンド判事の報告はズムマにとって破滅的だ。発電と送電の企業であるEskomは、グプタの企業からの低品質石炭購入に前払いで数億ドルを支払った。彼らは、国有鉄道企業のPRASA(南ア旅客鉄道公社)に機関車購入交渉で影響力を行使しようとした。南ア航空は、一族が所有するジェット・エアウェイの利益のためにインドへの航路を放棄するよう、とてつもない圧力をかけられた。彼らは、またズムマの助けの下に、閣僚指名でも鍵となる発言権を確保した。こうして、コンサルタント企業であるベイン&カンパニーの助けを受け、彼らは何とか、以前はアフリカでもっとも効率的な部類に入っていた税務を、非効率に成り果てた組織にすることができた。
大統領任期を通じてこの国家分取りで中心的役割を演じたヤコブ・ズムマは、法廷への回答を回避するために繰り返し策謀に訴えてきた。事件をもみ消そうとするたくらみ、ジャーナリストたちへの脅迫、反腐敗調査委員会への出頭の拒否、特にヨハネスブルグで解き放たれた暴徒による彼の投獄に抗議するための暴力の利用、などがあり、最後のものは、略奪と300人以上の死を伴った。そして彼は、彼の投獄を終わらせるために、健康問題を引き合いに出した。
ANCへの
不信表面化
この国でANCは今も支配政党だが、その選挙結果は腐食を続けている。マンデラの党は、新自由主義の道に乗り出してきた。そして社会的な分野でいくつかの努力が行われてきたとしても、それらは十分にはほど遠い。このシステムは、不平等を拡大し、何よりも相当に裕福になった党の指導者たちに利益を与えてきた。ほとんどの者は、反アパルトヘイト闘争の中で耐え忍んだ苦しみと損害を呼び出すことで、自らを正当化している。
シリル・ラマポーザは2018年に大統領になるに当たって、腐敗に対し断固とした闘争に取りかかると約束した。しかしそれは、支配的な者たちの界隈におけるその全般化を前提とした時、困難な事業になる。ゾンド判事は、元閣僚たちを含めて100人以上の起訴を主張している。そして、ラマポーザの所有物のひとつで起きた窃盗事件によって、彼の廉潔さも打撃を受けた。その窃盗犯たちが、380万ユーロ相当を見つけたのだ。そしてそれは、そのような額の出所に関し正当な疑問を引き起こす。ラマポーザは、ヨハネスブルグの北西にあるルステンブルグスタジアムでのメーデーあいさつの間、労働者から大量のヤジを浴びた。政権に近い労組連合COSATU(南ア労組会議)の指導者たちは、群集を静めることができなかった。
民衆的怒りに
危険な可能性
ユリウス・マレマの急進的な組織である「経済・自由・戦士」の出現は、ANCの経済政策と腐敗に対する批判で強化されている。しかしこの国は、何度も暴力的な外国人排撃に駆り立てられている。その主な標的は、ジンバブエ、モザンビーク、ナイジェリアからの移民、またソマリア難民だ。「オペレーション・ドゥドゥラ」――ズールー語から「追い出せ」と翻訳できるだろう――運動は、無登録移民をこの国の不幸の主な原因にしている。彼らは、非行、麻薬取引、労働力市場の掘り崩しとして責められている。実業界と小企業には、南アフリカ人のみを雇用せよとの圧力が高まり続けている。このタイプの運動は残念なことだが新しくはなく、今や民衆内部に根を下ろしつつあり、大規模な暴力へとすさむ可能性もある。それゆえに、政治的オルタナティブの建設に切迫性がある。
▼筆者はIVの通信員。「アフリーク・アン・リュッテ」誌編集者でフランスの第4インターナショナルメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2022年7月28日)
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