米国中間選挙２カ月前
トランプが依然として大きな要素に
ダン・ラボッツ
ドナルド・トランプは今も共和党を支配している。しかし、彼と彼の党には脆さがある。ワイオミング州共和党予備選では先週、トランプの候補者のハリエット・ヘイグマンが、共和党内でもっとも声高で重要なトランプ批判者だったリズ・チェイニーを40ポイント差で打ち負かした。
トランプは２００人の候補者――うち１５９人が大統領選挙でのバイデン勝利を否認――を承認した。そのうち何人かは勝利し、何人かは敗北した。彼の勝利した候補者の何人かは、ペンシルバニア州の山師であるメーメト・オズ博士のような変人か、オハイオ州の「置き換わり論」主唱者であるＪ・Ｄ・ヴァンスのような白人民族主義者だ。彼らの極端な右翼的観点は、彼らが本番で勝利するのを難しくする可能性がある。民主党はそれを信じて、彼らの何人かに資金を回す手助けをした。
トランプは党の支配を続けているが、この前大統領の法的諸問題が彼と党に対し問題をもち出す可能性も考えられる。米国司法長官のメリック・ガーランドは、連邦判事の承認に基づいて家宅捜索令状を取り、８月８日、数多くの文書箱を取り戻すためにマル―ア―ラーゴのトランプ宅の捜索にＦＢＩ要員を派遣した。上記文書のいくつかは「核」問題を扱う秘密文書であり、それをトランプは、ホワイトハウスを去る際に不法にもち出したのだ。この令状は、この捜索はあり得る犯罪、すなわち隠匿、損傷あるいは記録除去、連邦の捜査における記録の破壊や改竄や歪曲を含む裁判妨害、スパイ防止法違反の可能性、に基づいている、と述べていた。
１月６日の暴動とクーデターのもくろみをも捜査中であるガーランドは、それらの事件でもトランプを告発することが可能と考えられる。１月６日事件への下院調査は、告発に向けガーランドに圧力をかけつつ、トランプは暴動を組織し２０２０年選挙の結果をひっくり返す陰謀に責任があった、と論じた。
トランプは、２０２０年大統領選挙への犯罪的干渉を理由にジョージア州でも起訴に直面する可能性があると思われる。その件では彼は、この州で選挙に関する公人のトップである州国務長官のブラッド・ラッフェンスベルガーに、１万１７８０票を見つけ出すよう頼んだのだった。バイデンはジョージア州で１万１７７９票差で勝利していた。
ニューヨーク州司法長官のレティティア・ジェイムスは今、民事での容疑を捜査中だ。それはトランプが彼の会社の財務に関し不正確に述べた、というものだ。その間マンハッタン地区検事のアルヴィン・ブラッグは平行した犯罪捜査の中で、すでに２件の起訴に達していた。つまり、トランプ・オーガニゼーションとそのＣＥＯのアレン・ワイゼルバーグが２０２０年７月に起訴された。
トランプは例によって、彼はすべての犯罪で無実であり、民主党と「ディープ・ステイト」によって今迫害を受けている、と言い張っている。ほとんどのトランプ追随者――有権者のほぼ40％――は忠実なままであり、彼の回りに結集し、彼が獄中にいないという条件で、彼が２０２４年大統領選の候補者になる可能性を高めている。
何人かの共和党政治家は離反した。ひとりのコロラド州上院議員のケヴィン・プリオラは先頃、共和党を去り民主党員になった。彼が語った理由は、民主主義に対する共和党の攻撃は「現に実在する脅威」になった、というものだ。「共和党アカウンタビリティ・プロジェクト」（以前は「トランプに反対の共和党支持者」、１月６日事件の後、共和党の価値を守り、１月６日に責任のある共和党政治家を攻撃することに焦点を絞るこの組織に移行:訳者）は、トランプの支持基盤まで活動を伸ばし、彼らの心を変えることに挑もうと何百万ドルも費やしている最中だが、これまでのところ大きくは成功していない。
トランプの政治を「半ファシズム」と呼ぶジョー・バイデンは、この間彼の人気が幾分上向くのを見てきた。また中間選挙における民主党のチャンスも上向きつつある。民主党は先頃、３６９０億ドルのインフレ緩和法、何年かではもっとも重要な環境立法、半導体チップ製造支援を後押しする５２７億ドルのチップス法を通過させた。下院は彼のウクライナ向け軍事支出を支持し、他方上院は、フィンランドとスウェーデンのＮＡＴＯ加盟を認める提案を承認した。そして最後にバイデンは、学生の債務の何百万ドルかを帳消しにするために大統領権限を使った。
このすべて、および共和党の最高裁による中絶の権利の逆転に対する反対は、上院を維持し、またおそらく――とはいえありそうにないが――下院を維持する上で十分な大きさとなる数で民主党員を投票所に駆り立てるかもしれない。（フランスＮＰＡ機関紙「ランティカピタリスト」向けに書かれた）（「インターナショナルビューポイント」２０２２年８月30日）
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