英国 勢いづく不払いキャンペーン

巨大な潜在力がストライキに加勢
ケイト・ブラッドリー

 来年4月、英国のエネルギー価格上限は1年当たり平均で5500ポンドほどまで上昇すると予想されている。多くの家計には、暖房か食事かを決める選択しか残らないだろう。

生活危機急進と政治による放置


 クリスチーヌ・ファーニッシュは先頃、エネルギー規制機関であるOfgemの代表を辞任した。家計の勘定書に数千ポンドを加える決定を支持することはできないだろう――そして、Ofgemは消費者よりも企業を守っていた――、と言い残して(二重の驚き)。
 エネルギー企業と主流メディアの発行物は、エネルギー消費の削減法を人々に助言する空虚なお知らせをはき出してきた。オヴォ・エネルギー社は、暖房にスイッチを入れる代わりに暖まるためにペットと添い寝するようその顧客に推奨した。このどれもが、決まった使用量料金の急騰にも、多くの人々はその使用を削減するためできるあらゆる方法をすでにとっているという事実にも、まったくふれていない。われわれはこの冬、もっと多くの人々が凍死するのを見ることになるのだろうか?
 どの政党もこの危機への十分な回答をまったくもっていない。リシ・スナク(保守党の経済閣僚だった:訳者)のエネルギー400ポンド値下げは、10月の価格上昇で即刻呑み込まれるだろう。そしてこの値下げは、もっとも必要な者たちには届くことすらないかもしれない――給付請求者のための生活費用支援払い込みはこの夏、払い込みを受け取ることが不可能な請求者に関し、すでに障害にぶつかっていた――。労働党の指導者は、彼らは来年4月まで価格を凍結するだろう、と提案し続けているだけだ――彼らには権力がなく、彼らが他に提案している諸方策も危機解決には不十分である以上、無益な提案――。今こそ、かれらが次の総選挙で政権に選出されるならば、永久的な再国有化に向けた計画を広く知らせる人気を得る時だと思われる。それでもこれは、労働党党首のスターマーが繰り返し除外してきたものなのだ。

不払い呼び掛けへの反応急増中


 諸々のキャンペーンと組織化が、政治家たちが失敗した指導力を引き受けることになった。そこに、今年6月ウェブサイトでのみ始められた「連合王国に払うな」グループが含まれる。このウェブサイトは、エネルギー料金を口座引き落としで払っている人々に、エネルギー企業に高騰する勘定書に関する行動を迫り、エネルギー企業の収入に打撃を与えるために、10月1日からの支払を取り消すと誓うよう求めている。
 6月にこのキャンペーンは大評判となり、デーリー・メールやグッドモーニング・ブリテンのような大手主流メディア上に現れ、さらに諸労組の支部や諸組織中にも広まった。この誓約には最初の2週間の内に数万人が署名した。数はウェブサイトのカウンター上で分単位で増加した。そのカウンターは今11万人以上――そしてそれは口座引き落としで払っている人だけだ――になっている。さらに数万人が、月払いや前払いの顧客であるものの、それへの支持署名を終えている。今週、1紙による世論調査が、70%以上の人々がかれらの口座引き落としを取り消すキャンペーン――主に「払うな」によって推し進められている戦術――を知っているということ、その中にかれらの口座引き落としを秋に取り消す用意があると語っている170万人にのぼる人々がいるということ、を見出した。

集団的不払い
には力がある


 このうねりは、Ofgemが人々にこのキャンペーンに加わることに反対するよう警告するために出てくる形で、エネルギー部門に広範な警戒を引き起こした。確かに、不払いはリスクをもたらす。すなわちエネルギー企業は、人々の信用レポートに「デフォルト」を印すことができるのだ(今後の借り入れを難しくして)。さらに彼らは、顧客の許可なしに押し入って前払いメーターを設置する許可書を入手でき、顧客のエネルギーを切断することもできる。
 しかしこれらは、不払いから2、3週間内に起きることは全くない。そしてデマなどで世間に騒ぎを起こす者がすでに大量に現れている。それはことの重大性がそこにあることを思い起こす役に立っている。エネルギー供給者は顧客に口座引き落としでの支払いを止めて欲しくないと思っている――それはそれらのビジネスモデルと現金資金に打撃を与える――からだ。したがって集団的不払いには力がある。
 単純に払えない多くの人々は、これらの重大な結果に直面する以外の選択肢は全くないだろう。「払うな」はそれらの人々に、連帯をもって、相互援助に向かう当該地諸グループと共に、塊となってそれを行うチャンスを、また不払いというテコを通して政府とエネルギー企業に働きかける声を得るチャンスを提供している。
 同じくそれは、概して暮らし向きのよい口座引き落としの利用者に、全員に対する低料金を求めて集団的に闘うことも可能にする。そこには、エネルギーに対する余裕がないためにすでに今自ら切断している前払いメーターの人たちも含まれる。

債務の危険性
に対応の助言


 このキャンペーンには左翼の側の批判者がいる。ある者たちは、理解できることだが債務の危険を心配している。そして他の者たちは、それを始めた者たちが広く見える形になってらおず、それが説明責任に関し問題になる可能性がある、と懸念している。協調した大衆行動が現存する諸組織なしに民主的にやり通されることに対しては、常に諸々の難しさがある。また、効果のある集団行動にも常に危険がある。しかしこれらの問題は克服可能だ。
 債務の助言者たちは、この危険を理解しつつも、このキャンペーンに全体として反対することはなかった。「払うな」と対話している債務助言者たちがいる。たとえばキャンペーンの組織者たちは、参加方法について情報に基づく決定ができるように、不払いのリスクについて人々に伝えるためのポッドキャストを作り出そうと債務助言者と協力してきた。ある尊敬を集める業界専門家は、情報を与えられた集団行動の必要についてソーシャルメディアで支持してきた。債務助言者は、今年の価格上昇の引き下げに何の行動もとられない場合それがどのような結果を招くかについて、ほとんどの人々よりよく分かっている。エネルギーサービスはすでに、早くも支払いが遅れている350万件のエネルギー会計で溢れているのだ。

直接行動組織化をも視野に入れ


 新たな誓いは今週僅かにスローペースになったとはいえ、「払うな」は、地域で運動を建設し、オンラインでつながる習慣のない人々に接触するために、対面方式の組織化へと移った。リーフレットが数百万部刷られ、英国中に配布された。筆者はマンチェスターでリーフレットの配布を続けてきた。そして前例のない反応を得ている。通りすがりの何十人という人がリーフレットを受け取り、ある人はこのキャンペーンのことはすでに聞いていると言い、多様な広がりをもつ人たちが、もっと広く配布するために多くのリーフレットを求めた。
 今、総計5000人以上の組織者を抱える各地毎に始められたこのキャンペーンに特化したソーシャルネットワークが250以上ある。そのひとつである私の地域グループは活発に活動中だ。そして私はすでに生産的に共に活動している多くの新しい人々と出合っている。そこには、以前にはどのような行動も経験したことがない何人かの人も含まれている。私はまた、「払うな」が現在、より説明責任を持ってより集団的に行動することを可能にする組織性に向かう建設の途上にある、と理解している。 「払うな」が今目標にしている100万人の誓約に達しないとしても、それが形成したネットワークの潜在力は巨大になる可能性を秘めている。これらのグループは、債務取り立て執行と対決する直接行動に多様なコミュニティを横断して参加することが可能だろうか? まさに1例として、前払いメーター取り付けのために法務執行吏がやってくるとき、平和的に抵抗するために出かけてくることができるソーシャルネットワーク・グループの20人が確保できるならば、それはすばらしいことだろう。これは、追い立てへの抵抗を実行している借家人組合や、ひとびとが移民執行吏によって拘留されることを妨げている「反手入れネットワーク」、のすばらしい仕事を拡大する可能性もある。
 ストライキ以外にも、「払うな」がつくり出した圧力は今、生活費用に関わるよりエネルギーの籠もった合流を駆り立て、またそれに形を与えている。ストライキが前進するならば、その潜在力は巨大なものになる。(2020年8月24日、「rs21」より)

▼筆者は英国の「rs21」に寄稿している。(「インターナショナルビューポイント」2022年9月5日)

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