移民を政治ゲームの駒に利用
ダン・ラボッツ

嘘で誘い出して
移民を放り出す
　９月14日、難民資格を求めて米国にやってきた、そしてテキサス州で合法的な入国を認められた48人のベネズエラ人移民が、マサチューセッツ州ボストンに飛ぶという申し出を受け入れるために、フロリダ州知事のロン・デサントスの手先に誘い出された。その飛行先でかれらは、労働許可書、食糧、衣類、金銭的支援、また他の手当をより早く与えられるだろう、というものだった。そして航空機は、東海岸で富裕層のための休暇地になっているマーサズ・ヴィニヤードへと飛行した。
　デサントスは当該地の当局には何の連絡もせず、そこには出迎える者は誰もいず、彼らに行われた約束すべては嘘だった。ニュースメディアは、当局、ＮＧＯ、また現地の人々がかれらに住居、食糧、支援を提供しようと努力する中での、失望し混乱した移民の男、女、子どもの姿を明らかにした。
　デサントスは彼の行為を擁護し、彼が語るところでは麻薬売人や犯罪者を含む移民が今も入り続けている、南部国境の安全を保障することに失敗しているとしてバイデン大統領を攻撃した。彼は嫌みたっぷりに、避難所になっている民主党の諸州への送り出しを移民に提供できて喜ばしい、と語った。フロリダ州議会は州外に移民を送るために１２００万ドルを承認し、デサントスはそのマネーから、マーサズ・ヴィニヤードへの飛行に61万５０００ドルを払った。

見え透いた
個人的野心
　数カ月の間、３人の共和党知事――アリゾナ州のダグ・デューシー、テキサス州のグレッグ・アボット、そしてロン・デサントス――は、11月８日に予定されている中間選挙前に彼らの党への支持を得ようと、かれらの州外に移民を送り出し続けてきた。これまでに彼らはシカゴ、ニューヨーク、ワシントンＤＣに１万人の移民をバスで運んだ。すべて州や市を民主党が率いているところだ。
　彼らは、彼らの州が移民のために負っている重荷が理由で今そうしている、彼らは問題を公衆に注目させたい、と語る。しかし彼らは同時に、移民に引き起こされた困苦を無視しつつ、移民が送られる州や市の民主党知事や市長に今引き起こしている諸困難に喜びも感じている。
　中期的に共和党を助ける人気取りは、また知事たち自身の人物像も高めている。アボットとデサントスは両者共再選をめざし立候補し、両者共に２０２４年の大統領選にむけた共和党の指名をめざす候補者になる可能性もあるのだ。しかしそれは、期待に反した結果になる可能性もあると思われる。

思わぬ逆効果
もあり得るが
　テキサス州ベクサル郡のジャビエル・サラザール保安官は、デサントスに対する犯罪捜査を始めた。彼は起きたことを「粗雑な人権対処」と呼び、移民は「食い物にされ」、「うわべだけの政治的姿勢以外の何ものでもないもの」のために「利用された」と確信する、と語った。
　同時に「公民権を求める弁護士 は、ベネスエラ人の難民申請のための、また移民諸組織のネットワークであるアランザ・アメリカのために、デサントスを相手とする集団訴訟を提起した。この訴訟は、デサントスが「子どもや女性を含む50人近くの弱い移民を、テキサス州のサン・アントニオから適切な収容施設も資材もないマーサズ・ヴィニヤードへと送り出すという、詐欺的で差別的な仕掛けに関わった」と主張している。
　「公民権を求める弁護士」のイヴァン・エスピノーザ・マドリガルは「移民に関する国民が高度に分極化された論争の中で、誰であれひとが政治的な駒に利用されてはならない」と語った。
　すべての者は、毎年２００万人近くの無資格移民が拘留されていることにより、米国の移民制度が破綻している、と意見が一致している。しかし共和党は、移民は職を得、経済に貢献し、犯罪を犯す者は他の者より少ない、と事実としてあらゆる研究が示している中で、かれらは犯罪者か米国の福祉で暮らしを立てている寄生者だ、とそれとなく言う。
　まったく疑いなく、この共和党知事たちはトランプの政治的基盤から支持を勝ち取るだろう。しかしまた、当惑と怖れを見せて米国の街頭に立っている子どもを連れた家族の写真は、彼らから多くの無党派の票を奪うだろう。移民と米国生まれ双方のリベラル、進歩派、そして社会主義者は、これらの移民を助け守ろうと決起した。そしてかれらは民主党に投票するために投票所に出かけるだろう。（「インターナショナルビューポイント」２０２２年９月29日）　

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