ウクライナ ソツイアルニイ・ルク全国評議会開催

戦時下の活動で生まれた新たな
責任を引き受ける体制が始動へ

カトリーヌ・サマリー/派遣団一同

民衆的抵抗の経験から次を見すえた活動を議論

 ウクライナの社会主義NGOの社会運動(SR、ソツイアルニイ・ルク)は、今年9月17日にキーウで全国評議会を開催した。以下は、この評議会に対する「ウクライナと連帯する欧州ネットワーク」(ENSU)の派遣団、カタルーニャ、フランス、イタリア、ポーランドのアルフォンス、カトリーヌ、フランセスコ、シモンからの報告。

国際的に開かれた評議会の運営

 この会合の主な目的は、6ヵ月以上になる戦時の抵抗後の、SRの関与と特別の政治的存在に対する最初の集団的評価を得ること、そして取り急ぎの時期が過ぎた後の機能および抜本的に新しく困難な情勢への適応をどのように改善するか、を討論することだった。
 SRはまた、その任務に適応した新しいラダ(協議会、あるいは指導機関)も選出し、綱領的声明を採択し、さらにメンバーに次の時期に向けたこのグループの主な優先任務と目標を与えたいと思っていた。実践上のまた政治的な理由(戦争という背景における明らかに不都合な組織化と準備の条件)から、この評議会が幅広く知らされることはなく、もっと準備された評議会あるいは大会への一歩と考えられた。
 キーウにいることができなかった何人かのメンバーは、ズームのリンクを通じて参加することができた。この評議会は、ENSUとの合意の下に、英語とフランス語の翻訳によってズーム上でその部分を放送する(ネットワークメンバーに対し)可能性を備える形で、一種の混合集会として組織された。この評議会には、キーウ外、あるいは何とウクライナ外(チェコ共和国、ドイツ、スウェーデン)からの、また前線からのズームを介した5人から10人のオンライン参加と共に、総計で約40人のSRメンバーが会合の場に出席した。
 全体では、ENSUの非SRメンバーを考慮に入れると、この催しには、キーウに来ることができた4人のENSUメンバーからなるわれわれの派遣団を含め、自分であるいはコンピュータを介して100人を超える人々が参加した。

SRの活動の予備的な報告

 開会に際して、社会的権利の防衛に関わっている弁護士のSR議長、ヴィタリイ・ドゥディンが、この戦争にSRが対応した実践的な、事実に即した政治的取り組みについて報告した。彼は、急進的民主主義を通して「大衆的連帯」を促進する、また社会主義的理念に結びつけて人間的尊厳を求めて戦うSRの努力を強調しつつ、「われわれには戦争を前に受動的になる権利も時間も全くない」と述べた。
 彼は、労働組合やフェミニストグループに基づくSRの活動の一覧――政治的、社会的、人道上の諸課題をめぐる――を示した。すなわち、オンライン「イベント」やさらに国際ネットワークに基づく協議(5月のリヴィウにおける支援者との会合のような)、またメディア、ソーシャルネットワーク、ラジオ、TV放送を通じた介入などだ。彼は、いくつかの特別な街頭行動へのSRの関与を、しかしまた戒厳令を理由としたそうした行動に対する制限をも強調した。
 その行動や諸声明の結果として、SRの相貌が、侵略に対する民衆的抵抗に全面的に参加する中における、労働者の権利の具体的な防衛(特に、諸労組と並んで新労働法に反対する)に関わっている左翼潮流のそれとして、識別される可能性を得た。そのメンバーの何人かは領土防衛隊と軍に参加し、2、3人は主に研究のため、しかしその活動(たとえば、寄稿やSRを代弁する公開論争やビデオ論争への参加)に密接なつながりと関与を維持して、ウクライナの外にいる。
 ドゥディンは、その支部がある主な地域(キーウ、リヴィウ、クリビイ、リフ、そしてドニプロ)を、また占領地域における明らかな諸困難を指し示した。彼は、その活動と諸声明の結果として、SRはそのメンバー数をほぼ倍化した(メンバーあるいは関係する活動家の約40人から約80人への拡大)、そして新たな政治的責任を負うことになっている、と明示した。彼の報告は、信頼感を生み出す努力、またウクライナ内外において、SRの内部的および対外的な政治的相貌を打ち固める努力を強調した。
 ドゥディンは総体として、ウクライナ社会と民衆の性質、およびそれらの過去と最新の経験を考慮しつつ、組織がその左翼的目標を十分に定式化し具体化する必要を強調した。彼はその一連の内部で、SRのひとつの重要な任務は、抑圧され搾取された者たちの観点と意見を確かめ、より幅広い進歩的な闘いの内部でかれらの要求を表現し組織化することでなければならない、と付け加えた。
 ドゥディンはさらに、SRの世界的な路線の具体化における国際的な結びつきと連帯の重要性も強調した。これは、それらに付随する政治的で人道的な側面と共に物質的、財政的援助を含んでいた。この課題と結びつけて彼はまた、透明性と信頼の重要性、そしてSRを機能させる新しいやり方をつくり出す必要も強調した。そしてたとえSRが(まだ)「大衆的組織」ではないとしても、その規模(メンバー数と責任の点で)は急速に変わり続け、新しい組織的、政治的関係性を生み出しつつある――と彼は締めくくった――。
 ヴィタリイ・ドゥディンの後、党建設経験への関与に基づいて、建設労組指導者のヴァシリイ・アンドレエフが発言を求められた。アンドレエフは、SRと共有する労組活動の進行中のプロセスについて、および政治的レベルにおけるウクライナ労働者の代表のあり方に関する共通の懸念、またこれからの時期における経験と論争を通じ探求されるべき関わり合いについて話した。

数多くの海外からのあいさつ

 次の議事は外国からのゲストのあいさつに当てられた。ENSUのメンバーふたりが発言した。
 カタルーニャのアルフォンス・ベックは、ENSUの集団的な関心と労働組合の連帯への関与を表明した。彼は、労働法改革に反対してとられた共同行動を受けて、「ウクライナ労働運動と将来われわれがとることのできる行動と協力に向けた可能性を探る」願いを強調した(別掲参照)。
 フランスのカトリーヌ・サマリーは、ウクライナのフェミニストのマニフェストと行動へのENSUの連帯、またさらなる共同行動への期待を強調した。彼女はまた、第4インターナショナル指導機関からのあいさつも届け、世界的な規模で、植民地主義のあらゆる形態に反対して戦う者すべては「ウクライナの民衆的抵抗がロシア帝国主義の侵略に勝利することを必要としている」と述べた。それは、「尊厳と労働者の権利を求めて」また「ウクライナ、欧州、世界で」それに反対する反動的な勢力すべてに対決して「戦うこと」を意味するものだ。
 他の外国からのあいさつはズーム・リンクを通じて行われた。そこには、マシエジ・コニーツニイ(ポーランド議会のラゼム〈共に〉党議員)、デンマーク赤緑連合のミカエル・ヘルトフト、英国ウクライナ連帯キャンペーンのクリス・フォード、ポーランド労組、全ポーランド労働者労組イニシアチブのイグナシイ・ジョズヴィアクが含まれた。
 全員が、SR、戦争、当局の反労働者的行動、またソ連邦の歴史と関連づけられた反社会主義的な大衆的感覚、という困難な情勢の中でウクライナに左翼を再建するというその挑戦を賞讃した。
 ウクライナの現地で欧州のまた世界中のグループが引き受け続けてきた、さらに今後も引き受け続けるであろう、そうした諸活動に対しては、大量の情報がもたらされた。それらの活動には、ウクライナ独立記念日(8月24日)のウクライナ連帯キャンペーン代表団の訪問や、9月末に実現予定の第2次労働者援助トラック輸送隊が含まれる。
 数々の世界からのあいさつも名をあげられた(最終リストは今後公表)。その中には、連帯と闘争の労働者国際ネットワークから送られたものがあり、またフランス、ベルギー、英国、スウェーデン、ドイツのグループから送られたものがあった(各グループ名は省略:訳者)。

結果評価、優先任務、新協議会

 コーヒーブレイクの後、参加者からの質問とSRのさまざまな「出先」――介入の特別な領域――に責任を負いSRのラダにも席があるメンバーが行った発言を通して、SRの活動の結果評価が議論された。これらは、労働組合からフェミニズムの活動まで、教育からメディアまで、の諸課題を扱った。
 評議会の主な任務は上記の任務と結びつけて新しいラダを選出し、綱領的な声明を採択することだった。
 全部で9人の立候補者(7人の機関に対し)が、かれらの主な関心事を提起し、SRの政治的アイデンティティの内部的明晰化の必要から、ウクライナの具体的な歴史的でイデオロギー的脈絡内での左翼的かつ社会主義的関心事を表現する難しさまでの、次期に向けた任務を提案した。提起されたものには、より大きな財政的透明性の必要もあった(特別の問題としては、戦時に助けたいと思っている外国のグループからSRが金銭を得ることに関し)。諸々の発言はまた、より多くの女性がこのグループのあらゆる機能とラダ自身の要素となる必要も強調した。
 最多の票を受け、SRの活動の全範囲を代表する7人が選出された、その中では、労働者の権利を守る弁護士という重要な職務をもつヴィタリイ・ドゥディンが圧倒的に議長に選任された。中心的な経験と活動が労組の中にある他のふたりのメンバーも選任された(名称略:訳者)。フェミニストの活動、人道活動、また教育に関わっている女性も3人選任された。ドイツに住むふたりとヴィクトリア・ピグル(本紙10月3日号6面参照)だ。最後に、組織の学生支部への参加によりマキシム・シュマコフが選任された。このチームの平均年齢はおそらく30歳前後であり、このチームは関係する活動家の政治文化と「背景」の点で多様だ。
 若手歴史家で以前のSR評議員のタラス・ビロウスが軍内から全員にあいさつを送った(ズームを介して)時、特別に印象的な瞬間が訪れた。彼は、コモンズ誌に掲載された西側左翼との印象的な論争的論文でよく知られている。代表団は彼に、かれらの自由のために戦っていることで感謝した。
 ザクハル・ポポヴィッチが書いた綱領的文書(3つの異なったものの中でもっとも詳細なものが提案された)が最多票を獲得した(全文はまもなく翻訳され公表される予定)。それは、ウクライナのオルタナティブなビジョン――民主的、社会的、社会主義的なウクライナ――の諸要素を表現している。この文書は、この目標を達成するために、雇用主の独裁から勤労民衆の広大な多数を保護する義務を負う党が必要だ、と強調している。
 決議は、ロシア帝国主義の侵略と対決する抵抗における主要な勢力は労働者だと思い起こさせ、戦時にウクライナ当局がとった反社会的な諸決定を批判している。それは、国際的な協力の肯定的な前兆を認め、例として、ウクライナの対外債務の凍結に導いているその帳消し要求に対する幅広い支持、またウクライナに兵器を供給する要求および反労働者法に反対して戦う要求に対する世界最大の諸労組と民主的な左翼政党の支持、を指摘している。

国際交流の計り知れない豊かさ

 その決議に関して長く議論する時間は全くなかったが、それは、SR内部での練り上げとさらなる論争に向けた基礎とみなされている。そのような展望の下で、この評議会の最終日程として、代表団と新たに選任された指導者たちは、「ブレーンストーミング」のための2グループに関わり、戦略課題とSRにとっての目的が何であるべきかを練り上げることを試みた。
 この評議会の後、ENSU代表団のアルフォンス・ベックは、ウクライナの諸労組が西側の仲間に期待していることを聞くという目的をもって、ウクライナ労組連合(FPU)とウクライナ自由労組連合(KVPU)の指導者たちと会合をもった。両者とも、具体的な人道援助および労働法と労働者の権利をめぐる闘いを注視している。今のところ両連合とも、闘争への障害として戦争状態を強調している。それらは今も、新しい新自由主義的な改定法の実行に向けた政府の姿勢を精査し続けている。可能な共同作業を実行する目的で、それら内部での(われわれの場合はそれらとの)接触は維持されるだろう。
 われわれ4人全員は、この評議会の重要性を大いに確信している――ウクライナの将来にとってまさに本質的な、左翼を、社会的で政治的な組織/運動を、建設する一歩として――。キーウに来てこの評議会に参加したことは、われわれがあらゆる諸困難にもっと気づくことを可能にした。つまり、ポストソビエトとポストマイダンのウクライナに特定的な困難、および世界の左翼も共有している困難の両方だ。
 中でもわれわれは、われわれを迎え入れたSRの同志たちがわれわれに示した、その時と友愛の温かさ、そして便宜に感謝を覚え感動させられた。評議会の前、最中、そしてその後の意見交換の豊かさは、この短く事実中心の報告でまとめることはほとんど不可能なものだ。しかしそこには、われわれから見て、評議会それ自体では討論されなかった多くの複雑な課題――中でも、政治的な関連、労働組合の情勢、占領された地域、「脱ロシア化」の空気とその行きすぎ、など――に関する腹蔵ない討論が含まれている。しかしそれだけではなくわれわれの意見交換は、音楽の夕べをも含んでいた。そこでは、ギター演奏や歌や飲み物がわれわれ全体をもっと近づけ、われわれは、人気を博した政治的歌の作者としての、ヴィタリイ・ドウディンがもつ個性の一面を見出した……。
 多くがSRの全同志に感謝している。われわれは、直接の国際主義者の結びつきがもつ決定的な重要性について、これまで以上に確信をもって戻っている。(2022年9月17日)

▼筆者は、フェミニストでアンティグローバリストのエコノミスト、また第4インターナショナルの指導的メンバー。元社会主義国家とユーゴスラビアの経験、およびEUシステムの変革について、集中的に研究してきた。(「インターナショナルビューポイント」2022年10月4日)

ルフォンス・ベックの連帯あいさつ

 親愛なる仲間たち、親愛なる同志たち。
 ウクライナと連帯する欧州ネットワークを代表し、またその労組作業グループの世話人として、私はこのソツイアルニイ・ルク評議会であなた方とわれわれの政治的連帯を表明したい。
 あなた方は確かに戦争状態の中で一つの変化を経験中であり、それはまた、考え方と展望もまた変わる可能性があることを意味している。われわれは、そうした時にあなた方と共にあることに、またあなた方の考え、あなた方の討論そしてあなた方の決定を聞くことに非常な幸せを感じている。あなた方が考え決定するすべては、われわれにとって貴重なのだ。
 もっと特別にわれわれは、ウクライナの労働組合運動にわれわれが提供できるかもしれない助けや支援について、あなた方が考えていることを切に知りたい。あなた方が知っているように、英国、フランス、ポーランド、スペイン、さらに他の諸国の仲間たちが、人道的援助や医薬品や兵站の援助をあなた方の労組に送り届けた。新たな輸送隊が今準備中だ。
 われわれのネットワークはまた、さまざまな反労働者的で反労組的な諸法、特に法5371をゼレンスキー大統領が批准するのを止めるための国際署名キャンペーンも先導した。
 われわれはこれらの諸法のいずれでも批准を止めることができなかったが、世界中の下部労組活動家、労組、また政治指導者の多くに、それらがウクライナの労働者とその労組にもち出した脅威に対し、警報を出すことができた。
 われわれのネットワークはまた、連帯と闘争の国際労働者ネットワークやレーバー・スタート・ネットワークのような、労働者の権利に対する他の国際的な支援者と共にも活動中だ。そしてわれわれはそれらと、ウクライナでの将来のキャンペーンで協力することに合意している。
 われわれは、ウクライナで今起きていることを関心をもって追い続けているという、また情勢が進展する中でもわれわれは連帯を継続するつもりだというメッセージを、あなた方の諸労組に届ける。これがウクライナの労組を助けたということ、そして、法5371は戦争が続く間だけ適用されるためのもの、という決定に影響を与えたのかもしれない、とわれわれは信じている。
 われわれはまた、労働者の権利に対するさらに多くの攻撃が今計画されている、ということも知っている。したがってわれわれは新たなキャンペーンを実行しなければならないだろう。しかしわれわれは、あなた方がどのようなキャンペーンを重要と考えているか、を知りたい。どんなものというだけではなく、あなた方の考えでは、それらにわれわれがどう取り組むべきか、ということもだ。
 われわれはまた、他の欧州の労働組合運動がウクライナに対し現在もっている理解と関与の程度を説明し、それがどのように改善され得るかを討論する必要もある。より効率的で統一され、合意された目標に可能な限りの強さで焦点を絞ることができるキャンペーンをわれわれが共に築く可能性を得るのは、進行中の対話を通してだ。
 最後に私は、われわれの労組作業グループはウクライナの諸労組との間で接触を確立することに大いに関心をもっている、と強調したい。その接触はキャンペーン活動と連帯援助に対する可能性すべてを探るのに役立つに違いない。
 たとえば、ウクライナの労組は、今準備されている次の反労組法に反対する国際キャンペーンを始めたいと思うのだろうか? それらはまた、他の欧州でまた国際的に、労組や諸団体の参加に基づく何らかの種類の人道援助あるいは復興援助の構想を始めるのも助けたいだろうか? それらは他のどんなタイプの協力を好むのだろうか? そうした疑問について諸労組の考えを知らせる観点に基づいて、私はまたこの訪問の中で、ウクライナの労組活動家にインタビューも追求しようと思っている。
 このようにわれわれすべての関心は、あなた方ソツィアルニイ・ルクの同志たちがわれわれに語ることを聞き取り伝えることだ。まさに、再建局面に向け諸関係と相互理解を、戦争の真ん中で、今準備し始めるために。そしてその局面では、労働者階級、諸労組、さらにソツイアルニイ・ルク自身が、オリガルヒと他国籍企業によってではなく、ウクライナの勤労民衆によって統制される経済を求めて戦いつつ、ウクライナの未来に対し言うべき多くのことをもつことになるだろう。
 われわれは共に続けるだろう。あなた方の勝利はわれわれの勝利になるだろう。われわれが欲するものは自由なウクライナであり、世界の抑圧された人々と連帯した、社会的に公正な、環境的に持続可能な、真に民主的で平和な欧州だ。
 プーチンの侵略に対するあなた方の民衆の犠牲とヒロイックな抵抗は、先のビジョンを実体あるものにし始めるひとつの機会にほかならない。(「インターナショナルビューポイント」2022年10月4日)

  

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