サウジアラビア OPEC+が減産
決定の背後に何があるのか?
世界経済にも確実に影響
ジルベール・アシュカル
世界の原油価格におけるこの王国がもつ重みを前提とすれば、いつものように1週間前のOPEC+による決定でサウジの役割は決定的だった。なお、OPEC+とは、一定数の非OPEC原油輸出諸国、特にロシアを含む拡大されたOPECのことだ。
価格水準を維持する目的で原油生産の削減を求めたこの決定は、国際的な、特に米国内で大きな騒ぎを引き起こした。それは、原油市場に対する実際の影響のゆえではなく、同じ程度で米国―サウジ関係に関するその重要性によるものだった。
世界的不況を
促進する決定
そこにある理由は、アラブ首長国連邦を含む他の諸国が、採掘能力の強化にそれまでに投資していたことを受けそれらの生産を引き上げたいと思っている中で、この会合に先立つ数ヵ月間、技術的な理由によってその生産を引き上げる能力が多くの国で不足したことが原因で、OPECの生産が以前に設定した上限以下だったことだ。
事実を言えば、原油価格決定における最大の考慮事由は、OPECあるいはOPEC+ではなく、むしろ世界市場における需要と供給の変動だ。この角度から見れば、OPEC+はその最新決定により、世界経済を不況に押しやることを助けることで、世界的な原油消費の低下に貢献している。
一方その不況は、一定数の要素が原因で恐れられているものだ。それらの中でも、コヴィッド19パンデミックがつくり出した大規模な世界的危機の作用、特にロックダウンを通じたゼロコロナ政策の実行に対する北京の執着が原因の中国経済の収縮がある。そして中国経済に対するその政策の代償はひどく高い結果となり、それに関しては、予見可能な将来における出口がその放棄を除いて全くないのだ。問題は、ウイルスが絶え間なく変異し続けていて、その中で連続的なロックダウンが反応としての集団免疫創出を妨げている、ということだ。
決定は明白に
ロシアの利益
もちろん、中国の問題は、ロシアによるウクライナ侵略から生まれている諸々の危機と混じり合っている。そしてその侵略による経済的結果は、ロシアを犠牲にしてだけではなく、特にEU経済をも犠牲にして悪化し続けている。
ロシア経済は、エスカレートを続けるEUのボイコットから帰結する燃料価格、特に天然ガス価格の上昇から利益を得てきた。そしてそのことが、戦争の結果として、またロシアに課された他の制裁として、ロシアが招いた損失を部分的に埋め合わせてきた。他方EUは、諸物価の上昇により主要に影響を受けている地域だ。
ロシアの侵略は、EUをやっかいな立場においている。ロシアはこの物質を求める市場の性格の力で、その燃料の買い手をそれでも見つけると思われると気づいたとしても、EUはロシアの戦争機構に資金を提供しているとは見られたくないからだ。
OPEC+の決定は、EU市場の徐々に進む封鎖や制裁がつくり出した技術的な問題を含む、いくつかの理由で燃料生産の縮小を迫られているロシアに合わせる形で、ロシアの利益に奉仕している。しかし、サウジ王国の利益に関しては何があるだろうか? サウジは生産引き下げ決定において優位性をもっているのだ。サウジには最大の生産余力があることを前提とすれば、先の決定はその生産が最初に引き下げられることを意味するからだ。
サウジの利益に
背反は明白だが
証拠は、モハムマド・ビン・サルマンに全面的な責任があるその決定は、いくつかの理由からサウジの真の利益に反している、と指し示している。その決定は今後世界経済の停滞傾向を悪化させるだろう。こうして中期的なその結果は、経済危機に対する消費側の怖れを悪化させることにより、他のところで起きたと思われる需要のより大きな縮小になるだろう。
何よりも王国のこのふるまいは、半世紀前その石油産業を国有化した後の数十年間普通だったふるまい、つまりその保護者である米国との共謀に反している。後者は、その利益に一致するように世界の原油市場を管理する上でこの王国を頼りにしてきたのだ。それは、2014年にイランとロシアに対してサウジが発動した原油価格戦争で頂点に達した実行例だ。これは、テヘランに対する圧力を強め、翌年の核合意への署名にイランを導く点で、またロシアのクリミア併合とウクライナ東部に対する軍事介入後にロシアに課された西側の制裁の重みを増す点で、重要な役割を果たした。
この王国は今、OPEC+の公表をもって、ロシアの上等と言うべき利益に奉仕するひとつの決定に踏み出している。実際それは、ウクライナでの戦争でロシアの立場を支持する明白な切望に端を発しているように見える。
これにはふたつの結果がある。第1は、このサウジの決定が、炭化水素への依存は多面的な害に対するひとつの根源、という欧州の感情を強めている、ということだ。そしてその害には大規模な環境的損傷と政治的な害が含まれ、後者に関しては、これらの燃料がかつて以上に、欧州がもはやいかなる信頼ももてない者の支配下にある政治的な武器になっているからだ。
これは、再生可能エネルギーと核の両者として、代わりとなるエネルギー源開発を通して炭化水素を不要とする、そうした欧州の探求を加速するだろう。炭化水素廃絶というEUの傾向は、環境の課題の圧力の下に成長し始めているが、ウクライナに対するロシアの侵略はそれに強い刺激を与えることになり、サウジの決定はただその加速を助けるだけになるだろう。
共和党への支援
が民主党の確信
米国内では、サウジの決定がウクライナでの戦争の中でロシアに味方するものと、またある種の裏切りと解釈された。バイデン米大統領は、リアドの決定に対し自ら自身の不満を表した。そして今、王国内で米国が監督指導しているパトリオット防空システムの撤退を含む、米国の軍事的保護を取り上げることによって王国に罰を与えることを求める彼の党内の者たちから、圧力を受け続けている。サウジの決定の影響を強めているものは、米大統領がサウジの王子に関する言明された選挙キャンペーンの立場を取り消し、この王国を訪問、少し前に彼と会い、ジャマル・カショギ暗殺に関する道義的立場よりもウクライナにより生み出された戦略的利害を上に置いた、ということだ。
民主党内にはひとつの確信が固く定着することになった。それは、モハムマド・ビン・サルマンがその決定によって原油価格に上昇圧力をかけ、こうして諸物価の全般的上昇を悪化させ、翌月の中間選挙における共和党のチャンスを高めることを実際に欲した、というものだ。
共和党は現に、かれらのキャンペーンの焦点を高物価に合わせ、その原因をバイデンの経済政策に帰せている。そしてかれらはサウジの決定を、外交政策における米大統領の破綻の印と描いている。そしてその破綻は幅広い主要項目にわたり、かれらはその下に、アフガン撤退、およびウラジーミル・プーチンのウクライナ侵略を抑制する点での無能、を置いている。現在のサウジ政権が共和党の方を好み、彼らの友人であるドナルド・トランプが2年の内にホワイトハウスに戻ることを強く期待している、ということは誰にとっても何の秘密でもない。
(2022年10月11日、この論考は元々「アル・クズ」にアラビア語で掲載され、「ニューポリティクス」掲載に向け自動翻訳された)(「インターナショナルビューポイント」2022年10月17日)
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