ラテンアメリカ 左派政権の再登場
新たな「ピンクの波」か?
取り巻く環境はより劣悪
フランク・ガウディショー
「進歩派」諸政権
前進から転落へ
近頃、いわゆる「進歩派」諸政権への回帰という話しが現れてきた。そうした政権を記述する方法はあり得るものとしていくつかある。そしてわれわれは、「進歩派」という用語の使用をめぐって長い討論を行うこともできるだろう。この呼称を使うことは、2000年代はじめに比較できる左翼あるいは民族的―民衆的政党に対し、むしろある種の期待を描くことをあり得るものにしている。その場合われわれは、2002年からの当時のベネズエラにおけるチャベスの選出、ブラジルにおけるルラの選出、次いでボリビアのエボ・モラレス、エクアドルのコレアの選出を思い起こさなければならないだろう。
そこには、極めて有利な経済的全体構図によって促進された社会的前進を伴う、これらの進歩派政権のいわば「黄金時代」というむしろ長い時期があった。そしてその経済的全体構図は、支配的諸階級の権力に根底的な挑戦を行うことなしに、採掘権地代(鉱物、原油、アグリビジネス)の再配分からなる諸政策の実行を可能にした。
次いでわれわれは、クーデターや制度的反乱によって画された、あるいは選挙を通じた右翼の回帰、また反動的で保守的な諸勢力の残忍な台頭によってさえ、非常に厳しい時期に入った。それはまた、外国の制裁が原因の、しかしまた内部的な諸々の理由(「ボリブルジョアジー」、腐敗、地代依存経済、その他)にもよるボリバリアン運動の崩壊によって加速された背景の中で、進歩派の前進に、あるいは「上からの改良」に内包された戦略的な諸限界をも認めるものだった。
「後期進歩主義」
としての再登場
2018年以後われわれは、メキシコのロペス・オブラドールの選出、そしてその進展の中での、アルゼンチンにおけるクリスチナ・キルチネルに体現された左翼ペロニズムの権力復帰をもって、ある人びとが「後期進歩主義」の時期として言及するものの回帰を目撃することになった。
ボリビアでわれわれは、2020年に、新たな人物と反動派と対決した明確な選挙の勝利に基づくMAS(社会主義への運動)の権力復帰を見た。われわれはさらに、ホンジュラスを、またペルーにおけるペドロ・カスティージョの驚きの選出を挙げることもできる。
この勢いは、この大陸上のもっとも暴力的なオリガルヒのひとつによって支配された国における、むしろ中道左翼の側に立つグスタボ・ペトロと彼の副大統領候補のフランシア・マルケスの重要な選出によって、強化された。そしてフランシアは、特に彼女の出身母体であるアフリカ系コロンビア人コミュニティの闘争にまさに献身した女性だった。
この「後期進歩主義」の未来は今、あらためて明白に10月のブラジルの選挙で最後まで闘い抜かれようとしている。そこでルラは、1回戦の後一定の有利な位置にいる。そこではしかしまたボルソナロも、広範な社会層の中に、また国家諸機構内に十分に埋め込まれているように見える。
全体構図は
多元的動乱
留意されなければならないことだが、この新たな時期は、パンデミック、急速なインフレーション、アメリカ州における気候変動の影響、そして深い経済的危機(ハイチやベネズエラを「極端な」例として)が刻まれた、非常に劣悪化した環境の中で起きているのだ。
それはまた、諸々の民衆反乱をも特徴としている。すなわち2019年には、チリ、コロンビア、ハイチ、エクアドルで大規模な決起と反乱があり、それは多様な要素を伴った、しばしば階級横断的で極めて強力で急進的な決起だった。そしてそこでは、フェミニスト運動、先住民運動、さらに急進化した若者たちが重要な場を占めた。
この若者たちは、政治システムと、右翼であろうが左翼であろうが諸政党と、争っているが、それは、いくつかの国では50%以上になる記録的な棄権率で証明されている。「底辺からの」これらの決裂はそれでも、それらにエネルギーを注ぎ、出口を提供できる大きな反資本主義の組織が不在の中で、政治的に登場するのが難しいのに気づいている(チリの経験がまさに今われわれに思い起こさせたように)。
それは、動乱という全体構図であり、そこでは右翼と極右が、資本の全面的な支配の下にある報道界の支援を受けて、福音派教会という保守的な諸潮流と、また大地主および大企業としばしば連携し攻勢にある。国家の対応、抑圧、専横もまた、オルテガ一味によるニカラガの例のように、独特の形に具体化される可能性もある。
その背景の中で、帝国主義間衝突もまた勝負がつくまでやられようとしている。そしてそれは、地政学的レベルと軍事のレベルではいまだ「主人」にとどまっている米国と、経済的存在感が全面的に拡張態勢にある中国との間で、勢いを増そうとしている。(「ランティカピタリスト」誌2022年10月号より)
▼筆者はフランスのトゥルーズ・ジャン・ジョレス大学のラテンアメリカ史教授。またフランス・ラテンアメリカ協会の共同代表でもあり、フランスのコントレテンプス誌の編集委員会に加わっている。(「インターナショナルビューポイント」2022年10月25日)
The KAKEHASHI
《開封》1部:3ヶ月5,064円、6ヶ月 10,128円 ※3部以上は送料当社負担
《密封》1部:3ヶ月6,088円
《手渡》1部:1ヶ月 1,520円、3ヶ月 4,560円
《購読料・新時代社直送》
振替口座 00860-4-156009 新時代社