米国 中間選挙
黒人、女性、若者がトランプ破る
問題は左翼の路線確立
ダン・ラボッツ
選挙戦の
全体構図
米国中間選挙で民主党は予想以上に善戦し、共和党が「赤い津波」(赤は共和党の色)になるだろうと主張したものを阻止した。バイデン大統領は「民主主義にとってよい日だった、そして私は米国にとってもよい日だと考える」と語り、さらに大統領二期目への立候補も計画中、と公表した。
11月11日現在今もって、上院も下院も予想するには接近しすぎている。上院立候補者のどちらも過半数を獲得しなかったジョージアでは、12月6日に決選投票が行われる予定だ。ネバダとアリゾナも予想には接近しすぎであり、多くの下院の争いも集計が進む中で依然決着が着いていない。共和党が下院を支配できると思われるが、民主党が上院で多数を維持する可能性がある(ジョージアの結果を待たず民主党多数が確定:訳者)。民主党の成功は、若い有権者、女性、また黒人に基礎を置いていたように見え、何人かの進歩派候補者も成功した。
今回の選挙は、前大統領のドナルド・トランプ、および共和党の極右の立場に立つ彼の候補者たちにとっての敗北だった。そして2024年大統領選における彼の機会を狭めている。
中間選挙は、両党が160億ドル以上を費やす形で、米国史上そうした選挙でもっとも費用がかかるものだった。両党には億万長者が資金を出し、その者たちのマネーが共和党の寄付全体の20%、民主党の寄付全体の14・5%、を構成している。民主党は、2億ドルきっかり民主党を上回っている共和党よりも、より少額の寄付を受けている傾向がある。民主党はいつものように、いくつかの主要労組の支援を受け、それらの労組は、戸別訪問や電話勧誘に、さらに投票日に支持者を連れ出すために労組メンバーを動員した。とはいえ多くの白人労働者――建設労働者や鉄鋼労働者――は、共和党候補者に票を投じた。
赤い波押し返し
民主党にも驚き
赤い波を押し返した民主党の成功は、民主党にとっても共和党にとってもひとつの驚きとして現れた。共和党は、インフレ問題、犯罪、また移民統制を軸に運動し、他方民主党の主要課題は女性の中絶の権利と米国民主主義の保全だった。そして民主党の課題は、女性と若い有権者による高い投票率に導くことになったように見える――ほとんど全員の驚きとなるまで――。民主党は、黒人票の80%内外を当てにできる。一方共和党はラティーノの中で一定の成果を得たが、依然60%と見積もられる人々は民主党に投票した。
民主党陣営の中では、進歩派の候補者たちが成功した。テキサスのグレッグ・カサー、フロリダのマクスウェル・フロストと同じくペンシルベニアでも進歩派のサマー・リーが勝利し、バーモントでは上院議員のバーニー・サンダースの支持を得たレベッカ・バリントが勝利した。
進歩派のレッテルを拒否しつつも進歩的観点を保持しているジョン・フェッターマンは、労働者階級の候補者として立候補し、ペンシルベニアの上院議席を勝ち取った。「これまで失われたすべての職を代表して、これまで閉鎖されたすべての工場を代表して、懸命に働いているが全く昇進していないすべての人を代表して、われわれが運動している目的を私は誇りに思う」、とフェッターマンは語った。さらにキャンペーン中に脳卒中の発作に襲われたフェッターマンは「公衆衛生ケアは基本的人権だ。それが私のいのちを救った。そしてそれは、みなさんがそれを必要としなければならないとき、みなさんのためにすべてそこになければならない」とも語った。
議席をいくつか失う形で民主党の結果が貧弱だったニューヨーク州では、社会主義者のアレクサンドラ・オカシオ・コルテスが、この州の党に関し基盤と支部の再組織化を訴えて声を上げた。彼女は「何の秘密でもないが、ニューヨーク州の党指導部の圧倒的部分は、大金と保守派に、また骨化した機械的政治に基盤を置いている。そして後者は、活動と無縁で投票権を奪われた極度に活力のない支持基盤を生み出している」「われわれは党機構の底辺から上への再建を必要としている」と語った。
大統領への立候補を計画中――彼の健康と家族との相談次第だが――というバイデンの公表は、民主党にとってはひとつの問題になるかもしれない。バイデンは79歳(つい最近80歳になった:訳者)であり、多くから見て高齢すぎる。そして当座、明白な代わりの候補者はひとりもいない。そして2度の予備選で敗北したバーニー・サンダースも今81歳なのだ。
共和党指導部
急速に問題化
この数年共和党を牛耳ったドナルド・トランプは、上院と下院に向け、また州の選挙に向け一連の候補者に支持を与えた。その多くはトランプにしたがって、2020年の大統領選結果を否認し、本当に勝ったのはトランプであり、バイデンは正統な大統領ではない、と主張した。他の者たちは、さまざまな類の陰謀論の信奉者――反ワクチン派とQアノン追随者――だった。何人かは極右民兵につながり、少なくともひとりは、2021年1月6日の反乱の時に議事堂の中にいた。何人かはまさに変人だった。
有権者はこれらの候補者の多くがあまりに風変わりだと気づき、それらの者に投票するのを止めた。結果としてこの数年では初めて、何人かの共和党政治家と右翼メディアの人物たちが、トランプを批判し、彼はもはや党の指導者であるべきではない、と示唆した。ある者は、76歳という年齢に対し、彼も高齢すぎると考えている。
同時に、共和党のトランプのライバルである44歳のロン・デサンティスは、フロリダ州知事再選を求める選挙戦でほぼ60%の票を受け取り、圧勝を果たした。デサンティスは挑戦するつもりであり、大統領候補者および共和党の指導者としてトランプに取って代わる可能性もある。トランプと全く同じように保守主義者であるデサンティスは、これまで抑圧的でレイシスト的な移民政策を実行し、中絶に反対し、「批判的人種論」(レイシズムの議論に向けられた符合的な用語)に反対し、ジェンダーと性的自認について低年齢の子供に教えることを禁止する法律である「ゲイを語るな」で悪名をはせるようになった。
トランプが彼による共和党への締め付けを失うことになるのかどうかを言うには早過ぎる。しかしこの掌握は緩みつつあるように見える。
より深まった
左翼の周辺化
米国の極左は歴史的に、共和党と民主党は両者とも事実上同じ資本家政党、相争っても似たもの同士だ、そして勤労民衆は自分自身の政党を必要としている、と力説した。ある者たちは、それは革命政党でなければならないと、また他の者たちは、それは労働党であるべきだと論じ、さまざまな共産主義者と社会主義者の政党が候補者を立てた。1996年には、一団の労組が労働党を創建したが、それは一度も全国的な候補者を立てなかった。左翼の立場をとる多くは後に緑の党を支援した。しかしながら変わることなく、左翼の立場をとる候補者への支持は民主党から票を取り上げ、共和党を選出する助けになる、という怖れがある。
米民主的社会主義者に支持された、民主党内でのバーニー・サンダースの2016年大統領選予備選キャンペーン以後、またトランプの極右政治の脅威によって、ほとんどの左翼はトランプとファシズムに対するひとつの防波堤として民主党を支持してきた。
結果は、社会主義者が民主党内で立候補するか、それ以外では訴えが聞き届けられる機会がまったくなく、いわんや選出の機会もない、というものになっている。緑の党や他の左翼政党が候補者を立てる場合、それらは全体としてほんのわずかの票を得るだけだ。
左翼内の論争は、民主党内に未来の社会主義政党を建設する可能性はあるのか、あるいは過去と同様に独立した社会主義者の候補者を立てるべきか、というものだ。すべてが、労働者階級の大衆運動が現実になるまで、社会主義政党の創出が日程に載ることはない、という点で一致している。いずれにしろ恐れられていた赤い波の崩壊は、運動の建設と正しい政治的路線を見出すことの両者に、さらに2、3年を提供している。(2022年11月11日)(「インターナショナルビューポイント」2022年11月12日)
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