イラン 深く差別的な神政独裁体制との衝突

フェミニスト運動に
何があろうと後戻りはない

ババク・キア

 不適切な髪の整えを理由にした「風紀警察」による9月16日のマフサ・ジナ・アミニの殺害は、広大な民衆の抵抗とイスラム共和国を拒絶する運動の引き金を引いた。
 この殺害は怒りを溢れさせる最後の1滴だった。60日近く、女性、若者、民族的マイノリティ(クルド、バルチ、アラブ、アゼリス、その他)が決起の前線に立ってきた。もっと一般的には、マフサ・ジナ・アミニの暗殺は、この原理主義の基盤と神政主義的独裁の諸法に内包された女性蔑視の本性にあらためて光を当てることになった。

法律すべてが
イスラム的に


 ムラーの権力は1979年以来、自身を家父長的で不平等な社会と住民の大きな部分の信仰心に基礎付けながら、シャリアとシーア派教義に関連づけてひと組の諸法を制定してきた。ホメイニにとっては「すべてがイスラム的でなければならない」。したがって女性は、彼女たちの身体と暮らしに対する男の全面的な支配を確立するような、ひと組の差別的な諸方策の標的だ。義務的なベールは、女性の髪は性的挑発の根源、という事実によって「正当化」されている。
 こうして、1979年の反君主制革命の間男と女は肩を並べていたにもかかわらず、この体制は即刻、女性を家庭内の小部屋に押し戻そうとその支持者たちを動員した。「ベールか、それともわれわれがたたき出すか」と翻訳できる、「ヤ・ロウッサリ、ヤ・トウッサリ」のスローガンによって象徴化されて、全体の法的、制度的な武器が正規の場所に置かれ続け、そこにはこの新たな政策を執行することに責任を負う諸部隊の創出が伴われた。
 もちろん、これは抵抗がないまま行われたのではない。そしてイスラム体制の到来時点から抵抗はあった。義務的ベールとこの男主義的方向に反対した1979年3月8日のイラン女性の大挙したデモ(その禁止をはねのけた)は、これまでに止んだことのない個人的抵抗と集団的抵抗の始まりを印した。
 義務的ベールの導入には、男のために留保されなければならないとみなされた職からの女性の解雇や公衆衛生制度、教育、もっと幅広く公共的スペースにおける隔離のような、他の諸方策が伴われた。これらの方策のすべてや他の多くは、女性を公的な領域から追い出し、彼女らに対する社会的で政治的な支配を押しつけることを狙いにしている。
 2017年、イスラム共和国が出した最新統計は、体制の法的諸規定すべてが労働力市場に対する女性の平等な参入への障害を形作っている、と露わにした。女性は大学卒業生の半分を構成しているが、男の64・1%に比べ、女性はその14・9%しか雇用されていないのだ。この年公式には、女性の失業率は20・7%だったが、それは男の2倍だ。

宗教的市民法が
抑圧の法的道具


 神政体制が制定した市民法は、夫は家長と定めている。そのようなものとしてその者は、彼の妻が働くことを禁じることができる。同じように、パスポート申請は夫による前もっての認可にしたがわなければならない。僅かの例外的なケースを除いて、女性たちは彼女たちの夫が同意しなければ離婚することができない。中絶は禁止されている。
 施行されている法に従えば、男あるいは女が婚外で性的関係をもつ場合、彼あるいは彼女は石打の死刑を宣告される。しかし同時に体制は複婚を認めている。男は事実上、限られた時間望むだけ多くの女性と結婚できる。彼はまた、無期限に4人までの女性とも結婚できる。この者は事実上、たとえこの数を超えても、それは一時的な結婚だった、と常に主張できる。したがって男は、同じ違反行為が理由でも、施行中の法に依拠して石打の死刑を逃れる可能性をもっているのだ。それなのに女性には石打の処刑が適用される。
 この市民法は、8歳半の幼女の結婚を合法とみなしている。少年の場合、合法的年齢は15歳だ。それはまた、少女の「法的な保護者」の合意をもって、「思春期前の結婚証明書」も認めている。たとえば、父親や祖父は、彼の2歳の娘や孫を60歳の男に嫁がせ、「ミルク権」と呼ばれる「持参金」を交換として受け取ることができる。母親はそこに介入する権利は全くない。
 この差別的な仕組みすべて、あるいは女性がこうむっている肉体的、道義的、社会的暴力すべてを詳細に記すには長すぎることになるだろう。
 現在の抗議の波は、過去43年にわたる社会的、政治的、民主的な、またフェミニストの抵抗の一部だ。今日の運動は、イラン社会のフェミニスト的意識における相当な前進的飛躍を可能にした。そして現在の衝突の結果がどうあれ、後戻りは決してないだろう。
 イスラム共和国は資本主義の家父長的で反啓蒙主義的な神政国家だ。イラン人民は、そして何よりもあらゆる女性、労働者、被抑圧民族、宗教的、性的マイノリティは、急進的左翼、進歩的諸団体、そして諸労組の連帯を必要としている。(「ランティカピタリスト」より英訳)

▼筆者は、「イラン労働者との社会主義的連帯」の活動家であり、第4インターナショナルのメンバー。(「インターナショナルビューポイント」2022年11月28日) 

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