パキスタン 大洪水:最新状況と支援の訴え
復旧と救援への助力の強化を
ファルーク・タリク
6月半ばから9月にかけたモンスーンの豪雨は、パキスタン中に大洪水とよどんだ水を残し、人命の喪失と家畜の死を、さらに家屋とインフラ……の広範な破壊を引き起こした。保菌生物由来の、また水が原因の疾病の発生に関する最初の報告が、バルチスタン州とシンド州……からもたらされた。現在冬の始まりと共に、被災住民――避難者とその他双方――は冬の寒気に備えるための支援を必要としている。……パキスタン・キサン・ラビタ委員会、労働者教育財団、小作人財団は、国際社会に向けてパキスタンの復旧と救援に対する努力の強化を求める訴えを行っている。
被害の長期化
新たな苦難も
多くの地域で洪水は引いたものの、シンド州とバルチスタン州の大きな部分は今も水面下に残され、今後数ヵ月間そのままになりそうだ。滞留した水と二次的な影響が今、水に起因する疾病、不衛生な諸条件、さらに栄養不良の高まりという結果をもたらしつつある。
同時に、水道インフラが相当な被害を受けた。そして洪水の影響を受けた公共衛生システムが、大規模な公共衛生危機の危険に取り組むことを、またその緩和を害している。
それと同時に、冬の到来と共に被災住民は、寒冷な気候に備える支援を求めている。パキスタンで損害を受けた、また破壊された家屋の数は、現在200万戸を超え、内9月23日現在、120万戸は損害を受け、80万5000戸以上が破壊されている。
国家災害管理局(NDMA)は、6月半ば以後として、死者1600人以上、負傷者1万2850人以上と記録した。そこには、子供の死亡と負傷の、各々579人、4000人以上が含まれている。報告では、約790万人が豪雨と洪水が原因で避難を余儀なくされ、その中には、被災州の州災害管理局(PDMA)によれば、今救援キャンプで暮らしている約59万8000人がいる。
いくつかの報告は、2万3900校が損傷している一方、現在5000校以上の学校が避難住民の収容に利用されている。多くの人々が臨時キャンプ内の不衛生な諸条件の中で、しばしば基本的なサービス利用がまさに限られた中で暮らしていることで、水因性下痢、腸チフス、マラリアの問題がひとつの懸念として高まっている。
保菌生物由来と水が原因の疾病の発生に関する最初の報告がバルチスタン州とシンド州の諸部分から届けられた。妊婦と授乳女性(PLW)、および5歳以下の子供がリスクにさらされたもっとも脆弱なグループを代表する。そこには、少なくとも洪水で被災した8万3000人が妊婦で今後数ヵ月で出産を予定している、との見積もりが伴われている。
いくつかの評価によると、約1460の医療施設とそのセンターが損傷を受けたとしているが、それがさらに人々が医療サービスを受けることを限定している。一方、349ヵ所の冷蔵施設とソーラー駆動システムに対する損傷が、報告ではワクチン冷却の流れを途絶させることにつながっている。
9月8日から同14日のデータと同15日から21日のデータを比較した国連気象衛星センター(UNOSAT)によるひとつの予備的評価は、シンド州の多くの地域、バルチスタン州の二カ所、そしてパンジャブ州の一カ所が、1週間前に同様の洪水水位上昇の影響を受けていた、と示している。洪水は国の多くのところで停滞しているか引きつつあるように見えるとはいえ、シンド州では、ジャムスホロ、マリル、カラチ、サッタ、タンド・アライヤル、ミルプル、カス、ウメル・コト、サルパルカル、スジャワルの地区で水位の高まりが認められ、バルチスタン州のグワダルとラスベラの地区、パンジャブ州のクスバブ地区でも水位の高まりが認められた。
諸地域は以下の即刻の救援対応を必要としている。
食料保障と
農業の必要
◦もっとも脆弱な家計に対する目標を絞った無条件の食糧支援。
◦復旧のための条件付き食糧/現金支援、および特別な生計活動に必要なインフラ(たとえば、灌漑水路、漁船、地方道)、あるいはコミュニティサービス(たとえば医療施設)の創出。
◦生計の多様化活動(代わりの所得取得活動に関する訓練)を含む、生計機会復旧に向けた現金と商品券支援(CVA)。
◦家畜の伝染病に対するワクチンと餌の供与を通した残っている家畜の防護。
◦今後の農業播種期に先立った、重要な農業作物の耕作に向けた種子と肥料の供与、および被災農地と生計の復興に向けた支援。
◦損傷した動物の収容施設の復旧、および灌漑水路における急所の復旧とたまった泥土の除去。
公衆衛生の
早急な必要
◦公衆衛生サービスの早期修復、および耐久性のある復興。
◦医療施設外での医療テント、蚊帳、ベッド、マスク、手指消毒剤を含む、緊急トリアージ設置のための基本的医薬品と装備。
◦特にキャンプ内と洗浄施設が損傷したところでの、伝染性/感染性疾病の発生に対する危険緩和。
◦情報供与と衛生キャンペーンを通した、キャンプ内とコミュニティにおける疾病の伝染の防護
われわれの
救援活動
労働者救援キャンペーンの構成組織である労働者教育財団は、その地方ネットワークを通じて、洪水で被災した地域の日雇い労働者、労働者、小農民、また家内労働者のデータを集め、その地域の代表者と相談した上で、使える手段すべてを通して発展中の人道的危機に対抗する緊急介入を計画した。
計画した介入のために、シンド州ではラルカナ、シカルプル、カイルプルの諸地区が、バルチスタン州ではキラ・アブダラーが、南パンジャブ州ではデラ・ガジ・ハーンが、カイバル・クワトゥン州(KP)ではチャルサッダとマルダンの諸地区が選定された。
これらの介入には、即刻の必要を満たす現金の配布、厳しい冬の到来を考えた冬用ベッドや暖かな衣類の提供、蚊や水が原因の疾病に苦しむ洪水被災者を治療するための医療テントの手配、農民への肥料提供、洪水で損傷した灌漑水路の修理、飲料水用のソーラー駆動ポンプ設置が含まれた。
これまでのところ、1人当たり5000ルピーとした現金が、もっとも脆弱な被災者600人に渡されている。シンド州カイプル地区の156人の女性には、その圧倒的多数が夫を失っているために、額を1万ルピーに引き上げた。
少なくとも600人には、毛布あるいは掛け布団とマットレスのセットが渡され、他方暖かな衣類とジャケットが約1000人の人々と子供に提供された。
犠牲者への医療提供のためには、これまでのところ皮膚病のための1ヵ所を含んで11ヵ所の医療キャンプが組織され、そこでは疾病に対する簡易診断と医薬品が無料で提供された。
キラ・アブダラーではソーラー駆動ポンプが設置の途上にあり、もうひとつがシカルプルで計画中だ。灌漑水路もまた、約1000軒の小規模農家に役立てるため修理が進行中だ。(2023年1月2日)
▼筆者はパキスタン・キサン・ラビタ委員会書記長。(「インターナショナルビューポイント」2023年1月5日)
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