ロシア社会主義運動(在外支部)の声明 2月15日

「戦争との闘い」がわれわれの主張

プーチン主義の敗北が不可欠

 この1年間、ウラジーミル・プーチン政権は、帝国の復活という信じがたい目標の名のもとに、ウクライナ人を殺し、何十万人ものロシア人を死に追いやり、核兵器で世界を脅かしてきた。
 プーチンの侵略と独裁に反対するわれわれロシア人にとって、この1年は、われわれの名のもとに日々おこなわれる戦争犯罪に対する恐怖と恥辱の1年だった。
 この戦争から一年という節目に、われわれは平和を希求するすべての人々に、プーチンの侵略に反対するデモや集会に参加することを呼びかける。
 残念ながら、来週末に開催される「平和」集会のすべてが、ウクライナとの連帯のための行動となるわけではないだろう。欧米諸国の多くの左翼はこの戦争の本質を理解せず、プーチン主義との妥協を提唱している。
 われわれがこの声明を書いたのは、海外の同志が状況を理解し、正しい立場をとれるようにするためである。

ウクライナ侵攻
は反革命戦争だ

 欧米には、この戦争の原因がソ連の崩壊、「ウクライナ国家創出の矛盾した歴史」、核保有国間の地政学的対立などにあると書いている人々がいる。
 こうした要因の重要性を否定するわけではないが、これらのリストの中に、起きていることの最も重要で明白な理由、すなわち旧ソ連圏とロシア自体の民主的な抗議運動を抑圧したいというプーチン政権の願望が含まれていないことは驚きである。
 2014年のクリミア半島占領とドンバスでの戦闘行為は、親ロシア派である腐敗したヴィクトール・ヤヌコヴィッチ政権を打倒したウクライナの「尊厳の革命」、および2011年から翌年にかけてのロシア人による公正選挙を求める大規模デモ(「ボロトナヤ広場抗議行動」として知られている)に対して、クレムリンが反応したものであった。
 クリミア半島併合は、プーチンにとって内政上の勝利だった。プーチンは、自らの社会的基盤を拡大し、反対派を孤立させ、マイダン革命を人々を脅かす悪霊へと変えてしまうために、報復主義的、反西洋的、伝統主義的なレトリック(および政治的迫害)をうまく利用したのである。
 しかし、クリミア併合のあとに起きた支持の高まりは長くは続かなかった。2010年代後半には、経済の停滞、不人気な年金改革、アレクセイ・ナヴァルニーらによる政府高官による腐敗の暴露などによって、特に若者の間でプーチンの評価は再び低下した。抗議行動が全国的に拡大し、与党「統一ロシア」は地方選挙で一連の深刻な敗北を喫することになった。
 こうした状況に駆り立てられて、クレムリンは政権維持にすべてを賭けるようになった。2020年の憲法改正国民投票(ロシア的基準でも前例のない不正を必要とした)は、事実上プーチンを終身支配者にした。新型コロナウイルスの流行を抑えるという名目で、ついに抗議集会が禁止された。議会外の野党指導者アレクセイ・ナヴァルニーを毒殺しようとする試みが実行されたが、彼は奇跡的に助かった。
 2020年夏のベラルーシでの民衆蜂起は、「西側諸国」がロシアに対して「ハイブリッド戦争」をおこない、「カラー革命」によってロシアとその衛星諸国を攻撃しているというロシアのエリートの信念を裏付けた。
 もちろん、このような主張は陰謀論以外の何物でもない。ロシアでは、記録的な社会的不平等、貧困、汚職、市民的自由の後退、ロシア型資本主義(天然資源レントを専有している寄生的な化石燃料寡頭制に基礎を置いている)の明白な無益さによって、社会的・政治的不満が高まっている。
 「西側諸国」を非難できるとすれば、それはウクライナ問題を含め、長年にわたってプーチン主義に迎合してきたことである。欧米のエリートは数十年にわたり、プーチンのロシアと「いつも通りのビジネス」をしようとしてきた。そのことによって、独裁政治が出現し、それが富を上位層に再分配し、外交政策を何の制約も受けずに遂行できるようにしてしまったのである。

プーチンに譲歩
しても平和来ず

 ウクライナへの侵攻は、プーチンが2014年のクリミアでの勝利を再現しようとしたものである。つまり、迅速な勝利を確保して、失地回復というスローガンの旗のもとにロシア社会を結集させ、反対勢力を最終的に粉砕し、(プーチン帝国主義が「歴史的ロシア」の一部とみなしている)旧ソ連圏における覇権を確立しようとしたのである。
 ウクライナ人の英雄的な抵抗はこの計画を頓挫させ、クレムリンが夢見た「短期間で勝利を収める戦争」を長期間にわたる戦争に変えてしまった。そして、そのことはロシア経済を疲弊させ、軍隊の無敵神話を打ち砕いた。追い込まれたモスクワは、核兵器で世界を脅かすと同時に、ウクライナと欧米諸国に交渉に入るよう促している。
 モスクワのレトリックは、(「人命を救い」「核戦争を阻止」するために)ウクライナへの武器供給に反対するヨーロッパやアメリカの一部の左翼によってそっくりそのまま語られている。しかしロシアは、占領した領土から撤退する気はない。領土が占領されているという状態については、ウクライナ政府と93%のウクライナ人が交渉の余地がないと考えている。ウクライナは、その代わりに侵略者に譲歩するために、ヨーロッパの歴史において暗澹たる前例がある政策をおこなう、つまり主権を犠牲にしなければならないのだろうか?

停戦だけでは
命は救えない


 では、欧米の援助が打ち切られれば必然的に起こるウクライナの敗北が、さらなる犠牲を防ぐのに役立つというのは本当だろうか? 専制政治や侵略と戦うよりも人命を救う方が重要だという(社会主義者の立場からすれば)自明ではない論理を受け入れたとしても、われわれはそうはならないと信じている。
 周知のように、プーチンはウクライナ全土の領有権を主張し、ウクライナ人とロシア人は「一つの国家」であり、ウクライナが国家としての地位を有しているのは歴史的誤りであると主張している。こうした状況では、停戦はクレムリンに新たな攻撃のための軍事力再構築の時間を与えるだけになるだろう。その中には、もっと多くのロシア人(ほとんどが貧困層と少数民族)を軍隊に徴兵することも含まれるだろう。
 もしウクライナが武器の供給がなくても侵略に抵抗し続ければ、ウクライナの兵士や民間人に無数の犠牲者が出ることになる。そして、ロシアが新たに占領した地域では、ブチャなどでその痕跡が目撃されたように、テロ行為が待ちうけることになる。

多極が抗争する
帝国主義の世界


 プーチンが、世界におけるアメリカの覇権排除を語り、「反植民地主義」(!)についてすら語るとき、彼はより平等な世界秩序を創り出すのだと言っているわけではない。
 プーチンの言う「多極化世界」とは、民主主義や人権がもはや普遍的価値とみなされず、いわゆる「大国」がそれぞれの地政学的勢力圏内では自由な支配権を持つ世界である。
 これは本質的には、第一次世界大戦や第二次世界大戦の直前期における国際関係システムを復活させることを意味する。
 この「うるわしき旧世界」は、独裁者、腐敗した役人、極右にとって素晴らしい場所となるだろう。しかし、労働者、少数民族、女性、LGBTの人々、小国、すべての解放運動にとっては地獄となるだろう。
 ウクライナでプーチンが勝利すれば、戦争前の現状回復どころではなく、「大国」に侵略戦争と核瀬戸際政策の権利を与える致命的な先例を作ることになるだろう。それは、新たな軍事的・政治的破局への序曲となるだろう。

ウクライナでのプーチンの勝利は何を生むか?


 もしプーチンが勝利すれば、ウクライナが征服されるだけではなく、旧ソ連圏のすべての国がクレムリンの意思に屈服させられることになるだろう。
 ロシア国内では、政権が勝利すれば、安全保障、化石燃料独裁政治による他の社会階層(とりわけ労働者階級)に対する支配、技術的・社会的発展を犠牲にした天然資源の略奪によって定義される体制が維持されることになるだろう。
 これに対して、ウクライナにおいてプーチン主義が敗北すれば、ベラルーシ、カザフスタンなどの旧ソ連諸国やロシア国内での民主的変革を求める動きに勢いを与える可能性がある。
 戦争に負ければ自動的に革命が起こるというのは楽観的すぎるだろう。しかし、ロシアの歴史には、海外での軍事的敗北が国内での大きな変革につながった例が数多くある。たとえば、農奴制の廃止、1905年と1917年の革命、1980年代のペレストロイカなどがその例である。
 ロシアの社会主義者は、プーチンや彼の取り巻きのオリガルヒのための「勝利」には用はない。われわれは、真の平和を望んでいるが、依然としてロシア政府との対話を信じているすべての人々に、ロシア政府がウクライナ領内から軍隊を撤退させることを要求するよう呼びかける。この要求を含まない平和の呼びかけは不誠実なものだからである。

◦戦争を終わらせろ! プーチンのウクライナ侵略に反対して、連帯して立ちあがろう!
◦徴兵を終わらせろ! ロシア人は大砲の餌食ではない!
◦ロシアの政治犯を釈放せよ!
◦ロシアに自由を!
(『インターナショナル・ビューポイント』2月17日)

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