アルジェリア ヒラク4周年
次への鍵は民衆の自己組織化
マームード・レチェディ
危機の充満と
ヒラクの勃発
2019年2月に始まった民衆的なヒラク運動の4周年に当たって、アルジェリアは権威主義と抑圧にもっと沈もうとしている。強力な国家が定着しかかっている!
定位置についた正統性のない権力は、自由と人民主権がその礎石だったヒラクの理想や民主的要求と逆に向かい、その権威主義的漂流の中に固まろうとしている。
2013年のブーテフリカ(ヒラク決起によって打倒された独裁者の元大統領:訳者)の病気によって、次いで2014年の石油価格下落によって引き金を引かれた体制の危機は、その内部対立を鋭角化し、その主要分派間対立を明るみへと押し出した。
ヒラクは体制の内部的弱体化のおかげで可能になった。2019年はじめの政治情勢は、すでに一方でのおびただしい抑圧と権威主義が特徴になり、そして他方での民衆諸層と中間層の購買力低下、およびこの地特有の大量失業の全般化が、ヒラクと命名された独立以後最大の民衆的運動の爆発的材料になっていた。コップはすでに満杯になっていて、ブーテフリカの5期目出馬発表が最後の一滴になった。
引き金を引いた要素の性格はどうあれ、ヒラクは、魔法使いの弟子すべてとあらゆる陰の指揮所を早々にすり抜け、その不意をついた。
体制の秩序回復
に寄与したもの
実際、ブーテフリカとその徒党の5期目に反対した最初の堂々としたデモを受けてそれを引き継いだのは、体制全体への、また政治権力に対する軍の掌握の繰り返された復帰に対する疑問突き付けだった。2019年4月のブーテフリカ追放後のその時点で、ヒラクの勢いは、全体のまた抜本的な体制変更を求める革命的感性を露わにした。
これこそが、権力を握る者たち、それらの主題を擁護する者たちが、すぐさま「ムバレク」と命名され憲法内に隔離された「最初の本物のヒラク」という考えを広め、第2のヒラク、つまり2019年4月以後を悪魔視し、今日までそれと容赦なく闘った理由だ。
そしてこの理由から、外国の帝国主義諸大国はすぐさま体制へのかれらの圧力を高めるためにこの好機に飛び乗り、慣例通りに新たな権力の認知と「ウィンウィン」の経済的協力を見返りに、自由主義グローバリゼーションの枠組み内でかれらの利益を確実化すると思われる「安定性」を保証するよう新たな権力を強化した。
石油と投資に関する新たな法、EUとの不公正な協力協定、私企業部門と雇用主に対する励まし、われわれの外部からの軍介入の憲法化、その他すべては、新たな「選挙」とテブン(現大統領:訳者)指名で始められた「新アルジェリア」のロードマップに対する外国からの支持を確実にするものだった。
しかし、われわれの国民的冨とわが国の政治的連携関係を目的とするこれらの外国からの圧力と脅迫は、世界レベルの地政学的権力関係の現在の進展において継続し、むしろまさしく現実になっている。そしてそれらは、体制の抑圧的で権威主義の政策とは著しく違って、国内の戦線と帝国主義者のあらゆる狙いに抵抗するわが国の能力強化を目的とする民主的な自由の早急な確立、および人民主権の尊重を要求する。
第1局面の権威主義的で混合され脆弱な体制は第2局面で、2020年3月の新型コロナパンデミックの爆発によって強化された。それは、抑圧を容易にし、ヒラクの新たな息吹を抑制した。そしてウクライナにおける戦争後の石油価格上昇が、体制の利権料補充、また棚ぼた的で望外の資金的なゆとりを可能にした。
こうして社会的戦線を静める「小さな方策」が可能になり、もったいぶったポピュリスト的やり方で周知されている。しかしそれらは、何十年にもなる経済的自由主義が生じさせた社会的な悲惨の程度には、また20年前……の購買力への厳密な追いつきにも対応していない。
しかし、ヒラクの明白な弱点を思い起こす目的では、また控え目ではあれ前途に控える道を照らす目的では、考慮に入れなければならない他の基本的な要素がある。と言うのも、ヒラクの現在の引き潮も、不可避的な新たな民衆的ヒラクと明日の社会的で政治的な諸闘争の流れを、深さをもって生じさせる可能性があるだけだからだ。
収支決算
の諸要素
この全体構図の中で、いくつかの鍵となる、また戦略的な要素が心にとどめられなければならない。
1.ヒラクは、抜本的で「革命的な」変革に関してそれが生み出した「大衆の自然発生性」と多幸感にもかかわらず、自由、社会的公正、人民主権を押しつけるために1年にわたって何百万人というデモ参加者が表現した要求を移し換える、明確で圧倒的影響力を秘めた政治的構想を作り出すことができなかった。
2.ヒラクにおける特に草の根での自己組織化の不在は、抑圧およびヒラクの代表者と自称する何人かの機会主義者の出現を容易にすることになった。民主的な民衆的かつ自立的な草の根の自己組織化なしには、何百万人という市民間に論争を組織することも、ひとつの政綱という形にヒラクの要求を具体化することも、人民主権の新たな伝統の確立を可能にすると思われる憲法制定運動の確立もあり得なかった。
3.ヒラクを推し進め、それにより強い社会的側面と進歩的な方向を与えるための労組エリートの関与不足、および労働運動の弱さは、多くの場合ヒラクを、その弱体化と後退を予示する曖昧かつ部分的な要求の中で動きがとれなくなるように変えた。ヒラク内での労働運動の周辺的な存在感は、ゼネストのような重要な闘争手段をそこから奪い取った。しかし2019年3月のゼネストは、ブーテフリカの退陣を同年4月に早めた主な武器だったのだ。
4.したがって、民衆の自己組織の統制下で行動し、体制へのオルタナティブを提供でき、ヒラクの民主的で社会的な熱望を具体化する展望の中で国を導くことができる、そのような統一した、民主的、急進的、進歩的な指導部の出現を期待することは不可能だった。
向かう先は
新たな危機
もちろん、ヒラクの収支決算に関する論争では熟考すべき他の要素が諸々ある。そしてそれらはこれからのこととして残されている。しかしながら、この控え目な提起では、そしてそれは他の提起を呼び掛けるものだが、今のヒラク4周年に当たって、私はこれまで見てきた側面を簡単に強調することが必要と感じた。そしてそれは、一方でヒラクの軌跡とその弱点を理解することを助けるという目的から、および他方では、明日の闘いを思い描きそれを寄せ集めるためにこのとてつもない集団的な民衆的経験から教訓を引き出すという目的から私には最も明白と思われた側面だ。
自立的な諸労組によって2月28日に向け発表されたゼネストは、この観点からグッドニュースだ。それはまさしく、労働組合の自由、また全体としての民主的な自由そしてストライキの権利への抑圧に対決する抵抗における組織された労働者の運動がもつ重要性だ。その規模と影響力がどうあれ、それは、ヒラクの民主的で社会的な熱望の放棄とあきらめを生じさせているわけではないが、確実に恐怖の感覚を植え付けた抑圧の空気を打ち破るだろう。
しかし、明日とヒラクから生まれた希望の再来を待ちつつも、闘いは今、そして以下を優先的要求として続けなければならない。
▼あらゆる形態の抑圧の即時停止。
▼あらゆる政治囚と良心囚の解放。
▼自由殺しのあらゆる法と法規条項の無効化。
▼あらゆる民主的な自由の効力ある行使への障害やその方策すべてを解くこと。▼司法と公共メディアの政治権力からの独立。
▼民衆の前に民主的で国民的な論争を公開し、本物の人民主権を可能にすること。(2023年2月24日)
▼筆者は政治活動家(不公正にあらゆる活動を凍結され抑圧を受けているアルジェリア社会主義労働者党〈PST〉の前書記長)。(「インターナショナルビューポイント」2023年2月26日)
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