フランス 反年金改悪決起

マクロンは自業自得の危機に闘いのペース上げ政府打倒へ
追い込まれたあげくの暴挙に徹底追撃を
レオン・クレミュー

 フランスにおける年金をめぐる闘争が一層厳しい対立になろうとしている。3月20日に首相不信任動議が僅か9票差で否決されたことで、憲法49条3項を使った年金改革法の実効化が効力をもつことになったが、この反民主的な強行突破は人びとの年金改革への反感をさらに高めている。この状況を伝える2つの報告を以下に紹介する。なお、双方とも前述の不信任動議否決前に書かれた。(「かけはし」編集部)

明らかな少数派に追い詰められ

 マクロンと彼の政府は3月16日に、憲法49条3項を使うことで国民議会でのいかなる票決もないまま年金に関するかれらの法を強要しようとすることで、強引に押し進むことをもくろんだ。これは、国民代表の票決すらないまま法の採択を押しつけ、議員たちにさるぐつわをはめることをかれらに許す本物の「強盗」行為だ(注1)。
 3月16日、3月7日以後いくつかの部門でストライキとデモが続いてきた中で、マクロン派は「それを終わらせ」ようとした。かれらは、労働組合運動全体から反対され、壁に、また国内の極少数派に追い詰められ、LR(共和党)指導部の公然たる支援にもかかわらず、この改革に関し国民議会内に過半数を作り上げることすらできなかった。エリザベット・ボルヌは彼女の法案を、2月末の下院第1読会で通すことができなかった。彼女は、3月11日の上院第1読会でそれを通すために、支持票を得ようと、上院共和党多数派との間で数多くの妥協を行った(マクロン派は、上院の349議席中100以下しか確保していない)。
 マクロンとボルヌはそれでも、共和党の支持に助けられて制度的なプロセスを全うできるとの期待の下、3月16日に議会両院の第2読会で討論を省いた票決を得ることを迫られた。これは上院では形式的手続きだった。しかし午後の下院では、票決へと移ることが冒険的なことになった。マクロンの議会グループは170議席に加えモデム(フランソワ・バイルが率いる)の51議席とホリゾンス(エジュアール・フィリップが率いる)の29議席しか確保していない。これは、今下院過半数が287であるときに計算上の合計が250でしかない。「大統領多数派」はしたがって少数派なのだ。
 数回計算した後で、LR議員の一定数はかれらの指導者たちからの支持に従うつもりはないということが明らかになった。共和党はもはや、議員がその議席をかれらの指導者たちから得た指名に負っているような、下院での固いグループではない。それとは逆にこの党は国民議会で、2012年から2023年までで228議席から61議席へと変わった。
 そして2023年に多くの場合地方の選挙区で生き残った者たちはかれらの議席を、その大統領選候補者であるヴァレリー・ペクレスが4・78%の得票率しか獲得できなかった党にというよりも、自身の地方的で個人的な重みに負っている。これらの被選出代表者は、完全に反年金改革の闘いの中にいる民衆的有権者によって何カ月もの間圧力下に置かれてきた。それは、16万人の有権者(基本的には基礎的自治体の議会代表団)により間接的に選ばれた上院議員よりもはるかに直接的な圧力だ。
 マクロンとボルヌはLRから40票近くを必要としていた。諸々の決起、ストライキ、国全体に、そして特に地方の地域や小さな町々に現れている社会的な政府に対する拒否感、これらから作られている政治的圧力に基づけば、明らかにこれは保証されていなかった。
 下院議員の投票はこうして、マクロンにとっての敗北と等しいものになったと思われる。下院の議事は、議事開始に合わせて予定されている事前却下という過半数の道議により、あるいは法を採択する票決の間の過半数の欠席により、直接止められる危険があった。それゆえマクロンは、他の憲法に同等なものが全くないような法外な権力を与える49条3項を使うことで票決の障害を克服することを選択している。

運動への新たな強力な触媒


 こうしてこの49条3項という絶対命令は3月16日以後強力な触媒となった。
 その前に3月6日から12日の週の中で、社会運動は3月7日に転換点に達していた。3月7日以後からのあらゆるところでのストライキを訴えたいくつかのCGT労組とソリデールの方向設定は、特にCFDTの立場を理由に労組間共闘の中での追随がなかった。労組間共闘は単に、闘争の拡大に向けたイニシアチブを各部門に預けたまま、国を封鎖するという呼びかけを3月7日に発しただけだった。
 3月11日と15日に全国労組間共闘が公表した続く日付けは、ストライキが少ない部門に達する勢いを生み出すことが可能と思われるような衝突の拡大というリズムを与えなかった。ゼネストが指令できないとしても、連続ストライキのスローガンを押し出すことは、最も先進的な部門を軸にしたそうした勢いを生み出すこともできたと思われる。
 現実には、3月8日から13日からの週始めまで、3月7日からの連続ストライキをはっきり呼び掛けた部門だけが、つまり国鉄(レール)、港湾、精油所、エネルギーだけがストライキを維持した。パリでメディアが華々しく報じたごみ収集労働者のストライキは、1万トンにのぼる未収集廃棄物と共に十分に根を下ろしているが、ナント、レンヌ、ル・アーブル、サン・ブリユー、ニース、モンペリエでも同様だ。
 トタル精油所すべてとエクソンモビル精油所はストライキ中であり、給油所に供給する貯蔵所200ヵ所の利用にもかかわらず燃料不足を生み出し始めている。その結果はこれからの日々感じられ始める可能性もある。
 3月8日からの毎日、活動家の諸行動、ピケ、封鎖、そして地方的なデモが何十という町で起こり、全行動日間の連続性を確実化し、決起の空気を維持、社会的不公正を抱えたこの改革に対する高まる拒絶を表現している。
 その時から3月16日は特別な意味を帯びた。ストライキ運動はもはやこの構想を阻止できるようには見えず、労組間共闘運動自身は国民投票を求める請願運動という考えを押し出し始め、それは、ストライキとデモを通じた直接衝突に与えられた優先度の終わりを意味した。また、マクロンは下院での票決の中で彼の過半数を見つけ出すことができないだろうとの期待も残り、49条3項という考えは、なおのこと受け入れがたく、法の採択から正統性を奪い、民主主義の否認として糾弾されるものとして現れた。
 49条3項というこの命令は、決起に対し即時の押し上げを与えた。それは一方で、衝突の今後を議会の舞台に移し、他方であらゆる街頭の決起を、また連続ストライキを維持しあるいは始めるという討論を生き返らせた。

マクロン打倒の社会的力関係を


 16日午後に49条3項が公表されるや否や、数多くの労組横断組織の呼びかけを通じて、あるいは自然発生的に、集会とデモが始まった。これらは、政府に対する拒否になったと思われる票決を強奪されたとの感覚によって駆り立てられた、非常に戦闘的なデモと決起だった。49条3項の反民主的な不公正が、年金改革の社会的不公正、エネルギーと燃料の勘定書で、手押し車に乗せた商品価格で毎日苦しめられるインフレ急進という社会的不公正、これらの頂点にやってきた。
 街路施設の破壊も含んで行進には憤激と怒りが見出され、他方警察の暴力や攻撃や逮捕が増大した。3月17日、特にコンコルド広場におけるデモに参加した多くの若者たちによって15の大学敷地が封鎖され、数十の町では前日同様数々のデモが起き続けていた。
 全国労組間共闘は全国的な最終期限として3月23日の日付けしか提供しなかった。しかしそれは、今週末のストライキとデモに向けた大規模な呼びかけを必要とする、そうした政府のクーデターを阻止する上で必要な対応のレベルからはかけ離れているのだ。諸々の決起はこれから起きるだろうが、国内で政府とマクロンに対する拒絶が増大中であるとしても、運動の全勢力を集中することを欠いたバラバラなやり方によるものだ。
 昨日マクロンは、利率が上昇中の中、「フランスの裏書きに対する金融市場の信任を維持するために」この改革を通す必要を呼び掛けることで、閣議で49条3項の使用を正当化した。マクロンは一方で情勢を劇的にしたがっているが、他方では白昼公然と彼の改革の狙いを示している。つまり目的は、EU委員会に対するブリュノ・ル・メール経済財政相の約束に続いて、公的会計の統制について合図を送るだけということだ。そしてそれこそが、「配分による年金制度の救出」という偽の仮面に隠された真の政治的目標なのだ。
 マクロンと彼の政府ははっきりと、かれらが自ら悪化させてきた社会的な危機が引き起こしている深い政治的な危機の中にいる。マクロンは、社会的な怒りの高まりを過小評価しつつ、労働者階級がインフレ、生活費高騰、公共サービスの不足、さらに失業手当の明確な切り下げで苦しんでいる最中に、大規模な社会的攻撃を実行できると考えた。
 彼は冷笑的に、生活条件のこの劣悪化はまさに、年金に関する彼の攻撃への社会的反応を麻痺させるための、彼の最善の資産になるだろう、と考えた。彼はあからさまに、労組運動は統一して彼の構想を阻止する行動に取りかかることができないと考え、社会運動の無定型さを当てにした。社会の現実に対する彼の無知は、労働者階級に対する彼の侮りと相伴っている。そしてこの両者が彼を政治的な行き詰まりに導いている。
 反対票すべてを集めることも可能と思われる不信任動議は3月20日に下院に上程されるだろう。それが過半数を得ることがあれば、それは自動的に年金に関する法の採択の取り消しとボルヌ政府の辞任に導くだろう。過半数を確保するためには、LR議員の25人以上がそれに支持する票を投じなければならないだろう。このグループの数人はそうするつもりであるとはいえ、それは極めてありそうにはない仮説だ。
 しかしいずれしろわれわれは、この戦闘の運命を決めるためにこの可能性に頼ってはならない。われわれは、この2ヵ月の間現実であったように、マクロン改革に対する民衆的拒絶に匹敵する社会的力関係を建設し続けなければならない。今日彼は追い詰められている、そしてそれは、2、3ヵ月前には予見できなかった情勢なのだ。(2023年3月17日)

(注1)フランス憲法49条3項は、「閣議による熟議を経た後」首相に、票決なしに国民議会でひとつの法を押し通すことを許している。その時法の通過を妨げる唯一のオルタナティブは政府を倒すことになる。首相がこの手続きに取りかかった場合、議員たちには24時間以内に不信任動議を上程するという選択肢がある。
(注2)労組間共闘は8つの労組連合(CGT、CFDT、FO、CFTC、CFE―CGC、UNSA、ソリデール、FSU)、および4つの若者組織――フランス全学連(UNEF)、全国高校生連合(UNL)、高校生総連合(SGL)、高校生独立民主連合(FIDL)――から構成されている。CFDTは労組員数(87万5000人)ではフランス最大の労組連合だが、歴史的にCGTより急進性が低く、企業代表機関の選挙結果ではCGTに次ぐ2番手にある。
(「インターナショナルビューポイント」2023年3月18日)

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