再びの金融危機?

米銀破綻またも全員脅かす

ダン・ラボッツ

 3月10日に起きたカリフォルニア州のシリコンヴァレ―銀行(SVB)の破産は、破産の原因となり、小さな他の銀行を破産させあるいは深刻な問題に直面させる、預金者による資金引き出しのような連鎖反応を始動させている。影響を受けた銀行の中には、ニューヨークのシグネイチャー銀行、サンフランシスコのファースト・リパブリック銀行がある。
 株式市場は世界規模で崩れ始めた。不法でいかがわしい取引で知られたスイスの主要銀行である問題含みだったクレディ・スイスのほとんど同時的な破綻寸前は当面、これが2008年の破壊的な大不況を引き起こしたものに似たもうひとつの世界的金融危機であるかのような外観をつくり出した。しかし今回は、危機の展開も原因も同じではない。

今回の危機は
Fedに原因
 2008年の銀行危機は、悪質な住宅ローンをつくり、次いでそれらを束にして売り、さまざまな他の危険な行為に取りかかった銀行家によりつくり出された。銀行家たちは、2007年末に住宅価格が下落したときに崩れたトランプの家を建てたのだ。しかしながら今回、危機に向かう失策は銀行家の側にあるのではなく、今年8回利率を引き上げた――今4・5%――米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(Fed)の側にある。結果として、SVBが900億ドルも投資してきた低利の古い米財務省債券は、新しい高利の債券が市場に現れるにつれ価値が下落した。そして小規模で動きの小さな市場でテック企業が資金を引きあげたときにSVBは破産となった。
 ではなぜFedは利率を引き上げたのか? Fedは、利率引き上げは、新型コロナパンデミックに対処するために何十億ドルも費やした政府が大きな部分で引き起こしたインフレに対抗すると思われる、と論じた。引き締まった労働力市場とより高い賃金を伴った、パンデミック終了時の幅広い雇用拡大もまた、インフレに導いた。
 その近頃の経済拡大は、特にワーキングプアに、仕事を得それを維持するのがより楽だと気づき、引き締まった労働力市場の中でより高い賃金を受け取った低賃金労働者に利益を与えた。それはまた、より低い価値のマネーでローンを返済できた債務者にも利益になった。とはいえインフレはやがては、経済全体に対し破壊的になる可能性がある。それゆえFedは、拡大を緩やかにするために、失業を高めるために、賃金増大を削ぐために、さらに貸し手を利するために利率を引き上げた。

負担は民衆に
銀行家は無傷
 1929年の崩壊後に創出された連邦預金保険公社は、25万ドルまでの口座をもつ全預金者の保険を引き受けている。しかし多くのテック企業はSVBに何百万ドルも置いていた。こうしてバイデン大統領、ジャネット・イエレン財務相長官、Fed、連邦預金保険公社は、SVBの件では、SVBにマネーをもっている多くのテック企業とそれが提供している10万の職を守る目的で、預金全額が保険対象になるだろう、と公表した。バイデンはまた、説明責任を求め、政府は銀行の執行役員と株主は救わないだろうとも約束した。
 しかしながら、誰も説明責任を負わされそうにはない。2008年、他の諸国では46人の銀行家が刑務所に入れられた(アイスランドで25人、スペインで11人、アイルランドで7人、キプロスで1人、ドイツで1人、イタリアで1人)一方で、米国では有罪と決したのはひとりだけで、その彼は外国の銀行、クレディ・スイスに職を得た。米国人銀行家で刑務所に行ったのはひとりもいなかった。
 今回の場合、危機に責任のある者は連邦準備銀行システムとSVBのような銀行を規制する執行者の中に見つけられることになる。この破綻の何らかの責任はまた、前大統領のトランプにも向かう。2008年の危機を受けて、米下院は銀行をもっと注意深く規制するためのドッド―フランク法を採択した。SVBも含む銀行家たちは、この法を緩めるためにロビー活動を行い、それにトランプが応じた。銀行家たちはむしろ自己規制に務めることを許されたが、かれらはそれを行わなかったのだ。
 2008年の銀行危機と現在のそれ双方とも、生産手段と金融手段両者の中の私有財産に基礎を置く資本主義経済システムの不合理性を露わにしている。競争相手よりも大きな利益を挙げる必要に駆り立てられるようになっている銀行の株主と執行役員は、競争するだけではなく騙すことも行い、そしてかれらの競争と不正行為両者ともシステムを危機へと駆り立てている。しかしそれに支払うのはいつもわれわれであり、かれらがそうすることはめったにないのだ。(2023年3月20日)(「インターナショナルビューポイント」2023年3月20日)

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