米国:シカゴ市長選は左右の闘いになるだろう

ダン・ラボッツ

 1913年に「シカゴ」という有名な詩を書いているカール・サンバーグはこの街を「頑丈な肩の都市」と呼んだ。それが当時工業と労働者階級の都市であったからだが、それは今日もそのままだ。この都市は、製造業の中心、そこから鉄道、高速道路、さらに航空路が四方に延びる全国的交通システムの軸であり、今日はまたテクノロジー、公衆衛生ケア、教育のセンターでもある。この都市にはほぼ300万人が暮らし、都市圏の地域人口は1千万人だ。
 それゆえ、シカゴと郡の双方にとって誰が統治するかが問題になる。そして決着を見ていない民主党予備選を受けて、左翼と右翼間で、ある種壮大な闘いが、吹きさらしの都市の市長に対する選挙の中で発展中だ。

共和党不在の中
民主党内の争い
 シカゴには事実上共和党が存在していない。それゆえ、今年2月24日に行われた民主党予備選が市長になる者を、過半数を得た者を決定していたはずだった。ところがそうはならなかった。
 前政府検察官、シカゴ警察署長、そしてゲイであることを明らかにしている黒人女性の現職市長のロリ・ライトフッドは、2019年に進歩派として立候補しその地位を勝ち取った。しかし今年彼女は得票率僅か17%で敗退となった。何人かの支持者は、新型コロナパンデミック間に彼女が強いた最も厳しい制限に怒りをもち、他の者たちは、2020年のジョージ・フロイドの殺害をめぐるブラック・ライヴス・マター抗議行動に伴った略奪を止めることに彼女が失敗したことでわだかまりをもち、他の者たちは2021年にこの都市の殺人が836件だったことに最大の懸念をもった(シカゴの殺人率は、10万人当たり18・6人、全米28位)。
 最高得票者のふたりは、33%の前シカゴ教育長、ポール・ヴァラス、そして21%の前シカゴ教員労組オルグで郡理事のブランドン・ジョンソンだった。そして彼らは今4月4日に行われる決選投票に向かおうとしている。ふたりの候補者では多くの違いはほとんどない可能性もある。

進歩派の存在感
が際立つ都市
 白人で警官組合から支援されているヴァラスは、主に法と秩序の側で立候補している。つまりより多くの警察、より厳しい立件、より長期の宣告、ということだ。黒人で市職員労組から支援されているジョンソンは、教育、住宅、公衆衛生ケアでの改善を求める親労働者政綱に基づいて立候補している。彼は過去、警察予算のいくらかをメンタルヘルスのような社会サービスに振り向けることに支持票を投じたことがある。
 シカゴには左翼の存在感がかなりある。アメリカ民主社会主義者(DSA)メンバーの5人が定員50人の市議会に議席をもち、同時に他の進歩派議員も一定数いる。2010年以来改良主義者が率いているシカゴ教員労組は、教員の状況を改善するために、しかしまたこの都市の低所得住民と労働者階級の住民のために、公教育を守り教育を改善するためにも、2012年と2019年に戦闘的なストライキを指揮した。また、住宅と公衆衛生ケアをめぐる闘争の長い歴史をもつ黒人とラティーノのコミュニティには、進歩的なコミュニティ組織もいくつもある。

決定的要素の
ひとつは人種
 この都市が抱えるレイシズムと人種的緊張の長い歴史を前提としたとき、今回の選挙では人種が決定的にひとつの要素になるだろう。シカゴでは、36%が白人、30%が黒人、30%がラティーノ、アジア系が7%だ。バーニー・サンダースを支持したメキシコ人移民で進歩派の長い実績がある下院議員のチュイ・ガルシアは、この市長レースで得票率14%で4位につけた。したがって彼は決選投票にはいない。
 ジョンソンが勝つためには、黒人コミュニティからロリ・ライトフッドの票ほとんど、およびラティーノからチュイ・ガルシアの票を拾い上げることが必要になるだろう。ラティーノ(そのほとんどはメキシコ系)と黒人には、労組、コミュニティ、また政治的連合という形で頻繁に団結があるとはいえ、しばしば緊張もある。白人の進歩派は確実にジョンソンに投票するだろう。ヴァラスは、おそらく白人よりももっと犯罪を心配している黒人から多くの票を獲得する可能性もある。殺人の多くは黒人のコミュニティで起きているからだ。
 歴史的に玉座の背後にいる権力者だったシカゴの銀行家と製造業者は、これまで加勢はしてこなかったとはいえ、ヴァラスの方を好むかもしれない。かれらがヴァラスを支援するとしても、ジョンソンにはそれでも勝つ可能性がある。その時は、彼が彼の進歩的な政綱を実行できるか、実行するか、が分かるだろう。(2023年3月5日)(「インターナショナルビューポイント」2023年3月13日) 

THE YOUTH FRONT(青年戦線)

・発行編集 日本共産青年同盟「青年戦線」編集委員会
・購読料 1部400円+郵送料 
・申込先 新時代社 東京都渋谷区初台1-50-4-103 
  TEL 03-3372-9401/FAX 03-3372-9402 
 振替口座 00290─6─64430 青年戦線代と明記してください。