注目浴びる「和平プラン」と「交渉の必要性」

ロシア/ウクライナ

決定的な問題の見落とし
ジャケス・バベル

 この数週間、メディア――そして世界の左翼の重要な諸潮流――が、主要な諸大国、何よりも中国の、しかしそれだけではなくブラジルやその他の国の権威筋による、ウクライナにおける休戦や交渉の早期開始の可能性に関する諸言明を伝え続けてきた。
 習近平は3月末、プーチンとの和やかな会談のためにモスクワを訪れた。マクロンとウルズラ・フォン・デア・レイエン(EU委員会委員長)は4月はじめに中国を訪れた。これらの会談の各々でこれらの権力者たちは、ウクライナにおける「脱エスカレーション」をもたらすために可能なことはすべてやりたい、と熱心に主張している。しかしはっきりしていることだが、このすべては純粋に象徴的な領域……にあるままであり、一方「大プレーヤー」間の真剣かつ具体的な議論は、それら間の諸合意と経済的力関係の問題なのだ!

中国が公表した
「和平プラン」?
 「中国和平プラン」は、ぞっとするような戦争が2年目に入る中での、ウクライナからのロシア軍撤退を求める国連決議に中国が棄権したことを受けてもち出された。それをよく見てみると、人が認めざるをえないことは、それが実に見事な両天秤行為だ、ということだ。つまり習近平のチームは、一般論として国家の主権はその国境内で尊重されなければならないと断言しているが、ウクライナに対するロシアの侵略を厳しく非難することも、軍の撤退という問題を提起することもないのだ。このふたつの側面は、対話の再開とできる限り早期の休戦という必要性に関わる足場に等しく乗っている。一方で米国とその同盟諸国の責任は大いに強調されている。モスクワに対する圧力の主な軸は、ロシア当局だけがこの間振り回した核使用の可能性に対する無味乾燥な公然非難だ。
 それ以上の中国の計画が取り上げた諸項目は、市民保護の必要性、冷戦論理を後退させる必要、軍事ブロックの処理、再軍事化との闘い……に関する諸原則の言明からなっているが、具体的な提案の点では完全に失敗している。概して言えば、人は、中国は今世界の世論を前に「理性的な」大国という姿勢を取ろうとしている、と信じるように導かれる。他とは異なり、火に油を注ぐことを拒否することによってだ――しかし、自らの位置は、民衆の利益は最後の問題になる力関係の中に定め――。

正義がなければ
平和も訪れない
 プーチン政権は、中国はそれを意識的に否認しているように見えるが、兵器を求めて圧力をかけ続けている。そしてロシアのラブロフ外相は、ロシアの原理的な利益を名目に早急な休戦に向けたあらゆる選択肢を素っ気なく拒否した。
 そしてこれこそが、自らを「平和陣営」と見ている者たちには考えることができないもののひとつであり続けている問題だ。実際、長期的にはNATOに対する拒絶は理解できるとはいえ、ウクライナとロシアの民衆を始めとする地域全体の民衆にとって短期的に避けられないことは、ファシスト的、帝国主義的かつ植民地主義的なプーチンの権力に対する断言なのだ。
 ウクライナ人、カザフスタン人、バルチック諸国の市民、ロシアやベラルーシの反政府派などが誰ひとり信じていないことは、ウクライナ領土の一部をプーチン政権の支配下に残すような、また何よりもウクライナ人の意志に反する協定によってこの地の戦争が取り除かれるかもしれない、ということだ。プーチンは2014年のクリミア併合に加え、2022年秋に今その一部を占領しているにすぎないウクライナの4地域の併合を素っ気なく宣言した、ということを先の人びとは誰ひとり忘れることができない。そしてもちろん、プーチンの権力は独立したウクライナ国家の正統性そのものも否認し続けている、ということもだ!
 この観点から見たとき、ウクライナ人が平和を欲しいのであればクリミアを忘れるべき、と述べたブラジル大統領のルラの言明諸々は、強調すべきことの代わりに自己決定に対する民衆の権利を軽視して、戦争継続の責任をかれらに負わせる方向に向かうものだが、しかし先の権利は、ラテンアメリカ民衆にとってはまさに重要な役割を果たしているものなのだ。そして強調が必要なことは、われわれが東欧の公正で長続きする平和を求めるならば、プーチンの権力の質的弱体化は必要条件(明らかに十分ではないとしても)にほかならない。(2023年4月11日、「ランティカピタリスト」より)

▼筆者は国際活動に責任を負うNPA指導部の一員。(「インターナショナルビューポイント」2023年4月12日)

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